新生勇者戦記 ブレイヴ・サーガ・ディザスター 第16話
第16話 「災害砕く炎雷(えんらい)」
現れたデストリアン、D‐17は暴れながら咆哮する。道路を砕きながらクルマやトラックを吹き飛ばし、建造物を砕く。巻き込まれた市民が宙を舞い落下する。
律 「やばい、やばい、やばいっ!!!走るぞっ!!!」
澪 「うわあああああっ・・・・!!!」
和 「走るわよ!!唯!!」
唯 「ああ!!まってぇ!!」
和 「ほら!!掴まって!」
唯に手を差し出す和。澪達もD‐17から必至に逃げた。他の市民も一目散に逃げ回る。
D‐17 「ギョゴオオオオオオオオオォォ!!!」
ズドォドォゴガァアアアアンッッ!!!
澪は走りながら笠木の事が気にかかった。
澪 「そういえば、笠木さんは?!まさか・・・巻き込まれた?!!」
律 「そんなに気になるのかぁっ・・・・あのネガティブ女が!」
澪 「そんな言い方するなよ・・・だって・・・傷ついたままほっとけないじゃないか!!」
律 「けど・・・もう戻れないぞ!!!」
律曰く、すぐそこまで迫っていた。澪は気転を利かせて横道に入って逃げた。
澪 「このまま・・・元いた所まで戻る!!安否を確かめたい!!」
律 「ったく・・・こうもお人好しだったっけ?まぁ・・・付き合うよ!!和!!先に逃げててくれ!!また連絡するから!!」
和 「わかった!!」
和と唯はそのまま逃げ、律は澪の後に続いて路地を駆け抜ける。後方の方でD‐17は前進を続けて暴れていた。
走るにつれ、土煙が立ち込めてくる。D‐17が通過した際の破壊で巻き起こったものだ。
澪 (土煙がすごい・・・!!)
この時律は何かを直感する。この先には澪が見てしまうとまずい光景があるのではと直感した。
律はそう思った瞬間にペースを上げた。
律 「っ・・・!!」
澪 「律・・・?!」
澪の前に出て走る律。先ほどの所まで戻ると案の定、律の視界に市民たちの悲惨な光景が飛び込んできた。
律 「・・・止まるぞっ!!!」
澪 「ええ?!」
急激に律が止まり、澪を止めさせる。急に走りを止めたために呼吸がしばらく乱れる。
律 「・・・・・澪・・・見ちゃだめだぞ?この先はあんたには刺激が強すぎる!!」
律はその先の光景ををかばうように澪の前に立つ。巻き込まれた人々が至る所に倒れていた。
澪 「・・・でも・・・私はやっぱり進むよ!!」
律 「仕方ないな・・・手握ってやるから、目を瞑れ!行くぞっ!!」
澪 「あ!!律・・・!!」
その頃。勇士朗は呼び出したファイアージェットのコックピットに乗り込む。計器類を素早く操作し、ディスプレイが起動。ジェネレーターの駆動音が上昇していく。
周囲に風を巻き起こしながらホバリングするファイアージェット。そしてレバーをガチガチッと前に押し込んでブースターを点火させる。
ギュゴオオオオオオオオォォォ・・・ドォアアアアアアアアアアアアアッッ!!!
突風を巻き起こして加速しながら一気に飛び立つファイアージェット。光と俊もこの突風に若干吹っ飛ばされる。
俊 「おおお?!!」
光 「うおあああ?!」
ドォオオオオオオォォ・・・
ファイアージェットは相模原市の空へ飛び立っていく。飛ばされた光と俊がひょこっと起き上がって一言コメントする。
光 「・・・〜っ・・・すげー風圧・・・。」
俊 「これからはもっとファイアージェットから離れような・・・。」
和は唯の手を引っ張りながら逃げる中、以前の出来事がデジャヴする。
和 「これじゃ・・・またこの前と一緒じゃない・・・!!!」
唯 「大丈夫だよ・・・和ちゃん・・・きっとエクちゃんが・・・。」
ドォゴガアアアアアアアンッッ!!!
D‐17B 「ギカギャアアアアアアアァァァアアアアッッ!!!」
逃げる彼女達や他の市民を阻むように、色違いの同型デストリアンが地面を盛り上げながら出現する。
唯 「ひゃあああ?!!」
和 「まずいっ!!こっちに逃げるわよ!!」
和は咄嗟の判断で先ほどの澪達のように側面の道へ曲がって走る。だが、その瞬間をD‐17に見られてしまう。どうやら犬同様、逃げるものを追う性質があるらしく、彼女達を追うように進撃を始める。
D‐17B 「ギゴゴガアアアアア!!!」
和と唯が逃げる後方から、激しい破壊音が鳴り響いてくる。迫る災厄。
唯 「ひええええ〜!!なんでこっちにくるのぉ〜?!!」
和 「・・・・っ!!!」
背後に嫌な感じを覚えつつも唯の手を握って走る和。だがその時、巻き上げられた瓦礫が彼女達の前方10メートル付近に落下する。
ズズズズウウウウウウッッ!!!
和 「うあ?!!こ、これじゃ・・・進めない!!!くっ・・・!!!」
唯 「和ちゃん・・・・大丈夫だよ!!!こういうとき、必ずエクちゃんが来てくれるんだよ!!!」
和 「毎回そうとは限らないでしょ!!」
バギャアアアアアンッ・・・・ズドォガァアアアアンッッ!!!
地面を抉りながら家屋や建造物を薙ぎ払っていくD‐17B。和は唯を抱きしめ、彼女の耳もとでささやく。
和 「・・・今度こそ・・・ダメかもね・・・。」
唯 「そ、そんなことないよ・・・き、きっとエクちゃんが・・・。」
唯の声は震えていた。きっとそう言い聞かせていたのだろう。既にそこまで迫った魔の手。D‐17Bは、その魔の手を二人に伸ばそうとした。
その時・・・。
シュゴゴゴゴオオオオォォ・・・・・ズドォドォドォギャアアアアアンッ!!!
D‐17B 「ギガガガガアアアアッ?!!」
ズドォドォドォドォドォゴオオオオオオンッッ!!!
D‐17A 「ギャガアアアアアア?!!」
上空をファイアージェットが駆け抜ける。勇士朗が放ったフレアミサイルが2体のデストリアンに直撃したのだ。
笠木を捜していた澪達も振り向く。
澪 「勇士朗君だ・・・!!!」
律 「ファイバードのおでましか!!!」
ファイアージェットは一旦直進して離脱。Uターンしながら再びフレアミサイルを放つ。モニターのロックオンの表示を確認すると勇士朗はトリガーを引く。
ピピピピ・・・ビビビー!!
勇士朗 「フレアミサイル、ファイアッ!!!」
ドォドォドォドォドォドォシュシュシュゴオオオオオオォォ・・・
ドォドォドォドギャギャギャギャアアアアアンッ・・・
ファイアージェットの到着を確認した律と澪は再び笠木を捜す。そして悲劇的な現実を突きつけられた。
彼女は道路に倒れていた。その姿をみて駆け出す律。駆け寄って起こそうとするが、頭から血を流した彼女の瞳孔は開いたままだった。その瞬間、彼女の死を悟る。
作品名:新生勇者戦記 ブレイヴ・サーガ・ディザスター 第16話 作家名:Kブレイヴ