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葎@ついったー
葎@ついったー
novelistID. 838
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die vier Jahreszeiten 012

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それから閉店作業と翌日分の仕入れのチェック,注文表を各店にファックス,というのを全部終えるとあっという間に二時間が経ち,店を出たのは午前六時過ぎだった。
俺よりも華奢で,線の細い菊は実のところ俺よりも遥かにタフで「じゃあまた夜に。フランシスくん,苺のケーキ,忘れませんからね」と笑顔を残して帰っていった。
ハイハイ,と笑顔で見送ったものの俺はもう限界で,時給二時間分をタクシー代に費やして部屋まで戻った。
玄関を開けて後ろ手に施錠する。
昨日出がけにタイマーをかけてあったため,部屋の中は温まっている。
上着を脱ぎ,シャツを引き出し,靴下を脱ぎ,洗面所の端に置かれた籠に放り込む。
腕に抱えた上着をソファの背に放り出し,ベルトを緩めながら寝室に向かう。
もう限界だった。
ばったりとうつ伏せに倒れこみ,目を瞑る。
二日ぶりの睡眠。
嗚呼,と身体から力が抜けていくのを実感する。
携帯のアラームはセットしてあったっけ?
マナーモードは解除してある?
自問の答えはどちらもOui.
俺は安心しきって目を瞑った。

それなのに。

枕元,というより耳元でけたたましくなる携帯の着信音。
ボーノトマト・ボーノトマト・ボーノボーノ・ウー♪
と頭がいたくなる歌詞と調子っぱずれのメロディはアントーニョからの着信に設定された着歌だった。

【件名】メリー・クリスマスやで!
【本文】雪!雪!(*゚∀゚)o彡゜

雪がどうした。
そんなの知ってるわ。
タクシーの窓からうっすらと雪の積もった街並みを眺めて眠気を蹴飛ばしながら帰ってきたんだこっちは。

いっつもへらへらしてるくせに,どっか寂しがりなところがある悪友の顔が脳裏に浮かぶ。
無視,できたらいいんだけど。
アイツ昨日も変だったしな。

重たい瞼をなんとか堪えて,動きの鈍い指を動かして返信メールを作る。
「わかった。わかったから眠らせてくれ」と打ったつもりだったけれど,読み返す余裕はなかった。
送信釦を押してほっとして目を瞑る。
すると今度は「褒めろ!讃えろォ!俺様に跪けぇ!」と罅割れた着ボイスが携帯から響いた。
今度はギルベルトかよ。
勘弁してくれ!と叫びだしたくなるような気持ちで,それでも携帯を開いた。

【件名】Re:Re:メリー・クリスマスやで!
【本文】起きろ,フランシスーーー!!!寝たら死ぬぞ!

死なない。
でも寝ないと死ぬかもしれない。
お前ら,俺のこと殺したいわけ?
泣きたいような気持ちで返信メールを作る。
指は動かないし頭も歩かない。
あんまりにも眠すぎて泣きたい気持ちにすらなった。

そんな俺に追い討ちをかけるようにまたトマトの歌。

【件名】あかんで!
【本文】寝たらあかん!死んでまう!起き!起きるんやフランシス!(((((;`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・

だ か ら !
本気で勘弁してくれ,と俺は指を動かしメールを送信する。
「もう電源切るぞ。俺さっき帰って来たとこなんだから本気で寝かせてくれ」送信完了,の文字が表示されるのを待って,俺は電源釦に指を伸ばした。
と,今度はノーマルの着信音が響いた。

今度は誰だよッ!
半ばヒステリックな気持ちでメールを表示させ,俺は眠いのも忘れてまじまじと小さなモニタに見入った。

【件名】無題
【本文】ケーキ,うまかった。また作れよ。メリークリスマス。

愛想の欠片もない素っ気無いメール。
発信者の欄には母親の名が記されていた。
けれどもそれを送ってきたのがあのクソナマイキな隣家のガキだってのは一目でわかる。

俺はベッドの中,ごろりと寝返りを打つと一度閉じた携帯をもう一度開いてメールを眺めた。

「…可愛いことしてくれちゃって」

呟く声が笑っている。
嗚呼でも駄目だ。
眠い。眠すぎる。
返信は目が覚めたらな。アーサー?
それまで「なんでさっさと返信寄越さねぇんだよ!」て携帯握り締めて喚いてな。

俺は喉の奥で笑うと携帯を枕の下に滑らせ,心愉しい気持ちのまま目を瞑った。