lost
「……我は、逃げておる」
「逃げる、だと?」
「そうだ。
勘違いしているようだから最初に言っておくが、我はファミリーの人間ではない。
しかしファミリーに追われている」
「は?一体どういう…」
銃口が少し下がった、そのときだった。
遠くで声が聞こえた
「いたぞ!!」
「!」「!?」
二人の目がとらえたのは黒尽の3、4人の男たち。典型的なファミリーの服装だ。
何処かに連絡をとりながらこちらへ走ってくる。
「な、なんだあいつら!?」
「チッ…我もこれまでか」
毛利の呟きを聞いた長曽我部が問いかける。
「あんた、あいつらに追われてんのか?!」
「あぁ。だがもう諦めはついた。大人しく……」
「諦めんな!」
長曽我部が毛利の細い腕をぐっと掴み、自分の来た方向へと引っ張り歩き出した。
「お、おい貴様!何の真似だ!」
毛利が手を振り払うと、今度は顔を限界まで近付けて言った。お互いの吐息が感じられるほどに。
「言ったろ?本当に困ってる奴を助けるって。
俺を信じてみな」
呆気にとられる毛利の手をとり、ぐいっと引っ張ってその細い体を抱き寄せた。
「なっ……!」
次の瞬間、
パン!パンパァン!
銃声。それとほぼ同時に男たちの悲痛な声が聞こえた。
毛利がその光景を見る間もないまま、長曽我部は彼の手を引き走り出した。
「撃ったのか!?」
「手足をな。死にゃあしねぇよ。」
引きずり転がされるように走る毛利。後ろから違う男たちが叫びながら走ってくるのが聞こえる。
「何処へいくのだ!」
「わからねぇ。」
「貴様、正気か!?」
毛利が息も絶え絶えに問いかけると、長曽我部はフ、と笑って振り向きもせずに言った。いつの間にかフードを被っていて、表情は見えない。
「安心しな。
意地でもあんたは護るよ」