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ワルプルギスの夜を越え  3・二人の聖処女

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切妻の背が四つ足の生き物の添った背骨のように落ちくぼんだ形。
建物の老朽からくる萎みを現す屋根に細く伸ばされた煙突、そこから白い煙が流れ出ている。
冬の近づく程に太陽は早く姿を消す、城塞都市の住人が活発に動く時間も短い
通りの家には少しの灯が続き、道の在処を照らしてはくれるが教会の回廊から下に降りた羊小屋の当たりには何もない。
小道と教会の一重の壁を背中に立つ小屋は、真っ暗の仲にポツンと立っているが、今日は女の子達の黄色い声が多く寂しげな外とは対照的な賑わいに満ちていた

「久しぶりの肉入りスープだな………」

干し藁の山に座ったエラは小屋の正面一番奥に作られた小さなキッチンで火に掛かる鍋をうっとりとした顔で見ている
そのキッチンでシグリと並んで夕餉の仕度をするのはロミー
ふくれっ面のロミーは食器を草で磨きながら、火に掛かった鍋をのぞき込んだ

「どこにあるの?細かく切りすぎなんじゃないの?」

鍋の中で煮通したベーコンは溶けて本当に小さな塊なっていた
ロミーは久しぶりに出る肉を楽しみにしていたのに、元々もらい物で小さな塊だったベーコンは更に細かく刻まれスープの出汁を助ける程度にしかなり得ず、当然口の中を楽しませる大きさのものはまったく無くなっているのに不満を漏らすも鼻腔は香ばしくなった香りを大きく吸い込んでいた
生意気な口とは裏腹、スープの出来を楽しみにしている幼い顔に向かってシグリはとろりと説明をする

「全部ぅ〜〜〜スープの中にいるよ〜〜〜ロミーの分も、エラの分も〜〜〜今日はご馳走なんだよ〜〜〜おいしいよ〜〜〜」
溶ける言葉のシグリ
肉の在処に文句を言うロミーにエラは藁山から回りを見回して

「ちっ、在るだけましだろー、耳毛ウサギの野郎がいたらとっつかまえて煮込んでやろうと思ったんだけど………最近見ねーからよぉー」

口を尖らせながらも良い煮込みの匂いを楽しむ
料理を担当するシグリ、食器を仕度するロミー、キッチンから干し藁の山に続く道に組み立て式のテーブルを仕度するエラとアルマ
そこに帰宅したナナとヨハンナ
ナナは青黒いボロの外套を入り口の藁の上に置くと、玄関に牧舎の杖を引っかけて

「エラ、お土産あるよ」と黒い鞣し革の袋を差し出した
「待ってたぜー!!」

エプロンを括るベルトに着けていた袋の中身、入れ口までぎっしり詰まった羊の毛
雲をボロ袋いっぱいに閉じ込めたような、真っ白には遠く灰色でどこか錆びた感じの綿にエラは目を輝かせて駆け寄ると

「これでハンスの足袋が作れるぜぃ!!」

袋の中を改める
放牧の間、ナナは羊を追っては毛を拾う。
落ち穂拾いと同じで、道に落ちてしまったのならばそれは頂く事ができる
羊の小屋を掃除する時もエラやシグリは毛を集める
寒さの堪える季節を前に一番大切な仕事でもあるが、矢張り放牧の間に集める毛の量は掃除程度で拾えるものより遙かに多く質も良い
キッチンから少しのところに張られた板間にエラは青い眼を輝かせて袋の毛を広げる

「うっはー、いいわー、こんだけあると良いの作れるぜー」
喜ぶエラを遠目にシグリが
「う〜〜ん、厚布取ってあるから明日繕おう〜〜」
「ちゃんと教父さまに報告してあるの?」
店を広げたエラと、楽しげに話すナナにアルマは注意をした

