前世 【忍たま】
不思議そうに首を傾げる四郎兵衛を見下ろし、滝夜叉丸が困ったように眉根を寄せる。そして、表情と同じように困った風な口調で、四郎兵衛へとこんなことを告げ始めたのだった。
「最近、どうにも視界にもやが掛かることが多くてな。それも不思議なことに、腕を上げたときにばかりなるらしくて……」
そう言ってため息を吐く滝夜叉丸の言葉に、四郎兵衛が不思議なことがあるものですね、と言葉を返す。何故もやが掛かるのかなど、四郎兵衛にも分かるはずが無かったのだから。
しかし、このときの四郎兵衛は気づかなかった。
この滝夜叉丸の視界を覆うもやが、四郎兵衛の持つ前世の記憶と深く関係しているということに……
-終-