Secret Operations
「……のび太君は強いよ。そんな簡単に殺られるような人じゃない。それに僕はそんなに軽率な行動はしない」
「まぁそれはいいわ。それより、この状況を何とかする手はあるの? 彼等と行動を共にしていくつもりなら、B.C.W.との戦闘は避けられないわよ。もちろんこれからもね」
「取り敢えず、自衛隊の車輛に何か使えそうな物がないか探してくる」
僕はそう言い残すと、体育館の裏口に停めてある自衛隊の車輛に向かった。体育館の裏口を出ると、安藤さんが言っていた通り、自衛隊の車輛があった。車輛の中には89式小銃や64式小銃があったが、バイオゲラスに効きそうな火器は見当たらなかった。――やはり、バイオゲラスに効く武器はないか……。
そう思って安藤さんの所に戻ろうとすると、ある物が目に入った。僕はそれを手に取った。……これは、うまく使えばバイオゲラスを倒せなくても撃退は出来るかもしれない。
そう思った僕はそれを幾つか取ると、安藤さんの所に向かった。安藤さんを見ると、何とか凌いではいるようだが、かなり疲労が溜まっているように見えた。僕はFN ファイブセブンを取り出し、遠くから狙いをつけて発砲をした。弾丸はバイオゲラスの後ろ脚に命中し、バイオゲラスはこっちの方を振り向いた。
「GOAAAAH!」
バイオゲラスは一際大きな雄叫びを挙げると、僕に向かって鮮血の様な紅い舌を延ばしてきた。僕は右方向に飛び込み前転をしてその舌を回避すると、その舌は体育館の木製の床を破壊した後にバイオゲラスの口の中に戻っていった。するとバイオゲラスはまっすぐ僕の方に向かってきた。僕はすかさず、先程車輛から持ってきた閃光手榴弾をバイオゲラスに投げた。
数秒で閃光手榴弾は閃光を放った。その時、バイオゲラスの動きは完全に停止した。僕はその隙にバイオゲラスの頭部によじ登った。そして懐からボウイナイフを取り出し、バイオゲラスの右眼に突き刺した。
「GOAAAAAAAAAAAAAAAH!」
突き刺したナイフを抜くと、バイオゲラスの右眼からは鮮血が吹き出した。僕は急いでバイオゲラスから離れた。しかし、その時床を添って高速で進む物体には気付かなかった。僕はバイオゲラスの延ばした舌に捕まってしまった。バイオゲラスは僕を捕まえたあと、舌を戻していった。――まずい、このままじゃ奴に捕食される。何か手はないか……!
僕は、FN ファイブセブンをバイオゲラスに向けて撃っていったが、大した効果はなかった。バイオゲラスに捕食される直前まできたところで僕は死を覚悟した。もうのび太君達に逢えなくなると思うと、身を切られるような悲しい思いがこみ上げてきた。僕はその時完全に諦めていた。
しかし、僕の目の前で爆音が響き、バイオゲラスが派手に吹っ飛んだ。その瞬間にバイオゲラスの舌の拘束が緩んだ。僕はその隙にバイオゲラスの拘束から脱出した。すると、安藤さんが駆け寄ってきた。そのすぐ傍には山本さんもいる。
「出木杉君! 大丈夫か?」
「ええ。なんとか。……でも、さっきのは……」
僕はそう言い掛けると、体育館と北舎廊下を繋ぐ扉付近を見た。そこには、コルトM79を構えている安雄君がいた。――やはり、さっきのは安雄君のグレネード弾だったか。すると、安雄君が大きな声で叫んだ。
「出木杉! 奴はまだ動いてるぞ!」
安雄君がそう言った直後、僕はバイオゲラスが吹っ飛んだ先を振り向いた。既にバイオゲラスは立ち上がってこちらを見据えていた。FN ファイブセブンを構えて撃とうとしたが、残弾が無いのを示すスライドストップが発生しているのが解った。僕は弾倉を取り出し、予備のマガジンを装填した。再びバイオゲラスに照準を合わせると、違和感に気付いた。バイオゲラスの左眼が僕達の方を向いていないのだ。
「退がれ!」
いきなり、山本さんがそう言った。その瞬間、バイオゲラスは雄叫びを挙げてながら体育館から出ていった。
その場には僕達と数多くの死体、そして床には大量の空薬莢ばかりが残っていた。ただ、体育館の中は異常なまでの死臭が漂っていた。よく見ると、体育館にはナーシャはいなかった。すると、安雄君が僕に近づいてきた。
「出木杉、危ない所だったな。」
「うん。助かったよ。やっぱりあれを撃ったのは君だったのか」
「まぁな。流石に見捨てる訳にはいかなかったからな」
安雄君は微笑みながらそう言った。
「しかし、とんだ誤算だったな。よもや短時間の間にここが襲撃されるとは」
「確かにな。これからどうする?」
「下の階にいた生存者は体育館に集まっていた。となれば、上の階に生存者がいなければ生存者は俺達だけという事になるが、作戦は変わらないな。屋上を目指すだけだ」
山本さんはそう言うと、ミネベア9mm機関拳銃を肩にかけ、SIGSAUER P226を装備した。
「一旦相談室に戻るぞ」
山本さんがそう言うと、僕達は一旦相談室に戻った。ナーシャははる夫君と共に、体育館の近くの階段付近にいた。傍にはゾンビやゾンビ犬が倒れていた。どうやら、廊下側から来るゾンビを始末してくれていたようだ。
「……あいつは?」
ナーシャは僕を見ると、そう尋ねてきた。
「撃退は出来たけど、倒せてはいないよ」
僕がそう言うと、安藤さんが僕の言葉に続けて言った。
「倒せてないにしても、重傷は与えた。暫くは大丈夫な筈だし、また襲撃してきても重傷の所為で、今までのような動きは出来ない筈だ」
安藤さんがそう言うと、ナーシャは安藤さんに訊いた。
「で、あいつは何処に?」
すると、安藤さんは少し疲れたような口調で答えた。
「体育館の裏口からどこかに行った。多分山の方に行ったんだと思うが」
安藤さんはそう言いながら、MP5A5の状態を確認していた。
「そう。もしかしたら、山の方に生息しているのかもしれないわね」
ナーシャは淡々とそう言った。
「そのまま山から出てこなかったらいいんだけどな……」
安藤さんとナーシャがそう会話をしている間、僕達は相談室に向かっていた。相談室まで問題無く到着した。到着した後、山本さんは全員に聞こえるように言った。
「さて、では今後の動きだが、3階、4階の制圧を完了した後、屋上に向かう事になるのは変わらないが、先程の様に拠点が襲撃される危険性を考えると、この学校の構造を知る為に校内図が欲しい。お前達、校内図が何処にあるか解らないか?」
山本さんは僕と安雄君とはる夫君にそう尋ねた。すると安雄君とはる夫君は僕の方を向いた。自分達が解らないから僕に任せようって魂胆だろうか。実は僕も校内図がある詳しい場所は解らないんだけど。
「そうだな。僕も解らないけれど、職員室ならあると思う。もしかしたら他の教室にもあるかもしれないけど」
僕がそう言うと、山本さんは間髪入れずに言う。
「いずれにしても南舎1階に下りなければならないな。……二人程一階に下りて探してもらう事になるが、……出木杉と安雄の二人に行ってもらう」
山本さんがそう言うと安藤さんは驚いたような顔をして山本さんに言う。
「何で子供だけで行かせるんだ! 危ないじゃないか!」
作品名:Secret Operations 作家名:MONDOERA