「ちゃんと挨拶の時に見せてきたよ。毟ったものなんてないから」

深く前髪をかぶり目が見えないようになっているナナは、口を大きく横に広げて笑みでアルマに大丈夫と告げる
「たくさんあると毟ったって言われるからね、でも本当に拾ったのだけ、森を歩くと木に引っかかったりするけど………それは仕方ないことだしね」
広げた口に悪戯な舌がペロリと出る

「やるなーナナ、引っかかって毟れちゃったのは仕方ねーもんなー」
「もう、でもたくさんあると助かるわね」

悪戯な方法、でも貧しい少女達の少しの知恵でもある
アルマは苦笑いでそれを見過ごす事にする

「よし、しっかり仕分けて作るぜー」

見た目の怖さとは別にエラは物作りに長けた女の子だった
もちろん、そうしなければならない生活。欲しいものが必ず手に入る裕福さとは縁のない孤児達の知恵と成長がそうさせているのだが、それを差し引きしてもエラの器用さは目を見張るものがあった。

何せみんなが暮らす羊小屋の中の家具のほとんどはエラが作ったものだ
枯れ木や倒木を拾いベッドをつくりテーブルを拵え、シグリが居座るキッチンの石を積み、左官仕事で仕立てたのもエラだ
コンビのシグリもゆったりした性格とは別に物作りには才能を発揮していた
料理と縫い物、小屋の仲間の服を作り、飾りのステッチや刺し子をするのは彼女だ

「ねーぇ!!あっち(私)の手袋はー!!次作ってくれるって言ったでしょー!!」

食器をテーブルに並べたロミーは板間に広げられた羊の毛を見て、エラを睨んだ

「順番でしょー」

小さくても一人前の少女は頬を膨らませて仁王立ち。でもエラは目を細めてからかうように言い返す

「やかっしー、まずはハンスのだ。お前はほとんど家にいるからいらねーだろ」

ロミーはまだ5歳。もちろん正確な歳を知る者はいないが、ここにいる10代のメンバーの中では一番小さい。
だから出来る仕事も少なく、家事手伝いがメインでもある
外に働きに行くエラやシグリ、ナナのように町の外にまで行く者に比べたら順番は落ちる

「うーん………欲しいよー!!あっちだって薪割りとかしてるもん!!」

確かに家の近くにしかいないロミーは大きな事は言えない。
口をすぼめ、恨めしそうな目をする

「僕の方が働いてないよ………エラ、ロミーに作ってあげてよ」

二人のにらみ合いにハンスが声を掛けた
大人の男が着る上着を無理して羽織っているために上着だけが立ち上がっているようにも見えるハンスは咳をし、言葉を選んでしゃべる
ほとんどどころかずっと家にいる自分、弱った体を温めるための足袋は欲しいが、仕事をしていない身を顧みるにまったくの贅沢品
姉のヨハンナに支えられた青白い顔は間仕切りの壁にもたれたまま

「ロミーは良く働いてるよ………」

申し訳なさそうな顔にエラは両手を挙げる

「あー、わーったよぉ、ちょっと足せば二つとも作れるさ」
頭に被っていた羊の毛の帽子を見せて
「こいつは予備だからよー、ロミーのは指無しのなー、それで折半だ」
エラは二人の思いを察して口を尖らせた

家の仕事とハンスの身の回りの世話もするロミー。ロミーに感謝しつつも働けない事を申し訳無く思っているハンス
二人のいじらしさと

「ありがとうエラ」

姉として感謝を即座に口にしたヨハンナの姿に、頭を掻く

「さあ、話しは後にして、暖かいうちに頂きましょう」

シグリと一緒に鍋からスープを注いだアルマは笑顔でみんなが席に着くことを進めた
小さなロウソク一つ、そこを囲むように縦長のテーブルに着く仲間達

「今日はナナが無事に帰って来て、小屋の仲間でみんな揃って食事ができるわ。感謝しましょうマリア様に」

家長*1であるアルマは手を重ね、糧に対する祈りを始める
皆一応に手を重ね、アルマの祈りに目を閉じて従う