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藤ノ宮 綾音
藤ノ宮 綾音
novelistID. 27764
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emotional 05

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 自分の兄は男の僕から見ても正真正銘のスター選手だ。
 サッカー界の期待の星、天才、日本サッカー界の至宝、周囲は兄を褒め称えた。
 同じ血を引く人間として、実の弟して、兄の存在が疎ましくないかと言われるとそれは否定が出来ない、だけど、同時に説明が出来ないけど、そばにいたいと思う人。


 ずっと感じていた距離は、あの日を境にゆっくりと縮まってきていると思う。

 僕は兄ちゃんに嫌われていなかった。

 その事実だけで、僕はとても幸せなんだ。


          emotional  ACT,05


 何時もと違う目覚まし時計の音に珍しく目が覚めた。
 まだハッキリしない頭で視線を彷徨わせるが、何時もの定位置に目覚まし時計がない、っと言うよりも見慣れた自室の風景ではない事に暫くして気がつく。
 ボーッとする頭で首を傾げたその時、隣から声がしてゆっくりと視線を向け固まる。

 整った顔の実の兄の寝顔。
 どうして兄がココに?と疑問は持ったがすぐに昨晩の事を思い出す。

 二人で夜遅くまで録画していた兄の友人である海外でも今注目のスター選手のレオナルド・シルバの試合を見ていた。
 試合の内容を遅くでまで二人で語っていると、早く寝ろと母親に注意され話す場所をリビングから兄の部屋と変えたのだった。

 結局そのまま眠くなった所で、やや強引に兄に手を引かれて一緒にベットへと入り眠ってしまった。

 こう言う事は今回が初めてではない為に、以前よりは大分落ち着いている自分がいる。

 兄とこんな風な関係になってから初めて一緒に眠った日は朝が酷かった。
 目を覚まして目の前にあった兄の顔に驚いて悲鳴を上げてしまい、更にはベットから滑り落ちると言う失態を披露した。

 あれからこうして同じベットで目を覚ますのは珍しくなくない。
 この年になって兄と一緒に寝てるは変だと言うことはわかる、だけど、それでも、変でも幸せなのだから仕方ない。


 「ンッ………おはよう、かける」
 「あっうっうん、おはよう兄ちゃん」

 そっと当たり前のようにチュッと唇にキスをされ赤面してしまう。
 これだけはどれだけ同じような朝を迎えても絶対に慣れないと胸を張れる。

 寝癖のある髪を搔き揚げ大きな欠伸をしていても兄は格好いい。
 それにボーッと見ほれていると兄がこちらを見る。
 慌てて逸らすとグイッと顔を兄の方へと向かされる。

 「どうした?顔が赤いぞ?」
 「なっなんでもないよっ」
 「フッ」

 絶対に確信犯だ。
 照れている自分を見て兄は満足そうにもう一度キスをするとベットから出た。
 朝練の時間もあり駆も急いで自室へと戻り学校へ行く準備する。

 以前まではなかった。
 瞳で会話するなんてこと。

 朝食を揃って食べながらも視線を感じて顔をあげると優しく笑っている兄の顔がそこにある。
 女子のように恥ずかしくなり俯いてしまう自分が情けない。

 こうして朝並んで学校に行くなんて事も、少し前まではなかった事だ。
 凄く嬉しくて、そして本当に、幸せなんだ。


作品名:emotional 05 作家名:藤ノ宮 綾音