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エヴァンゲリオン(カヲシン)詰め込み

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はじまり



「歌はいいね。」
「歌は心を潤してくれる。リリンの生み出した文化の極みだよ。そう感じないか、碇シンジ君。」

そう言ってシンジの前に唐突に現れた少年は、アッシュグレイの髪と赤い瞳、極端に白い肌といった他に目の当たりにする事のない美しい容貌を持った少年だった。

もうその時点で心を奪われていたのかもしれない。
シンジは丁度色んな事が起きて、そして友人すらいない状態に、心の底から寂しさと恐れ、飢えを感じていた。
そんなシンジに、カヲルはまさに清涼剤のように沁み渡った。


「やあシンジくん。今帰り?」
「え?あ、うん・・・。」

シンジはネルフの中で、ばったりカヲルに会った。
なんとなく、顔を合わせづらい。

この間一緒にお風呂に入った時。

他人を知らなければ裏切られる事も傷つくこともない、だが寂しさを忘れる事もない。
寂しさを永久になくすことは出来ないけれども他人を知ってるからこそ忘れる事も出来る、だから生きてゆける。
そう言って、カヲルはシンジの手を握ってきた。

「常に人間は心に痛みを感じている。心が痛がりだから生きるのも辛いと感じる。ガラスのように繊細だね、特に君の心は。」「そう、好意に値するよ。」「好きって事さ。」

そう言われた。
その後泊らせてもらったときに、こう言われた。

「僕は君に会うために生まれて来たのかもしれない。」

これらって・・・まるで・・・。

「どうしたんだい?」
「え?う、ううん、なんでも、ないよ。」
「・・・そう?あ、もし用事がないのなら、今から僕の部屋に遊びに来ないか?僕は君ともっと話がしたい。」

そう言って、出会ってから絶えることのない微笑みをシンジに向けてきた。
シンジは赤くなって少し俯いた。
僕・・・やっぱりなんか、変だ・・・。

「あ、用事、あった?じゃあ・・・」
「う、ううん!!」

シンジは慌てて否定し、思わずカヲルの腕を持って、顔を思いっきり見てしまった。
その瞬間、自分の顔が熱く火照ったのが分かった。
そんなシンジの様子も、変わらず微笑んだままのカヲルは気にする事もないように、じゃあ、行こうか、と歩き出した。
とっさに腕をつかまれた際のシンジの手を、そのまま持ち直して握ったまま。

「あ、あの、カヲルくん?・・・手、離して・・・」
「なぜだい?」
「なぜってっ・・・」
「君は・・・僕の事、嫌い?」

そう言ってカヲルは手を握ったまま、振り向いてきた。

「っえっ、う、ううん!!す・・・っ」

!?
僕は今、何を言おうとした!?
シンジは茫然と立ちつくしてしまった。
そんなシンジの様子を、またもや、いや、いっそ美しいと言えるような微笑みで、カヲルは見る。

「おいで。」

握った手をひき、茫然としたままのシンジを軽くひっぱるような形でカヲルは歩き続けた。

・・・僕は・・・
僕は・・・
・・・どうしよう、友達が出来たと喜んでいたつもりだったのに・・・
こんな気持ちの僕、絶対、気持ち悪がられる・・・どうしよう・・・

シンジはずっとそんな事をぐるぐると考えていた。

「どうしたの?ほら、座って?」
「っへ?」

気付けばカヲルの部屋についていた。
どれだけ同じ事をくりかえし考えていたんだ、とシンジは首をぶるぶると振った。

「?今日のシンジくんはどうもおかしいね?さあ、座って。ほら、お茶、飲んで。」

カヲルは軽くシンジの肩をおして、座るよううながした。そして手に、冷たい麦茶が入ったグラスを渡してきた。

「あ、ありがとう・・・」

両手でグラスを持って、コクリ、と冷たいお茶を飲んだ。
・・・冷たくて美味しい。
いっそ僕の気持ちも冷やしてくれたらいいのに・・・

「ねぇ、シンジくん?」
「っな、何?」

気付けばカヲルが左横に座っていた。
そして、スッとしなやかな腕を伸ばし、シンジの肩を抱いた。

「!?」
「・・・この間、言ったよね?好きだって?」

そういうともう片方の手でシンジの右頬を持ち、左に向けさせた。
目の前に、微笑みを浮かべた、たぐいまれな美しい顔がある・・・シンジはおもわず見とれてしまった。

その、美しい顔が、近付、い、て・・・?

何、このやわらかい感触・・・?
何、この体の芯がしびれるような感覚・・・?

「っふ・・・ぅっ・・」

へ、変な息がもれた!!
シンジは涙目で焦ったように思った。

これは・・・これは・・・キ、ス・・・?
僕は今、キスされてるの・・・!?

抵抗しようにも、手にグラスを持っていて動けない。いや、グラスを下に置けばいいんだろうけど、頭が回らない、手が動かない・・・。

「っんっ」

合わせていた唇を軽く離したかと思うと、今度は啄ばむようにくちづけられ、唇がなんだかしびれたように感じた。

「・・・好きだよ・・・シンジくん。ねえ、シンジくんは・・・?」

少しだけ唇を離し、囁くように、カヲルはつぶやいた。熱い息がかかる。
シンジはもうまともに考えられない、と思いつつ、ぼそりと漏らしてしまった。

「好き・・・」

そして自分の言った言葉が脳にしみこむやいなや、ハッとし、顔じゅうを真っ赤にしてわたわたとしだした。
カヲルはそんなシンジを愛しいものを見るように、ニッコリ笑いかけ、そして抱き締める。

「ありがとう。」

こんな気持ちでも、いいんだ・・・
こんな僕を受け入れてくれるんだ・・・シンジはツン、と心臓がせつなく痛んだ。
だが、こんな痛みなら辛くない・・・。

カヲルはシンジが持っているグラスをそっと取り上げて下に置き、シンジに向き直り、あらためてギュッと抱きしめたかと思うと、また唇を合わせてきた。
そして唇を離すと、お互い見つめ合う。

「カ・・・ヲル・・・くん・・・」
「・・・じゃあ、お互いを知ろうか?」

ものすごく良い笑顔でそう言われた。

「え”?」
「他人を知らなければ裏切られる事も傷つくこともないけど、寂しさを忘れる事も出来ない。言ったよね?一次的接触を極端にさける君だけど。怖くないよ、人と触れ合うっていうのはいいものだよ。」

いっそ妖しげな様子の笑みを浮かべて、カヲルはそう、のたまわった。