真珠色に輝いて
凌牙が想像していた間に、遊馬はアストラルと二人でこそこそ内緒話をしていた。しばらくして話がまとまったのか、遊馬は凌牙に向き直る。
「なあ、シャークの歯も見せてくれよ」
「は? 何でオレが」
いきなり何を言い出すのかと問う凌牙に、遊馬は得意そうに答えた。
「鮫の歯ってさ、一生の間ずっと生え換わるんだって。前にテレビの番組でやってた」
「それがどうした。オレは人間だ」
「どっちでもいいよそんなの。オレはちゃんと見せたんだから、お前のも見せろよ」
「断る」
「えー、シャークばっかりずるい! オレにも見せろ、てかシャークも観察されろー!」
言いながら、遊馬はつま先立ちをして凌牙の前で大きく伸び上がった。手は凌牙の口まで目いっぱい近づけられたが、凌牙がひょいひょい避けるので全く届いていない。
無理やり背伸びしたので、ちょうどいい位置を遊馬の鼻がふらついている。凌牙は手を伸ばして目の前の鼻を指で軽く摘まんだ。
「あたっ」
「お前に本物の親知らずが生えたら考えてやってもいいぜ」
そう言って凌牙はくつくつと笑った。返答を聞いた遊馬の不満げな顔に更なる笑いが込み上げる。なので凌牙は、今度は立て続けに遊馬の鼻をぴんぴんと弾いてやったのだった。
廊下の片隅で男子生徒が二人戯れている。一人は緑の制服で、もう一人は一年生の赤い制服だ。
そんな彼らの遠くで、休み時間終了のチャイムが鳴った。
(END)
2012/04/18