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PN悠祐希
PN悠祐希
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魔法少女おりこ★マギカR

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■ 第1話 ほむら、回想 ■



 数日後の放課後…
 ほむらは、学校からの帰宅の徒につきながら、魔獣の出現しそうな場所を探っていた。
 魔獣は、昼間よりも、人間の気持ちが落ち込みやすい為か、夜に出現することが比較的多い。
 だが、魔獣が出現しそうな場所というのは、昼も夜も関係なしに、強い瘴気を放っている。
 もしも、出現した魔獣に、普通の人が接触してしまえば、本人が事態を理解する間もなく、たちまち食い殺されてしまい、最悪の場合、死体すら残らない。魔獣の瘴気に触れただけでも、事故や自殺、あるいは、理由のハッキリしない殺人が、誘発すると考えられている。
 つまり、そのての事件が起こった場所は、魔獣の出現率が高いともいえる。
ゆえに、そういう場所を事前に見つけておき、ひと気のない夜のうちに、魔獣を狩る必要があるのだ。

 今は、行動を共にしていないが、巴・マミと佐倉・杏子も、この時間は、それぞれに、そういう場所を捜して回っているはずだ。
 そして、見つけた場所で、各々、魔獣討伐を行なうことにしていた。事前調査で、あまりにも瘴気が強く、多くの魔獣が出現しそうな場合に限り、協力して討伐に当たると約束を交わした上で。
 もっとも、マミはともかく、杏子に関しては、そもそもが隣町の住人であり、よほどの事がない限りは、この見滝原に来ることはない。逆に、ほむら達を、自分の町に呼び寄せるような事態は、今のところ発生していない。
 先の戦いで消えてしまった さやかを含め、四人で集まって魔獣と戦うという事態は、非常に稀ということだ。
穏和で、寂しがりやのマミはともかく、気性の荒い杏子、そして、ほむらも、他人に頼るということを嫌っていた為、なかなか共闘ということにはなりにくかった。

 それでも、ほむらは、同じ街に住み、同じ学校に通い、どうしても行動する範囲と時間が同じになりやすいマミとは、ここ数日は、何度か共闘していた。
 マミは、わりと最近になって魔法少女となった美樹・さやかと、行動を共にしていることが多かった。すでに、魔法少女暦数年と、ベテランの域に達しているマミが、新人の さやかの面倒を見ているといった感じだった。それまで、長い間、独りで戦ってきたマミは、共に戦ってくれるという後輩の存在を、大事にしていた。
 その二人の戦いの場に、さやかが魔法少女になった頃に転校してきて、すでに歴戦の魔法少女となっていた ほむらと、見滝原も自分の狩り場にしようと企んでやってきた杏子が、乱入するような形…結果としては、未熟な さやかをフォローする役回り…で参戦しているうちに、なんとなく四人で共闘するような状態になっていた。
 そのさなか、さやかが力尽き、消えてしまった。
 杏子は、見滝原を自分の狩り場にするということに興味を失ったのか、元いた町に戻り、独りで活動することが多くなった。
 ゆえに、残った ほむらと、一緒に戦っている時のマミは、どことなく嬉しそうであり、必殺の一撃を放つ際も、いつにも増してノリノリだったりする。誰かと一緒にいるということを知ってしまった今、もはや、独りで戦うのは、つらいことなのかもしれない。
 一方の、ほむらは…今は、実は、誰かと共闘するのも、まんざらではないと思うようになってきていた。
 それゆえに、ほむらとマミが共に戦った時の相性は抜群で、その戦闘力は圧倒的だった。
 そうやって、この見滝原の魔獣は、狩られているわけなのだが…
…魔獣が出現しなくなることは、ないのよね…
…人が、希望を持つことよりも、どうしても絶望してしまいやすい以上は…
 ほむらは、そのような事を考えながら、魔獣の瘴気を探っていた。
 その手にあるのは、紫に輝く宝石…《ソウルジェム》。魔法少女となった者が、たった一つの願いが叶えられることと引き換えに、自ら生み出す宝石であり、魔力の源。もっとも、ソウルジェムには、もっと重要な秘密が隠されているのだが…
 それはさておき、ソウルジェムは、瘴気を感知すると、その強さに比例して強い光を放つという特徴がある。魔法少女達は、そのソウルジェムの輝きを頼りに、魔獣の出現ポイントを探すのだ。
 そうして、適当に街の中を歩き回り…
「とりあえず、今日は、そんなに瘴気の強い場所はなかったわね」
 ほむらは、そう判断した。そういう日もある。毎日、必ず、魔獣が出現するというわけではないようだ。
そういう日は、家でユックリと休養するのが望ましい。
…それとも…巴・マミの家で、一緒に夕飯でも…
 ほむらは、そんな考えを頭によぎらせ、フッと微笑を浮かべた。

 マミは、数年前に、家族で車で外出中に、交通事故に巻き込まれ、両親は死亡、彼女自身も瀕死の怪我を負ってしまった。その時、キュゥべぇが現われ、契約を交わした。願いは、純粋に『助けて』…
 その願いは叶い、マミは死なずにすんだ。
 しかし、両親までは助からなかった。なぜなら、マミの願いは、『死にたくない』、『自らの命をつなぎとめたい』ということに他ならならず、両親の生存までは範疇に入っていなかったからだ。もっとも、人間誰でも…それも、まだ年端もいかない少女が、突然の事故で死にそうな時に、『死にたくない』以外の、何を願えるというのだろう。
 マミの願いは、間違ってはいなかった。
 だが、マミは、もう少し考えて願えば、両親も死なせずにすんだかもしれないと、後悔した。そして、独りぼっちになってしまったのは、自分のせいだと考え、魔法少女として戦う日々を送っていた。
 誰に相談することもできずに、ただ独り、ひたすらに。
 共に戦ってくれるかもしれない、後輩の魔法少女候補者…美樹・さやかと出逢うまでは。

 そのような関係で、マミは、学校の近くのマンションで一人暮らしをしている。
 だから、戦いだけでなく、日常でも、誰かが傍にいると、彼女のテンションは、途端に高くなる。
 ほむらも、故あって、今は一人暮らしをしている。よって、一人で夕飯を食べるよりも、誰かと共にした方が、という思いはある。何より、一緒に居ることを喜んでくれるマミの姿を見ることが、嬉しいと感じられるようになりつつあった。
…まさか、また、そんなふうに思えるようになる日がくるとは、思っていなかったわね…
…これも、あの子の、おかげなのかしら…
そんな気持ちで、ほむらは、マミの家の方に足を向けようとした。
 だが、その瞬間…
「…!」
 視線を向けた先…通りの向こうに、後ろ姿の三人…
 一人は、そのすぐ後ろに、他の二人が挟み込むような立ち位置にいる為、どのような姿かは確認できない。
 一人は、ほむらと同じ、見滝原中学の女子の制服を着ている。
 だが、その二人は、ほぼ眼中になかった。
 問題は、最後の一人…お嬢様学校として知られている私立学園…通称《白女》の制服を纏った、プラチナブロンドの長い髪を、頭の左脇…いわゆるサイドポニーの状態に結った姿が印象的な人物…
「あの制服…あの髪の色…間違いない…」
 ある記憶が、瞬間に頭を駆け巡り、ほむらの身体が、フルフルと震えた…
「美国…織莉子…」
…そう…アイツは、かつて…あの子を…
 その想いが、憎しみとなって、体中を駆け巡る。