百合ヒバツナで2作詰め合わせ
応接室。
ツナの目の前には雲雀がいた。
今まで、ついさっきまでツナは校舎に続く道を歩いていた。
そして雲雀はこの応接室にいた。
なぜこのような事になったのか‥‥
それは応接室にいてた雲雀がその窓から飛び降り一気にツナの前に現れ、ツナの手を引いて応接室に連れて来られた。
窓から降りる際にもスカートが捲れないというのは流石は雲雀だ。
でもいきなりどうして?
さっきツナが道から手を振ったから側に来て、ここに連れて来てくれたのだろうか?
なんといっても雲雀とツナは嬉し恥ずかし新婚さんなのだ。
しかし雲雀の表情を見ているとそんな感じではない気がする。
もっと何か‥‥
怒っているような気がするのだ。
ツナはこてんと首を傾げた。
俺、何か怒らせるような事したかな?
別に何もしてないよな?
てか、ツナが雲雀のいる応接室のあの窓に向かって手を振った時は遠いから確証は持てないがなんとなく機嫌が良さげに見えた。
なのにいきなりどうして?
今ツナの目の前に立っている雲雀がとても機嫌が悪いのはわかる。でもどうしてか訳がわからなくてツナはもう直接聞いてみる事にした。
「ヒバリさん何か不機嫌じゃないですか」
「君がいつまでも僕の事名前で呼ばないからだよ
夫婦なのにどうしていつまでもヒバリさんって呼ばれるんだろうね」
「そっ、それは慣れるまでゆっくりでかまわないって言ってくれたじゃないですかっ。昨日だって‥‥」
そう言った途端昨日あった事を思い出して赤くなる。
こういう普段の生活ははともかく、雲雀と気持ちよくなっている時には“恭弥さん”と呼んでいる。というか呼ばされている。
名前で呼ばないとツナの欲しいものをくれなくてずっと焦らされ続けて頭がおかしくなりそうになるからだ。
しかしその“恭弥呼び問題”は昨日解決済みだ。
雲雀は一度解決し結論の出た事を翌日蒸し返したりする事はあまりない。
ツナは首を傾げた。
今日の雲雀は絶対におかしい。
こんな不機嫌な雲雀を放置しておいたら社会の迷惑だし、このまま放っておいたりして機嫌が治らず余計に不機嫌になったりしたら困るのはツナだ。
当たられたりする事はないが夜が大変になる。やたら変なえっちをしつこくし出したりするので出来るならここで食い止めなければ。
これは‥‥例の手段を使うしかないのだろうか‥‥。
よし! と決意をしてツナは自分から雲雀にくっついて密着し甘えるように黒いセーラー服に羽織った学ランを少し引張ってやわい感触が気持ちいい雲雀の胸元の制服をぎゅっと握り、すりっと雲雀の制服に頬を擦り付け瞳がうるうる潤むようにして小首をかしげ、出来るだけ可愛く見えるように心がけてから上目遣いで見つめ
「恭弥さん。どうしたんですか? 何か変ですよ。でも、おれ、きょうやさんが大好きっ」
最近いつもえっちの最中に呼ばされている下の名前を呼ぶ時点で恥ずかしくなってきたツナは言ってる最中にだんだん顔が赤くなってきて最後の好きのセリフと一緒にもじもじ恥じらいながら雲雀の唇に自分からキスをした時には恥かしさのあまり顔だけでなく耳まで赤くなっていた。
雲雀の事が好きなのは事実なのだが色々な事が猛烈に恥ずかしい。
そんなツナを見つめる雲雀はなんとなく機嫌がよくなった。
雲雀に甘えながら、いつもは呼ばない下の名前を呼びキスをしただけで恥ずかしがる妻は非常に可愛い。
そんな姿を見て少し機嫌を浮上させたのだ。
機嫌がよくなった雲雀はツナを抱きしめて、もう一度今度は自分から唇を寄せて軽くキス。
