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Secret Operations

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PROLOGUE『The town which changed to hell』


――――――――――部屋で作戦内容の確認をしていると、ふと時間が気になり、時計を見た。すると、時計は、6時30分を刻もうとしていた。T-ウィルス散布は7時から始まるから、後30分程で、この地は地獄と化す。ドラえもんやのび太君達5人は、11時30分頃に、『どこでもドア』で、ススキヶ原に到着する手筈となっている。―――――――未来の為に必要な事とはいえ、のび太君達を騙すのは少々気が引ける。…しかし、これも仕事だ。
そう考えていると、いきなり、通信機のコール音が鳴り響いた。僕は徐に通信機に出た。
「こちら出木杉。何か?」
 僕はそう言った。すると、通信機の向こう側から聞き慣れた声が聞こえた。
「作戦開始30分前よ。準備は出来てる?」
 通信機から聞こえてきた声はナーシャのものだった。僕はそれに応える。
「まぁね、僕を誰だと思っているんだい?」
 少々癇に障る様な言い方をしてみた。
「そうね、期待してるわ。」
 ……ナーシャはやはりいつも通りか。…まあいいや、僕は僕の仕事をするだけさ。――――――――――――――――――――と思ったが、ふとある事に気がついて、ナーシャに尋ねた。
「……ところで、君は今何処にいるんだい?」
 僕がそう言い終わらない内に、通信機の向こう側からナーシャが応えた。
「今、ススキヶ原に向かってるわ。『T(タイラント)-ウィルス』が散布された一時間後ぐらいに着くかしらね。」
 ナーシャのその返答を聴き、話を切り上げる。
「じゃあ、健闘を祈っているよ。」
 僕がそう言うと、ナーシャは、
「あなたもね。」
 と言った後、通信を切った。僕も、通信を切り、通信機を懐に入れた。そして、作戦内容を再確認した。
――――――――――まず、7時にT-ウィルスが散布された後、のび太君の家の周りを重点的に警戒する。勿論、のび太君達が帰って来た時に、ゾンビ共に急襲されないようにする為だ。そして、のび太君達が学校に到着した後、のび太君達に極力見つからない様に行動する。僕の遂行する最も重要な作戦は、T-ウィルスサンプルの奪取とススキヶ原研究所で研究、開発を進めてきた、『Tyrant-L』と『Shoggoth』の情報の回収だ。………恐らく、のび太君達なら、この地獄でも生還出来るだろう。しかし、このススキヶ原研究所のみで開発している、『Shoggoth』と呼ばれる生物兵器だけが気がかりだ。何も無ければ良いけどね。
…そう考えながら、30分の時を過ごした。



やがて、時計の針が7時を刻んだ。もう、T-ウィルスの散布を行っている事だろう。


















やがて、1時間近く経っただろうか。外が少し騒がしくなった。
「…………遂に始まったか。」
 僕は徐に窓から外を覗いた。すると、ゾンビらしき人間が3〜4人ほどいた。そのゾンビから逃げ惑う人が多数いる事から、ゾンビが人間を既に襲ったという事は推測に難くなかった。やがて、玄関の扉を叩く音が聞こえる。どうやら、地獄は始まったようだ。僕は、FN ファイブセブンにマガジンを装填し、チャンバー内に弾薬を装填した。そして、引き出しの中に入っている、『雷管』と『爆薬』を取り出した。僕は部屋から出て、階段の傍で屈みこんだ。そして、爆薬に雷管を取り付け、階段にそれを仕掛けた。そして、その場から数メートル離れ、雷管から延びた、起爆スイッチを押した。
家の中に爆音が鳴り響き、階段は粉砕された。その音にゾンビ共が気づいたが、階段が粉砕されているので、上る事は出来ない。僕は、粉砕された階段の傍から、ゾンビの頭部を狙撃した。
のび太君みたいな早撃ちは出来なかったが、時間を掛けて狙い撃ちした。
30秒もすると、6体程いたゾンビも絶命した。僕は自室に戻り、のび太君の家を見た。のび太君の家は綺麗な方であり、近くにゾンビはいなかった。しかし、のび太君の家に向かっているように見えるゾンビは何体かいた。僕は、机の横に置いていた、スナイパーライフルの部品を組み立てた。そして、組み立てたスナイパーライフルを窓から出し、スコープを覗いた。そして、のび太君の家の近くを徘徊しているゾンビの頭部を撃ち抜いた。
―――――――――――――のび太君の家を壊される訳にはいかなかった。それは、作戦の任務の一つではあるが、何よりも一番の理由は、のび太君を生き残らせる為だ。彼はあらゆる世界でその力を惜しみなく活用してきたが、それをいつも万全に使えるとは限らない。おまけに彼は、血が苦手だ。碌な武器もない状況では生きるのは難しいだろう。だから僕が陰ながら援護する。そうすれば、彼は放っておいても、生き残るだろう。僕が今やるべき事は、ゾンビを狙撃する事だ。

――――――――暫くは、この単純作業の繰り返しだ。3時間30分後に、のび太君達がススキヶ原に着くまではね。
「……暇だな。」
 僕はそう呟き、スコープから目を離した。その時、視界の端に見知った顔が見えた。
「―――あれは、安雄君と…はる夫君か。」
 赤いベースボールキャップを被った小柄の少年と、やや小太りの少年の姿を見た僕はそう呟いた。
―――――――――――やっぱり、同級生を見殺しにする訳にはいかないね。
そう考えた僕は、『FN ファイブセブン』を構え、安雄君とはる夫君の近くのゾンビを銃撃した。その二人の近くにはあまりゾンビがいなかったので、殲滅するのは難しくなかった。すると、僕の存在に気づいた二人が僕に気づいた。
「出木杉じゃねぇか! ちょっとそっち行っていいか?」
 そう言ったのは、安雄君だった。すると僕は、部屋の隅から、建設現場で使うようなワイヤーを、窓からぶら下げた。元々は、僕が、家から脱出する時に使おうと思っていた物だ。まさかこんな所で使うとは思わなかったけれどね。
「玄関は今、入れない状態だ。悪いけど、このワイヤーを伝って来てくれ。」
 僕はそう言った。すると、安雄君が、ワイヤーを掴み、よじ登って来た。数十秒すると、僕がいる窓まで上がってきて、僕の部屋の中に入ってきた。
「おい、出木杉! これは一体どういうことだ!?」
 安雄君がそう叫んだ。まったく、これだから凡夫は困るね。事を急ぎすぎる。
「まずは、はる夫君を引き上げよう。話はそれからでも遅くない。」
 僕はそう言いながら、窓の下を見た。すると、はる夫君が僕に叫んできた。
「出木杉ー。このワイヤーを登って来いって言うけど、僕には無理だよ。」
 ……成る程、確かにあの体型じゃ難しいかもね。
「じゃあ、そのワイヤーを放さないようにしっかりと握ってくれ。後、両足を壁にくっつけるんだ。僕達がワイヤーを引き上げる。」
 僕がそう言うと、はる夫君は、僕に言われた通りの姿勢を作った。すると僕は安雄君に話し掛ける。
「どうやら、はる夫君が一人では上がれないらしい。僕達二人でワイヤーごとはる夫君を引き上げよう。」
 僕がそう言うと、安雄君は、
「ちっ、仕方ねぇな。」
 と言いながら、ワイヤーに手を延ばした。そして、二人で一気に引き上げた。
作品名:Secret Operations 作家名:MONDOERA