Secret Operations
安藤さんが驚いてそう叫んだ。僕は、その悲鳴が気になり、悲鳴が聞こえた方向に走り出した。悲鳴が聞こえたのは北舎1階。僕はそこに向かって行った。
渡り廊下を通り、北舎に到達すると、そこには先程此処にいた人達は一人もいなくなっていた。あるのは、廊下に横たわる死体と、犬のゾンビだった。
「GRURURURURURURURURURURURU!!」
犬のゾンビは、僕に気が付くと、唸り声を挙げながら、急接近してきた。僕は慌てずに『FN ファイブセブン』を構え、走ってくる数体の目標に弾丸を撃ち込んだ。数発撃ち込むと、犬のゾンビは動かなくなった。やがて、僕を追ってきた安藤さん達が僕に追いついた。
「出木杉、一体何があったんだよ………」
安雄君はそう言う途中で、閉口した。思いもしない光景に驚いているんだろう。
「何があったんだ? さっきまで何人もいた筈だろ……。」
安藤さんは、そう呟いていた。SAT隊員といっても、想定しなかった事態に困惑しているんだろう。やがて、体育館の方から銃声が幾つか聞こえた。
「体育館の方から何発かの銃声が聞こえる。もしかしたら、生存者かもしれません。行ってみましょう。」
僕がそう言うと、僕は銃を構えつつ走り出した。体育館までは、2~30m程あり、その道中には無惨な死体やゾンビに変異してしまった人がいた。そのゾンビを的確に処理しながら進むと、数秒後には、体育館の扉まで来ていた。体育館の扉は開かれており、中には生きている人がいた。その中には、何人かの警察官もいた。すると、その中の一人が話し掛けてきた。
「雅、お前は無事だったのか…。」
そう言ったのは、山本誠司だった。山本さんの手には、『ミネベア9mm機関拳銃』が握られていた。
「山本、一体何があったんだ?」
安藤さんは、山本さんにそう尋ねた。すると、山本さんは徐に答えた。
「見ての通りだ。玄関の騒ぎに乗じて化け物共が一斉に襲い掛かってきた。生き残った者は体育館に退避し、何とか凌げたが、他の隊との連絡が取れん。恐らく、他の場所でも同じ様な事が起こっているんだろう。俺達が生き残れたのは、近くに退避できる体育館があったからだ。2階や3階の連中は壊滅的だろうな。」
山本さんがそう説明すると、はる夫君が言う。
「でも、いつまでも此処にいる訳にもいかないんじゃないか?」
はる夫君がそう言うと、山本さんが答える。
「ああ、確かにその通りだ。しかし、他の隊との連絡が取れない以上、他の場所は化け物共に制圧されたと見ていいだろう。そうなれば、不用意に動く事は死を意味する。今は迂闊には動けない状況だ。」
山本さんがそう言うと、安藤さんが言う。
「そうだけどよ、救助隊はいつ来るんだ?」
安藤さんがそう言うと、山本さんは答える。
「救助隊は今日の内には来ない。明日の未明頃に来る筈だ。…予定通りに進めばな。」
山本さんは手に持っている『ミネベア9mm機関拳銃』に弾薬をリロードしながらそう言った。僕は、ある事に気が付き、山本さんに尋ねた。
「でも待ってください。救助隊は何処に来るんですか?」
僕がそう尋ねると、山本さんは僕のほうに向き直った。そして、一息ため息をつくと、話し出した。
「……この学校の屋上だ。言わずもがな、この状況では屋上に辿り着く事は出来ない。何とかして、屋上までのルートを確保しなければならない。」
山本さんがそう言うと、安雄君が言った。
「屋上までのルートを確保って、屋上に行くまでの道の化け物を倒せばいいんじゃないのか?」
安雄君がそう言うと、山本さんは安雄君の言葉に答えた。
「確かにそういう事になるが、こちら側には多くの非戦闘員がいる。そう簡単には事は進まないぞ。」
山本さんの言う通り、此処には殆ど非戦闘員しかいない。こんな状況では、生き残れる人間はかなり限られるだろう。僕には、『ススキヶ原T-ウィルス散布及びB.C.W.(ビークゥ)戦闘データ算出実験』の詳しい概要は説明されていない。僕の任務は、地下研究所のB.C.W.のデータの奪取と証拠の隠滅。ススキヶ原研究所で独自に研究、開発されていたN.A.C.B.C.W.の情報は全く無い。となれば、これから来るであろうB.C.W.の襲撃を完全に防ぐ事は恐らく不可能に近い。僕と同じ立場で、高い戦闘能力を持っている人が後一人いれば大分違うと思うけれど…。
作品名:Secret Operations 作家名:MONDOERA