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009 英雄譚

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「テッド君?」
 不意に声がかけられる。それでも笑いは止まらない。ますます縮こまってかすかに肩が、震えた。
「どうしたんですか! テッド君!! 大丈夫ですか!!」
 駆け寄ってくるグレミオが抱き起こすようにテッドを支えた。顔が上げられない。
 それを気分の悪さだと、勘違いしたようだった。
「テッド君!」
「・・・・・・さ、ん」
 返事があったことに安心したようにグレミオが優しく問い返した。
「なんですか?」
「・・・・・・が、起き、る」
 慌てて、グレミオが声を潜めた。すっと、額に手を当てる。
「テッド君! 熱っぽいですよ!!」
 当たり前だ。これだけ笑えば体温だって上がる。思いっきり発散できない分、ひどく苦しいから、なお更だった。
「風邪、引いているなら、言ってくれれば、坊ちゃんには、今日の寝物語はグレミオで我慢していただくのに」
 テッドが顔を伏せたまま立ち上がった。少しふらつくのは、笑いすぎの酸欠のためだ。声を潜めて、途切れ途切れに言葉をつなぐ。
「大、丈夫、です。部屋には、一人、・・・・・・帰れます、から」
「本当に、大丈夫ですか!?」
 暗闇にわずかに頷くのが見えて、グレミオが困ったように声を潜めて告げた。
「暖かくして寝てくださいね。すぐに、ハチミツ酒を持って行きますから」
 振り向いたテッドが困ったように笑っていた。
「大丈、夫、です、から」

 しばらく後に、グレミオが暖かい湯気の上がるカップを手に、そっと、テッドの部屋に滑り込んだ。
「テッド君?」
 そっと声をかけて、返事がないのに安心した。眠れるのなら、たいしたことはないだろう。
 ひどく具合の悪そうな様子で蹲っているのをみたときには、どうしたことかと心配した。
 無理に微笑んで部屋へと帰る後姿が今にも倒れそうで、気がかりだったのだ。
 サイドテーブルに持っていた盆を載せ、そっと額に触れてみた。先ほどの熱っぽさはやや収まっているようだ。
 かすかな微笑を浮かべてとても幸せそうに眠るただの少年が、そこにいた。
 わずかに出ていた肩に布団を引き上げて、「おやすみなさい」と声を落とし、明かりを落とし、静かに扉を閉める。
「明日も元気に笑えるといいですね」
 徐々に細くなる光が完全に失われたとき、ベッドの中の少年が笑みを深くしたのを月明かりがぼんやりと浮かび上がらせていた。


2008/09/15 16:48:55

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たいそう安産なお題でした。
そもそも、テッド君を笑わせようと思ったのが事の発端。
4主とテッドが絡んだサイトを巡っていたのだけど、たいてい、テド君は悩んだり苦しんだりしていた。
いや、テド君も笑うだろ。と思って。
余談ですが、
「ミッキー・カーチス」は、ミッキーといえば、カーチスというくらい、阿吽の呼吸でつながってるんです。

作品名:009 英雄譚 作家名:紅絹