「いつもはもっとすごい事してるのに、テレるんだ
おはようの挨拶も行ってきますの挨拶もお帰りなさいの挨拶もキスなのに、テレるんだ」
「だって、なんか‥‥テレます‥‥」
一度キスをしてしまったらまたしたい。
くいくいと雲雀の制服を引っ張ってまた唇をつける。
今度は深く舌と舌を絡めるように。
くちゅくちゃくちゅ
応接室に激しいキスの音。ツナは雲雀のご機嫌回復の事を忘れ去って夢中で雲雀の唇を味わう。
キスが終わる頃にはツナはあらゆる意味ですっかり雲雀好みに仕上がって出来上がり。
そんなツナに弱い雲雀はツナの髪を撫でつけながら優しく囁く。
「どうしたの? 今日はずいぶん甘えただね」
先程とは打って変わって機嫌がよくなった雲雀の姿にホッとしてツナはやわらかいからだに抱き付きながら拗ねるように言った。
「今日、朝起きたらきょうやさんいなくてさみしかったです。それに‥‥‥」
すりすりと雲雀に頬を押し付けてツナは頬を膨らませながらさみしかったと訴える。獄寺と山本はワンセットでラブラブ登校しているのにツナは大好きな雲雀がいなくて一人でさみしくとぼとぼ登校していた。
そんな時に雲雀を見つけてうれしくてツナはとても喜んだ。
なのに会いたかった雲雀に会ったら雲雀はいきなり不機嫌でツナは何かいけない事でもして怒らせたのだろうかと心のどこかで少し思った。
ツナはドジだししょっちゅう失敗はするし草食動物だしいつも群れているし雲雀にキライになられたのだろうかとどこかですごく不安になった。
それを小さな声で途切れ途切れに説明すると雲雀はツナをぎゅうっと抱きしめながら不安にさせたねと囁いて甘やかしてくれる。
「ここの窓から僕が君を見つけたら風なんかにスカートを捲られてる君がいたから
僕以外の奴が君のスカートを捲ってるのを見てイライラしただけ
しかも鼻の下を伸ばしたアホな男どもがそれを見てたから余計に腹が立ってきた」
嫌な事を思い出しむっとしながらツナに不機嫌の理由を告げる。
「ヒバリさん。俺のスカート捲ったの風だし、俺は全然もてないダメツナなんで、俺のスカートのなかを見ても誰も喜びませんよ」
「何言ってるの!風にまでスカートを捲られる位君は可愛いよ!」
ツナが自分はモテない人気ないと思い込んでいるがそれは妻に群がる害虫を毎日駆除している雲雀の努力の賜物だ。
恋人だった時から、いや、その前から彼女に近付こうというやからは排除してきた。
努力したのは雲雀だけではない“10代目大事”の、あの銀髪の忠犬爆弾女の “10代目の側には変な男は近づけさせねえ!”という日々の努力の賜物だ。
妻に近付こうとする害虫はマメにしっかり駆除しておかなければ増殖して仕方がない。
だいたいツナはモテないのではなくむしろモテまくっている。本人がモテてないと思うのはツナに近付く害虫は咬み殺してきた雲雀の努力の賜物と言える。
雲雀だって可愛い妻を持って毎日苦労しているのだ。
しかしツナは自分が可愛いとは思ってないので真っ赤になってテレている。
「ヒバリさんはきっと目がおかしいんです。俺の事可愛いなんて‥‥だいたい風が俺の事を狙ってスカート捲るなんてありえないですから」
「君位可愛いかったら風だって君のスカートを狙って捲るに決まってるよ」
雲雀はがんとして譲らなかった。
雲雀だけが見れるはずであるはずの妻の下着姿。
スカートの下。
それを他人に見られたかと思うとまた腹が立ってきた。
しかも当の本人はあまり気にしてない様子。
作品名:百合ヒバツナで2作詰め合わせ 作家名:浅田リン