百合ヒバツナで2作詰め合わせ
今日はハロウィンだ。
どうしようか。
ツナはため息をついた。
ハロウィンとはまた困った行事があったものだ。
雲雀と付き合う前までのツナにとってはほぼどうでもいい行事だったのだが雲雀と付き合いだしてからはツナにとってハロウィンはある意味決戦のようになった。
思い出す。確か去年は雲雀に「イタズラがお菓子か」と言われお菓子を渡したら「お菓子持ち込み禁止。校則違反。これはお仕置きしないとね」といわれて散々なめにあった。
いつもなら何も言われないし、自分だって持ち込んでいるくせにいきなりそんな事を言われ、ツナが「もう無理」と言っているのに散々気持ちいい事をされまくってしまった。
今年は何が来るのかわからないが覚悟は出来ている!
何が来てもどんとこいだ!
何せ今は雲雀の家!
というかツナの誕生日に女の子同士であるのになぜか婚姻届を貰ってプロポーズとかされてしまった。
ツナはボンゴレとかややこしい問題もあるので結婚できないとそれから暫くは保留にしたにも関わらずなんだかんだで言いくるめられ結局女の子同士にも関わらず成り行きで雲雀と結婚とかしてしまった。
なのでここは雲雀とツナの新居と言った方がいいのだろうか。
その新居いるためにもう校則違反攻撃は通じない。今回もちゃんとお菓子を用意している。
いつでも何でもどんとこいだ!
ツナがそんな風に拳を固め雲雀を迎え打つ決意をしたその時悪魔の呼び声が聞こえた。
「ただいま」
気配なく近づいてきて後ろからいきなりガバっと抱き付かれツナは“雲雀を返り討ち”などという多少後ろめたい事を考えていた事もありびっくりして固まってしまう。
しかしこんな事でビビっていては雲雀の妻とは言えない。
ツナは一瞬で立ち直り腹に回された雲雀の手に手を重ね身体をひねってお帰りなさいの挨拶に軽いキスをして
「おかえりなさい」
そう返すがいつでも突然な雲雀は自分のしたい事だけをする。
この日もそうだったようで突然言い出した。
「ところで今日はハロウィンだよね」
雲雀の言葉にツナは内心、よっしゃキターっ! と心でガッツポーズ。
さあどこからでもかかって来てください。
迎え打つ準備は出来ています!
内心で戦闘態勢をとりながら雲雀を見つめたが雲雀がツナに何かねだってくる様子はない。
おかしい‥‥
いつものヒバリさんなら強制的にイタズラとお菓子両方勝手に味わうはずなのに。
一体何が?
あ、もしかして今年はハロウィンえっちはないのかな?
なんかそれもちょっとさみしいかもだけど、無体な要求や恥ずかしい事をされないならそれでいいかも‥‥。
たまにはアレな感じのえっちでもいいけど、やっぱりえっちは普通がいいよな。
ツナはそう考えて一瞬、ほんの一瞬だけ油断した。
よりにもよって雲雀恭弥相手に油断をしてしまったのだ。
後で大どんでん返しが来る事などまったく知らずに…。
雲雀が要求して来たのは“ハロウィンの恥ずかしいえっち”ではなく、仮装だった。それも、いつもの雲雀の行動からどんな恥ずかしい衣装が出てくるのかとびくびくしていたら、なんと衣装は普通に可愛らしいかった。
スカート丈も普通だし胸元もすごく大きく空いているわけではない。羽根はないがまるで妖精のような服。
普通に着れて普通に可愛らしい。
お揃いの色の下着(パンツ)が用意されていたのは万が一服から透けた時色が変だとおかしいので普通だし、ブラをつけてはいけないと言われたのも、普通だ。何故ならこの服は背中が大きく空いているので下着が見えるのは見た目上よろしくないだろう。
ただ、この可愛い妖精のような服はわりともろいらしく着る時に気をつけるようにと散々言われ雲雀に手伝ってもらったりしたのだ。
いつもは着替えを手伝ってもらったりしたら必ずと言っていいほど悪戯してくる雲雀なのに、今日はそれがない。
一体どうしてしまったのだろうか。
されたらされたで困るけど、されなかったらされなかったでなんだか少しさみしい。
こんな事をこっそり思うなんてツナは相当重症だ。
雲雀はツナに妖精衣装を着せて満足したのか上から下まで見てうんと一つ頷いた。
「可愛いね。よく似合うよ。その服」
吟味に吟味を重ねただけあっていいできだ。
そう呟く雲雀にツナは自分の着た服を見てはにかんだように笑った。
「これ、妖精さんの仮装なんですか? なんか服からすごく甘いいい香りがしますけど、何か香り付けてるんですか?」
着た服から甘くて美味しそうな香りがしてツナは自分がお菓子にでもなった気分になる。
雲雀はそんなツナを見て首を傾げた。
「何を言ってるの。妖精のわけないでしょ。羽根ないんだし君がしてる仮装は、お菓子だよ」
雲雀の言葉に今度はツナは首を傾げた。
「お菓子?」
なんだそれは。何の仮装だ?
ツナの疑問に雲雀は楽しそうに答えはじめた。
「そう。お菓子。君はお菓子なんだ
そうしたら悪戯して、お菓子を味わう。両方出来て一挙両得だからね」
「何を言ってるんですか。お菓子なら俺ちゃんと用意してます。ここに、ほら!」
「何それ。知らない」
ばばんとツナが差し出したお菓子を没収し雲雀はぽいとその辺りに放り投げた。
「あーっ! ヒバリさん何するんですか!食べ物を粗末にするなんてっ! いけませんよっ!」
放り投げられたお菓子達を見てツナは当然雲雀に抗議する。
しかし雲雀は知らん顔。これは完全無視の姿勢のようだ。
「お菓子はちゃんと用意されてあるからそんな物はいらないよその服、苦労したんだよ。食べられる甘いお菓子で出来た服」
ツナの着ている甘い香りのする服を指して雲雀が言った。
今雲雀は“食べられる甘いお菓子で出来た服”と言わなかったか?
不吉な感じのその言葉にツナはいやーな予感がしてきた。
「その、ヒバリさん。この服、まさか、まさか‥‥」
「うん。食べられるんだよ。だってお菓子で出来た服なんだから」
「うそーっ!!」
お菓子の服!? ありえない!!
まさに衝撃の一言。
雲雀が大人しいと思っていたらまさかこんな裏があったとは!
ツナは雲雀の前で無防備な姿で突っ立ったまま大混乱。
そんな隙だらけのツナを猛禽類の雲雀が見逃すなどありえない。
案の定ツナがぐるぐるしている間に雲雀に押し倒される事になる。
そしてツナがのんびり混乱し悩んでいる間に服ごと色々な場所を口に含まれて、服と肌を一緒に溶かすように舐めたりくわえたりされ、薄い服が甘い香りを出しながらどんどん溶けてなくなっていく。
「うん。やっぱり美味しいね」
楽しそうな美味しそうな雲雀の言葉。
雲雀が楽しいのも美味しいのも当たり前で雲雀の大好物とも言えるツナは、服ごと所々雲雀に食べられ舐められ溶けたお菓子の服の隙間から見えるその白い肌は扇情的で、雲雀に食べられ服が溶けた時に甘い砂糖の蜜がかかったため、いつも以上に甘く美味しく雲雀を楽しませる事になった。
結局ツナはハロウィンでも雲雀にいいようにされてしまった。
つまり、いつもと同じ。
でもいつもよりちょっとだけ甘いハロウィンの光景。
作品名:百合ヒバツナで2作詰め合わせ 作家名:浅田リン