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lost

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「いたぞ!捕まえろ!!!」

正面に回り込まれ、挟まれる形になってしまった。
スピードを緩め、立ち止まる二人。

「やっべぇなぁ……」

「諦めろ長曽我部。巻き込むつもりはない。」

「護るっつったろ!こっちだ!」

すぐそばにあった螺旋階段をかけ上がる。
5メートルほどしたに黒い男たちが迫って来ている。そのうちの一人が長曽我部の足下に銃弾を撃ち込んだ。

「うおっ!危ねぇな!」

一気にスピードを上げ一番上まで上り、部屋へ飛び込んだ。急いでドアの鍵を閉めて部屋にあった金庫と棚を重石に置いた。
座り込む二人の男の荒い息が響く。

「はぁ、はぁ、無事か、元就」

「……っ、なんとか、な…っ!
がはっ、ごほっごほっ!!」

激しく咳き込む毛利に駆け寄る長曽我部。倒れかけた体を、肩を抱き自分にもたれかけさせた。

「おいおい大丈夫かよ……」

「案ずるでな…い……」

そう言ってまた咳き込む毛利。えずきかけてさえいる。
長曽我部が毛利の額に手を当てると、普通より熱くなっていた。

「お前、熱が……!」

「問題ない」

手を払いのける毛利。立ち上がろうとするも、すぐよろめき長曽我部に助けられた。

「無理すんな!」

その時、押さえられたドアがガンガンと鳴り出した。
どうやら黒尽の男たちはドアを突き破る気らしい。

「チッ……来ちまったか」

立ち上がり、そばにあった鉄パイプと銃を持ってドアに近付く長曽我部。

「……もうよい」

力ない毛利の声を聞き、ぴたりと立ち止まる長曽我部。

「我はもう逃げられぬ。
諦めた。」

「なんだと?」

長曽我部の眼光が増す。
右下へ首ごと視線を落とす毛利。

「もとより貴様を巻き込むつもりはない…。それに、ぬくぬくファミリーの貴様が奴らに勝てるとも思えぬ。
死ぬ前にそこの窓からでも逃げるがよい。」

力強い足取りで長曽我部が近寄り、毛利の胸ぐらをつかみ引っ張り上げた。

「てめぇ…馬鹿にしてんのか」

「……そうだな。」

床に投げ捨てられる毛利。熱のせいで受け身をとることすら忘れていたようで、痛みに耐えようと体をすくめた。
それを隻眼に激しい怒りの炎を燃やして上から見つめる長曽我部がいた。

「本気で殺すぞ。」

「構わぬ。
生きる意味など、ないわ。」

また ごほっとせき込むと、先ほど打ち付けられた衝撃でか少量の血液が床に散らばった。

「貴様に…貴様に我を助けるメリットなど、微塵もない。
それに我が善か悪かもわかっておらぬのであろうが。そんなもの、助けおくな。」


つかの間の沈黙。
毛利はゆっくりまぶたを閉じた。


「だから なんだってんだよ」

ふわりと、体が浮かんだ感覚に、また目を開く毛利。
どうやら長曽我部に抱き上げられているらしい。部屋の奥の壁にもたれかせさせるように座らされた。
怪訝そうな顔の毛利が相手を睨み付けてつぶやいた。

「……なんの真似だ。」

「確かにあんたを助ける利点なんかねぇよ。
あんたは初対面だってのにつめてぇし、馬鹿にするし、命だって粗末にした。
何者かももちろんこれっぽっちもわかんねぇよ。

だから?  だからなんだってんだ。」

毛利の前にしゃがみ込み、柔らかな微笑みを浮かべながら
その頬にやさしく触れた。

「お前言ったろう? これは俺の自己満足だ。」

ニッと笑って、毛利の頭をぽん、と叩くと、「こっから動くなよ。」と言ってドアに向き直った。
それと同時にドアが吹き飛び、男たちがなだれ込んでくる。

「ざっと30人ってとこか?」

額に汗がつたう。
黒服のメガネの男が長曽我部に氷のような声で忠告する。

「大人しくこちらへ引き渡してもらおうか」

「……はっ!」

不敵な笑みを浮かべる長曽我部。眼光が一層鋭く光った。

「……誰が聞くかよ」

「我々は力づくでも連れ戻すように命令されている。容赦はしない。」

男たちがそれぞれ武器を構える。

「そりゃこっちのセリフだ。  

……殺す気でいくぜ。」



作品名:lost 作家名:大月