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手の鳴る方へ

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シデンの国は何処か張り詰めた空気があった。

「国が違うと雰囲気も違うんだね。私はハジメの国から出たことはなかったから、何処も珍しく見える。ポケモンも、
色々なポケモンが居るし」

ネヤが箱入り娘というわけではなく、出る必要がないと感じていたので彼女はハジメの国から出なかった。
楽しそうにしているネヤを見て、オイチはほっとした気持ちになる。
彼女はイクサを好まず、平和に暮らしていれば良いと言ったブショーリーダーだった。
そのネヤを引っ張り出したのは自分だ。自分の目的のためにネヤを利用しようとしている気持ちもある。
だから、オイチは自分が出来ることならばやれることはやるつもりだ。

「ネヤ様が、楽しそうで良かったです」

「楽しんでばかりも居られないんだけど、まずは他のポケモンとリンクを結ばないと」

はつでんシステムの前に二人は辿り着いた。係の者が居るはずなので使うように頼んでから、来たポケモンと
リンクを結べばいい。ネヤは係の者が居ないか、探した。



簡易な会議を終えて、シデンの城の客間でモトナリが自身の文章の改善点を考えていると、ネヤが帰ってきた。
城を出る前とは違い、二匹のポケモンを連れている。

「ネヤ。帰ってきたんだね。おかえり」

「ただいま、帰りました」

一匹はイーブイだが、もう一匹はエモンガだ。モトナリは知識として知っている。

「エモンガを仲間にしたんだね」

「はつでんシステムを使ったらやってきたので、可愛かったし。オイチちゃんはコリンクを仲間にしたから、
リンクを少し上げてから、コブシの国に挑みます。城を攻めることは大変だけど」

エモンガはネヤが両腕に抱いていてイーブイはネヤの足下にいる。
ポケモンと気持ちが通じ合うリンクや、ポケモンの気分であるテンションはイクサでは重要な要素だ。

「城は守る方が楽だからね」

イクサの時は守る方が楽ではある。自分の城はブショーリーダーが自由に城の仕掛けやルールも決定できるが、
相手が完全に不利にならないように組まなければならない。
エモンガを両手で抱きしめているネヤを眺めているとモトナリは心が和む。ブショーリーダーとは言え、
年相応の少女だ。

「ネヤ。新しいポケモンは得られたのか?」

「はい。ギンチヨさん、エモンガを仲間に」

コリンクを連れたギンチヨがネヤとモトナリの方へと来る。ネヤはギンチヨにエモンガを見せた。
ギンチヨがエモンガを眺める。

「やはり、可愛いな。エモンガは……」

「君、以外と可愛いものが好きだよね」

小声で呟き、エモンガに触れたそうにしているギンチヨにモトナリが言う。ギンチヨはモトナリを睨んだ。
ネヤが抱いているエモンガをギンチヨの方に出した。

「撫でてあげてください」

「そうか」

ギンチヨがエモンガを撫で始める。頭に触れられてエモンガはくすぐったそうにしていた。
一分が経ち、二分が経ち、ギンチヨはエモンガをずっとなで続けている。エモンガが段々嫌そうな表情に
なってきた。

「ギンチヨさん、そ、その辺で」

「お前は俺のエモンガの二の舞をするつもりか」

ネヤが止める。そこにムネシゲも来た。肩にムックルを乗せている。

「ムネシゲさんも、エモンガを?」

「エモンガが良いと想っていたギンチヨに俺がリンクをして連れてきたのだが、ずっと撫で続けていて」

「し、仕方がないだろう!! ブショーリーダーがエモンガで相手を迎え撃つと、威厳がないと言われるし」

ムネシゲはムックルの他にもエモンガも仲間としている。ブショーリーダーとしての面子の問題があるらしい。
ギンチヨはプライドが高い面があるが可愛いものが好きという面も持っていた。

「ギンチヨさんとムネシゲさん、良いな。母さまと父さまみたい」

「私が、お前の母親――」

「仲の良さを言っているのだと想う」

ギンチヨの補佐がムネシゲであり、二人は夫婦だ。ギンチヨが勘違いしそうだったのでモトナリが止める。
ネヤの両親が非常に仲の良い二人であったことはモトナリは話で知っていた。

「父親の方は居所が分からないらしいな」

「探してみてますけど、元気でやってると想います。兄さまも、きっと」

父親も兄のオトヤも何処にいるのか分からないと言う。父親もオトヤも他国を攻めることを吉としていなかった。
ハジメの国を守り続けていたネヤが他国を侵略し始めたのだ。反応が何かあるはずなのに何の反応もない。

「情報があれば君に伝えるようにしよう。二人の名前や特徴は」

「父さまはタダアキで、兄さまはオトヤです」

名を告げた後でネヤは父親と兄の特徴を伝えた。ムネシゲが特徴を聞きながら記憶している。
兄はネヤと同じ茶色い髪をしていてネヤとは三歳違いであり、父親は背が高く、眼鏡をかけているという。
ギンチヨやモトナリも聞いていた。

「しかし、私とムネシゲがお前の両親のように仲が良いと言われてもな」

「照れているのか?」

「誰が照れていると!!」

ムネシゲが爽やかに言い、ギンチヨは噛み付くようにムネシゲに反応していた。
エモンガがネヤを見上げている。

「ギンチヨさん、イクサの時は格好良かったのに今は可愛い」

「こういう面もあると言うことだね」

先日、ネヤ達はギンチヨ達とイクサをしたが、イクサをしていたときのギンチヨはとても凛々しかった。
そのイクサでネヤ達はギンチヨ達に勝ち、城を手に入れ彼等も仲間に引き入れた。
戦って分かることもあるが、一緒に過ごしてみて分かることもある。

「モトナリさんはギンチヨさん達とは知り合いだったんですよね」

「近いところにあるからね」

モトナリはモトチカやギンチヨ、ムネシゲとは交流があった。モトチカのイズミの国はみずタイプの
ポケモンをメインで使っているため、くさタイプを扱うモトナリのアオバの国とはタイプの相性上、
戦いたくはなかったし、ギンチヨのシデンの国はアオバの国の近くであり、懇意にしていたという。

「私はヒデヨシさん達にイクサを仕掛けられるまでは交流とかも考えてなかったな」

ネヤはイクサが嫌いであるが、ハジメの国にいた頃よりはブショーの仲間も増えたし、イクサも上手くなった。
イクサについては悩むが、仲間が増えたり交流が増えたのは喜ばしい。

「十二分にやっていけていたからね。でも、今も楽しいだろう」

「楽しいです。エモンガは可愛いし」

エモンガと共にネヤが笑う。ノブナガの脅威があるが、大事なのはネヤが成長することだ。

「ネヤ。エモンガを鍛えるのならば私も付き合おう。相手としてムネシゲを犠牲にしても構わん」

「それはムックルを犠牲にすると捉えるが。どちらにしろ、タイプ相性は不利だから別のポケモンにするさ」

「野生ポケモンを相手に鍛えるので」

「その時は私も付き合おう」

モトナリはネヤを見守る。
ギンチヨやムネシゲ、シデンの国のブショー達も仲間に加わり、ネヤの軍は賑やかになっている。
楽しそうにしているネヤにモトナリは優しく微笑んだ。


【Fin】
作品名:手の鳴る方へ 作家名:高月翡翠