二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

アリス振り回される(前編)

INDEX|1ページ/7ページ|

次のページ
 
1.アリス相談される


「お嬢さん、少しばかり私に協力してくれないか?」

目の前の執務机で両の指を組み、その上に顎を乗せたブラッドが此方を見て話しかけてきた。
相も変らぬ怪しい笑みを口元に浮かべている様は、色っぽいというか不気味というか。ああ、本当にこの男の事が苦手だと思う。元彼に似ていることにはもう既に慣れてしまったが、そういう事ではなく、何もかもがよくわからない、掴ませない、食えない男。
此方の世界に来た当初に滞在した時計塔でトラブルがあり居辛くなってしまった時、よく考えもしないで次の滞在先にこの屋敷を選んでしまったことを後悔しているのだ。マフィアと聞いても現実感が無く、怖いというよりも面白そうだと思ってしまった自分を呪う。現実じゃ出来ないことをやってみよう!などとは全く愚かな決定だった。

「内容によるわよ。」

全然乗り気じゃないオーラ全開で返事をする。この前は婚約者の振りで酷い目に遭った。あれの二の舞はもうご免だ。あの後ペーターが血相変えて帽子屋屋敷まで飛んで来た。双子とエリオットが火に油を注ぐ様な事を言ってくれたお陰で、暫くはハートの城に行く度にペーターから滞在地を変えろと迫られたのだった。最近やっと落ち着いてきたところで、もう面倒は起こしたくない。

「ふむ。ハートの城のお茶会に招かれているんだが、お嬢さんが同席してくれた方が場が和むと思ってね。どうだろう。」

なんだ。拍子抜けするくらい簡単な事ではないか。ハートの女王ことビバルディの所へはわりと頻回に訪ねて行っており、女同士ならではの会話も楽しんでいるくらいだ。全く以って問題無い。問題無い筈だ。多分。

(なんだか怪しい。)

それはそれで何か企んでいるのではと邪推したくなる。安請け合いは、前回の二の舞になる可能性がある。それをアリスの表情から読み取ったのか、ブラッドは簡単に自分の提案を引き下げてしまった。

「・・・お嬢さんは気が進まない様だから一人で行くことにするよ。読書を中断させてすまなかったね。」

「エリオットは行かないの?」

「別の仕事を頼んでいるからな。今回は行けないな。」

アリスは少しだけ、ほんの少しだけ良心が咎める。それでも、ここで仏心を出して後で後悔するよりはましだと自分を納得させる。でも・・・

「ねぇブラッド、何か隠していること無い? 本当にお茶会だけの為なの?」

「ふふふ・・正直に言うと、お嬢さんが女王の注意を引き付けておいてくれれば、私は紅茶を堪能できると思ってね。私の予想では、今回の茶会では私が入手し損ねた茶葉を出してくるはずなんだよ。それは希少な茶葉でね、ファーストフラッシュとセカンド・・・・」

例の紅茶の長い講釈が始まりそうになり、慌てて遮る。

「あーーーねぇ! もう一度聞くけど、本当にそれだけなのね? それなら行ってもいいわ。でも前みたいにいきなり婚約者ですーとか、ああいうサプライズ的なのは止めてよね。ブラッドったら未だに婚約者の件否定してくれていないでしょう? だから貴方のファンに睨まれたり、意地悪されたり大変なんだから。」

「否定、ねぇ。」

アリスはここぞとばかりに、自分の撒いた種を刈り取ってくれと遠回しに言ったつもりだった。だが、小さく呟くブラッドの目は怪しい光を帯びて細められる。  

「お嬢さんはどうやら婚約破棄をお望みのようだが、私としてはそのつもりは全く無いのだがね。」

「なっ、婚約なんてしてないじゃない!」

「私が婚約者だと紹介した時点で、君は私の正式な婚約者なんだよ。」

「何よそれ? どんな俺様ルールなのよ!」

本人の意思を全く無視し、愛どころか友情すら怪しい相手を人生の伴侶だと勝手に決め付ける。目の前の男は信じられないような事をしれっと言ってのけると、此方の反応を窺うような視線を送りながら、片手で頬杖を突き反対側の親指と人差し指でペンを弄ぶ。アリスはそれを凝視しながら頭がくらくらしてきた。
ここにお世話になってから日が浅いと言う事でまだ敬語を使っていた頃に、この男がとんでもない事をしてくれたお陰で、今や世間では余所者=帽子屋の婚約者又はマフィアの情婦となっている。今ならその場で否定し訂正出来る事が、あの頃にはただただ驚いて周囲の目を恐れることしか出来なかった。しかも、売り言葉に買い言葉で墓穴を掘った自分がいる。

「ああ、確かお嬢さん自身が自分で言っていたな。私は帽子屋の特別な女だから顔無し共はすっこんでろと啖呵を切っていたんじゃなかったかな。」

「・・・・・ ・・・・・ あ、あれは言葉の綾というか、とにかく違うから!」

自分の浅はかさに嫌気が差す。頭に血が上ったにしろ言葉を選ぶべきだった。しかも最悪な事にそれを本人に聞かれていたという間の悪さ。
ブラッドは、ククク・・と意地悪く笑い出す。

「わ、私、やっぱり行かないからっ。それから本、借りていくわね。もう部屋に戻るから。」

本を二・三冊抱きかかえると立ち上がったところで、ブラッドが持ちかけてきた。

「お嬢さん、私と取引しないか?」
「嫌よ。」

振り返り様断る。こういう誘いに乗るときっとろくでもない事になるに決まっているのだ。このまま自室に戻るに限る。

「私とお茶会に同伴してくれれば君のお願いを一つ聞こうじゃないか。」

これまた絶妙のタイミングで畳み掛けてくる。交渉事などお手の物。アリス相手など赤子の手を捻るも同然なことだろう。一瞬非常に心惹かれる誘い文句に乗りそうになる。ここで即答は危ない。

「と、とにかく部屋に戻るわ。」

ブラッドに向けた背中に、最後のダメ押しが圧し掛かる。

「ああ、アリス。婚約者のお披露目を早くしろと彼方此方から急かされていてね・・どうしようか?」

「わかったわよ! 行けばいいんでしょ! その代わり、婚約は無かったって事でいいわよね?」

「ふむ、いいだろう。だたし、もう一つ頼みがある。」

ブラッドは、意に沿うような返答をアリスから引き出し、非常に満足そうな笑みを浮かべる。しかももう一つ追加の要求をするところなど抜け目が無い。一人部屋に残され、最初肩を振るわせて笑いを堪えているようだったが、耐え切れずに声を出して笑い出した。

「いやいや、お嬢さんは今回も私を楽しませてくれそうだ。」



自室に戻ったアリスは借りてきた本をベッドの上に放置して、枕を抱かかえると頭の中で反省会をする。
前回は人の話を聞かずに安請け合いをして酷い目に遭った。今回はそれを教訓にして自分なりに石橋を叩いた筈だが、これで良かったのだろうかと。最後の最後に相手の手に乗ってしまった感は否めない。しかしこれで身に覚えの無い婚約者というレッテルは外して貰えるのだ。今のところ此方に不都合な事は無い筈なのだが、何故か不安になる。

「これで良かったのかしら・・・」





2.アリスお茶会に行く


城のメイドに先導されて赤の女王の待つ茶会の席へ向かう。夕闇の赤に、赤い薔薇の色が溶けて見える。その垣根越しにビバルディの声が聞こえてきた。何事かイライラと捲くし立てている様子だ。お茶会の準備で何か不手際でもあったのだろうか。そんな事を考えながら歩く。