Secret Operations
ナーシャがその言葉を言った時、ナーシャは『グラッチ』を向かってくるゾンビ犬に向かって発砲した。僕も同時に『FN ファイブセブン』を発砲した。向かってきたゾンビ犬は悲鳴を挙げて倒れた。それを皮切りに、奥の教室の中からゾンビやゾンビ犬が数体出てきた。
「少し量が多いわね」
ナーシャはそう呟くと、背中に掛けてあった『AK-74M』を構え、バースト射撃でゾンビを処理した。
「手際がいいね」
僕がそう言うと、ナーシャは『AK-74M』を仕舞いながら言った。
「これぐらい当たり前よ。……そういえば出木杉君、あなたの友人にには銃を持っている事をどう説明したの?」
「警官からもらったって言ったけど」
ナーシャの問いにそう答えると、ナーシャは言った。
「まぁ、小学生相手ならそれで通るかもしれないわね。……それと、作戦内容についてだけれど、ススキヶ原研究所に着くのはいつぐらいになりそうなの?」
ナーシャがそう訊いてきたので、僕は答えた。
「この状況だと、すぐには着けそうにないね。『裏里』の辺りに安雄達を何とか留めて、その間に仕事ができればベストだね」
「でも、この作戦を実行するのはその状況じゃ難しそうよ。金田は私と出木杉君以外の人間が生き残っているのは良く思わないし、一般人を欺くのも簡単じゃないわ」
「そうなるね。となると、安雄達に研究所の浅い所で留まってもらって、僕達は研究所の奥で仕事をする形にした方がいいかな?」
「まぁ、金田さえ何とかできれば、後はどうとでもできるからね。今のところは何とも言えないね」
僕達はそういう会話を交わすと、後は殆ど何も言わずに探索をしていった。
暫くして僕達が担当した所の探索は終わった。
「思ったよりもいなかったな」
僕がそう呟くと、ナーシャが怪訝な表情で言った。
「おかしいわね。さっき来たときはもっといたのに」
「どうだろう? 北舎とかに移動したという事も考えられるからね」
僕がそう言うと、ナーシャは言う。
「まぁ、確かにそうよね。金田が一枚噛んでいるとも思ったけど、考えすぎか」
ナーシャがそう言うと、僕達は安藤さん達と合流する為に元の場所に戻る事にした。合流場所には既に安藤さんとはる夫君がいた。
「出木杉君。そっちの方はどうだった?」
僕が近づくと、安藤さんがそう尋ねた。
「何体かは怪物がいましたが、大した量じゃなかったので、問題無く済みました。……そちらの方は?」
僕がそう訊くと、安藤さんは間髪入れずに答えた。
「こっちも大した量はいなかった。案外簡単に済むかもしれないな」
「でも油断は禁物だと思いますよ。さっきの事もありますし」
僕がそう言うと、安藤さんは思い出した様に言った。
「そういえば出木杉君。さっき君は校庭でカメレオンみたいな怪物がいたって言ってたけど、奴はどんな動きをしてたか判るか?」
安藤さんがそう言ったので、僕は適当に答える事にした。
「見たっていってもちょっとだけで、戦闘の様子は見えませんでした。カメレオンみたいな怪物はその後すぐに何処かに行きましたし」
「そうか、判った。当面はそいつに充分に気をつけよう。それと、そろそろ北舎の方に戻って山本達と合流しよう。これからの事についても話したい」
安藤さんはそう言うと北舎の方に向かって歩いた。僕達も安藤さんに続いた。
やがて北舎に到着すると、安雄君や山本さんの姿は無かった。
「……もしかしたら、どこかの教室で探索中かもしれない。万が一の事もあるかもしれないから一応探してみよう」
安藤さんがそう言うと、僕達は手分けして探し始めた。
それから程なくして、山本さんと安雄君を見つけた。
「…………持ち場を離れるなんてどういうつもりだ?」
山本さんはどすの利いた声色で安藤さんにそう言った。
「そっちの探索が終わるのが遅いから心配して見に来たんだよ」
「こっちだって探索する場所が少ない訳じゃない。こっちは二人しかいないんだから、探索を終える時間が遅くなるのは当たり前だと思うが。それに何か問題があったら、お前の方に連絡を寄こしている」
「……解ったよ。俺が早とちりだった。……で、そっちは何か異常はあったのか?」
「数体の野犬とゾンビが数体いた他は何もいなかったな。ただ、そこのガキが意外と戦えるのには驚いたな」
山本さんと安藤さんはそう会話していた。すると、安雄君が僕とはる夫君の方に近づいて話しかけた。
「こっちは思ったより怪物共はいなかったぜ。ただ、グレネードランチャーを使う訳にはいかなかったから、『ベレッタM92FS』で戦ったけどな。ハンドガンでも、少数相手なら結構いけるな」
安雄君がそう言うと、今度ははる夫君が言う。
「こっちは安藤さんの後ろの敵を撃ってただけだけど、かなり怖かったよ。いつ撃つのが遅れて怪物に殺されるかと思うと必死だった。安藤さんが何回か援護してくれなかったら危なかった場面もあった」
はる夫君がそう言うと、安雄君が僕に訊く。
「出木杉はどんな感じだったんだよ? まあ出木杉は優等生だから、難なく奴等を始末したと思うけど」
「そんな事はないさ。確かに怖かった事は否定出来ないけれど、やらなきゃこっちが殺されるからね。必死でやったさ。あと、パートナーのナーシャさんも、銃の扱いがかなり巧かったしね」
「その事なんだけどさ、ナーシャさんって何処の国の人なんだろ?」
「ああ、その事か。さっきナーシャさんに訊いたら、ロシア人らしい。名前もロシア人っぽいしね。聴いてみた所、観光で日本に来ていたらしい」
僕は安雄君達にそう言った。いつまでこんな嘘が通用するか解らないが、今の段階では真実は言えない。
「ふ〜ん、そうか。じゃあ災難だったな。観光で日本まで来てくれたのにこんな事態になってさ」
安雄君がそう言うと、僕は「そうだね」と相槌を打った。すると、山本さんが全員に聞こえる声で言った。
「全員一旦相談室に集合するぞ! そこでこれからの作戦会議を行う!」
山本さんがそう言うと、山本さんを先頭にして僕達全員は相談室に向かった。
やがて相談室に着くと、僕達は適当な所に座った。やがて、山本さんが全員に言った。
「よし、じゃあ各自探索の結果を報告してもらおうか。まずは安藤から頼む」
山本さんがそう言うと、安藤さんは言った。
「俺達が担当した所は、ゾンビが十数体と野犬が数体だな。その他は何もなかった。ただ、二階に犬がいる事は不自然に感じたが、それ以外は何も無かったな」
「そうか、じゃあ次はナーシャと出木杉のチームが言ってくれ」
山本さんがそう言うと、ナーシャが言った。
「こっちもゾンビと野犬が数匹ね。ただ、ゾンビと野犬の数は同じ位だったわ」
すると、山本さんは少し考えたような素振りの後、言う。
「そうか、実はこっちも野犬が数匹いた。野犬が階段を上る事はあまり珍しい事じゃないが、二階にこれ程の数がいるとなると不自然だな」
山本さんがそう言うと、安藤さんはいつになく神妙な顔つきで言った。
「……人為的に仕掛けられたと言いたいのか?」
安藤さんがそう言うと、山本さんが答えた。
作品名:Secret Operations 作家名:MONDOERA