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東方~宝涙仙~ 其の捌(8)

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東方〜宝涙仙〜


「………」



ー妖精の湖ー
「飽きた!!」
 チルノがビシッと決める。
「え?」
 ルーミアが戸惑う。
「え?」
 大ちゃんも戸惑う。
「…」
 かぼちゃん反応なし。

 氷上のスケーター(スケート)に飽きたのか、チルノがうだうだしだした。
チルノが想像していたほど滑れはしなかったらしく、加速して滑り始めてすぐに転んでしまう。

「あたいだけうまく滑れない!!」
どうもチルノはうまく滑れなかったようだ。
それに対しかぼちゃんとルーミアはそこそこ滑れて、大ちゃんはうまく滑れた為チルノからしたら妬ましくてストレスになったらしい。
 チルノは少し不機嫌そうだ。

「別の場所で遊ぶ?」
 大ちゃんがチルノの不機嫌を察して場所移動を提案した。
「なら久々に紅魔館行きたい」
 大ちゃんの意見に賛成したルーミアが紅魔館に行きたいと要求した。ルーミアの意見に大ちゃんは拒むような表情をしたが口には出さなかった。
「こうまかん?」
 かぼちゃんがルーミアに質問口調で問いかける。
かぼちゃんは紅魔館を知らない。妖精の森を抜けた先に住んでいるかぼちゃんからしたら紅魔館は無縁だ。紅魔館どころかレミリア、フランドールさえ知らない。

 それを利用して大ちゃんが拒みを表す
「かぼちゃん、紅魔館はね、とっても危ないんだよ」
「どう危ないの?」
「フランドールっていうすごい怖いのがいるんだよー」
「ふらんどーる?」
「あたいフランに会いたい!!」
 大ちゃんがえっ!?となる。
フォローが裏目に出たのが驚きなようだ。フランドールの存在さえ思い出させればチルノもルーミアも紅魔館に行くのは諦めてくれるだろうと思ったのだろう。
しかし効果が無いどころかチルノがヒートアップしてしまった。

「チルちゃん、今のフラちゃんは危ないよ!この前もあのメイド長の咲夜さんを殺したんだ…」
「フランはそんな悪いことする奴じゃない!あのメイドやっつけたのもフランじゃないに決まってる!」
「でも…」
「大丈夫!紅魔館のみんないい奴だらけだ!」
「んー」
 チルノは優しいのか抜けてるのか人を疑うことはせず、友達は絶対いい奴だと思い、差別をすることはない。
チルノ自体いい奴なのだ。
 大ちゃんもチルノに負けたようにしぶしぶと紅魔館へ向かうことにした。

「行こう、紅魔館!」
 チルノが仕切る。
「行ったことないから楽しみ!」
 かぼちゃんも随分乗り気なようだ。
「大丈夫かなぁ…」
 不安な大ちゃん。
四人は紅魔館へと向かった。


ー紅魔館ー ※文体:夢子視点

 たったさっきお嬢様が出掛けた。散歩に行くそうだ。
外に出るというのに傘を忘れたのか、傘を取ってくるように命じられた。傘をわたすついでに付き添いしましょうかと聞いたが断られてしまった。今までにも一人で散歩していたのだろう、私は素直に了解した。
そういえば元メイド長咲夜さんがいなくなってから散歩してないとか言っていた気がする。ということは昔はその咲夜さんとやら人と一緒に散歩していたのだろうか。んー、謎ですねー。

 メイド長といえば…現在メイド長雨霧風香さんは私に掃除を押し付けて洗濯するからとどこかへ行ってしまったが…
本当に仕事してるのだろうか。あの人の事だからまた洗濯と偽りながらサボるんだろうけど。
 紅魔館に来た私に最初に話しかけてくれたのはあの人だった。初対面で「さばさばとした機械的な喋り方だね」と言われたのを覚えている。でもあの人は優しくて、その頃はしっかりと仕事をしていたから私はあの人を尊敬していたのだが…今となってはもう少し働けと言いたいところだ。

 あ、妖精メイドが洗濯物を干してる。やっぱりサボりましたかメイド長。予想通りすぎます。
今頃メイド長は部屋でくつろいでるのだろう、今日こそは注意してみよう。上司に説教というのも変な気がするが、まああの人なら別に不機嫌にならずにはいはいと答えるだろう。
とりあえずメイド長を探そう。
 いる場所はだいたい検討はつくが。どうせ自分の部屋のベッドの中だろう。
あの人、背中を下に向けて寝れない体型(というか背中から変な突起物がついてるから[※後程公開予定キャラ紹介編参照])のせいでいつもうつ伏せか肩を下にして横に向けて寝るんですよね。
あれでしっかり休めているのだろうか。いや、休む必要もないか、サボり魔だし。

ー風香の部屋前ー
「メイド長ー」
 部屋に向かって呼んでみる。が、返事がない。あれー?もしかして私の推理は間違ってたかな。
「風香さーん」
 何度呼んでも(正確には三回)返事がない。
もしかしたらもう寝てるのかな。あの人ならあり得る。
ドアノブに手を置いて回してみる。あ、ドア開いた。ご自由にお入りくださいなのだろうか、とりあえず中に入ってみる。
 
 部屋の中は電気がついていなかった。しかし何かゴソゴソと音がする。よく見ると暗闇の中に人影が佇んでいる。シルエット的にメイド長ではなさそうだ。泥棒?
泥棒だった場合奇襲をかける為、あえて電気をつけずにスカートから短剣をとりだして構えた。机だろうか、おそらく机の上を物色しているようだ。何かを探しているようにも見える。
相手の姿もわからないが、相手は私に気付いていない。かなり有利といえるだろう。相手が八雲紫とか博麗の巫女やフランお嬢様級に強くはない限り負けはしないでしょうし。あら、なんか今自分メイド口調だった。それほどまでに緊張している。いや、逆に緊張してないのかも。

 心臓の高鳴りを感じる。別に緊張していなくても静かな空間だと心臓の高鳴りを感じてしまうのはみんな同じはず。
暗闇の中の人影はまだ目当てのものを見つけれてないのか、その場から移動する気配がない。暗くて見えないのかもれない。

「………」ドクンドクンという音がこだまする。
 「………」ガサガサという音が暗闇を伝う。
  「………」無音のはずの世界を二つの音が破壊する。

「…………」音がひとつになった。
 ガサガサいう音が消えた。
犯人め、動くか。
 刑事ものの物語のクライマックスに自分が参加している感覚だ。わくわくする。

「……てる気だ…」
 声?私の声じゃない。そんな、まさか!ばれてるのか!?

「答えろ、いつまでそこで隠れてる気なんだ」
 心臓の鼓動がさらに大きくなった。が、聞こえにくくなってゆく。

「ハハハ、顔をだせないとはお前はシャイなんだな。その立派な短剣を持っておきながら奇襲を狙っているな」
 ※紫電坂白仙(しでんざか はくせん)
 二つ名:祖なる者
 能力:理性を操る程度の能力


 完全にばれてるらしい。すなわち電気をつけないかぎり私が不利だ!
電気をつけたと同時にナイフを飛ばす、残念なことに今はナイフが三本に短剣が一本しかない。戦力武器が足りないにもほどがある、早めに決着をつけよう。じゃないと殺されてもおかしくはない…。
 暗闇に光が走る。
―え?
 私まだ電気つけてませんよ?
 何が起こったかわからないまま、また暗闇が始まる。相手の姿を一瞬だけ確認できたが確認できなかった。どういえばいいのだろうすなわちわたしはあいてをみてもにんしきできなかった。