ideal
ゾロと『恋人』という関係になったのはいつだっただろうか。
ゾロと『恋人』という関係を実感したことはあっただろうか。
島に着くと、お前はふらりと居なくなる。
俺を置いて・・・。
お前が何してるのか、
お前が何しに出かけているのか、知ってる。
それでも
それでも
船の上では俺が『恋人』
そうだろ?
「浮かない顔してるな?」
「・・・そうか?」
先ほど、この船は島に着いた。
その少し前、ルフィの兄であるエースが船にやってきた。
エースと会うのは3度目だった。
ルフィと違い、しっかり者のエースとは早くに打ち解けた。
「エースはいいのか?」
「ん?あぁ、ひでぇよな兄ちゃ残して島に飛び降りるなんてよ。」
「ルフィじゃ仕方ねぇよ。」
「はははっまぁな。」
エースの訪問に喜ぶルフィだったが、
島に着くと新しい島への冒険へのワクワクが勝利し、
誰よりも早く島へ飛び出してしまったのだ。
「サンジは船番か?」
「そう、・・ぁ・・
サンジの視界の端に映りこみ、サンジはそれに近づいていく。
「・・・・・ゾロ。」
「・・・・・。」
「今日帰るのか?」
「・・・・いや、今日は帰らねぇ。」
「そうか。」
「・・・・・・。」
「気をつけて行ってこい。」
「・・・・あぁ。」
「・・・・・・。」
ゾロは船から飛び降りるとまっすぐに歩いていった。
「無理して笑うのは良くねぇと思うぞ?」
「・・・・・・。」
後ろから二人のやり取りを見ていたエースが声をかけた。
だが、サンジはそれに答えずにキッチンへと歩き出した。
エースは気づかれないように笑う。
そしてその後を追った。
「なーに作るんだ?」
「パスタだ。」
「美味そうだな。」
「邪魔だ。」
「まぁまぁ良いじゃねーか。」
「・・・ったく。」
サンジは忘れたいものがあるかのように、手を動かし続けた。
そんな様子を確かに見ていることをサンジが感じるように、わざとエースは見続けた。
「・・・・・・・っったく!!邪魔だっ!!」
「んじゃ、手伝うか?」
「・・・・じゃ、ほれこれ持て。」
そういうとパスタソースが入ったフライパンをエースに押し付けた。
大人しくエースはそれを受け取る。
そしてサンジはまた料理に戻るが、後ろでくすくす笑う声がして集中できなかった。
「なぁ、」
「・・・・・・・。」
「なぁ、サーンジ。」
「・・・・・・・。」
「なぁって、なぁサンジ。」
「・・・・・・・っんだよ!!!!」
「焦げるぞ?」
ニヤニヤと笑っているエースの顔の横、手に持っているフライパン。
それが普通の光景だったなら良かったのだが、エースの手は炎に変わっている。
フライパンのパスタソースは今にも焦げそうにグツグツいっていた。
「・・・っ馬鹿!!???」
「だから呼んでたのに、」
「・・・・・・いい。」
「・・・ん?」
「それお前のだから、焦がしていい。」
「・・・・・・ぇぇぇええ!!!???」
慌てて炎から手に戻すが、その時にバランスを崩しフライパンを落としそうになる。
ギリギリの所で掴み返す。
するとエースの頭上から笑い声がふってきた。
「ばーーか。」
「・・・・・・・っあぶねぇ、」
「ほら、茹で上がったぞ、かけろ。」
「・・・ほい、」
「よし、完成。」
「・・・・お前の分は?」
「おれのはいいんだ。」
「なんでだ?」
「いつも飯は一人だしな。」
「・・・・・・だーめだ。」
「・・・・・ん?」
「こっちこい。」
エースは片手に大盛りパスタ、
もう片方の手でサンジを捕まえてテーブルにつく。
イスに座り、その横に無理矢理サンジを座らせる。
フォークにパスタを絡ませると、それをあーんと言いながらサンジに突き出す。
「・・・・・いらねぇよ。」
「半分個しようぜ?」
「・・・・お前これぐらい余裕だろうが。」
「いーから、早く。冷めちゃうぞ?」
「・・・・・・・・・くそ。」
サンジは仕方なく口をあける。
だが、エースはギリギリのところでUターンさせ、自分の口に入れてしまう。
「美味ぇ!!!!!」
「・・・・・・・っおいテメェ!!!」
「やっぱり、おれはあーんして貰いたい側?みたいな?」
「・・・・は?」
「サンジがフォーク持ってくれ。」
そういってサンジにフォークを差し出す。
サンジは大人しく受け取った。
パスタをフォークに絡め、自分の口に入れる。
また絡め、自分の口に入れる。
まるでエースの方を向かない。
「・・・・・サンジ?・・なぁ?
食べちゃうのか?全部食べちゃうのか??」
「・・・・・・・・。」
「あぁーーっそれ以上は馬鹿っっ食うなっ!!!!」
「・・・・ぐぇ・・・。」
サンジの後ろからエースが飛び掛った。
イスの背もたれを挟んでエースが後ろから抱き着いている。
サンジの顔の左横にエースの顔があった。
「あーーーーーん。」
「・・・・・ったく、ほらよ。」
「・・美味い。」
「食わしてやるから離れろよ。」
サンジがため息をつきながらエースをどかそうとした。
だが、エースはそのまましゃべり続ける。
「やっぱり飯は誰かと食うのが一番だな。」
「・・まぁ、分からなくもねぇな。」
「お前、一人飯禁止な。」
「あーはいはい。」
「なぁ、サンジ。」
するとエースは今までのふざけた調子ではなく、真面目な声音で呼びかけた。
その声に何故かサンジは緊張した。
「・・・・なん・・だよ、」
「お前、ゾロに惚れてるのか?」
「・・・・・っ!!!?」
「あいつは何しに島に降りたんだ?」
「・・・・・っ・・」
「辛くねぇか?」
「・・・・・・・・エースには関係ね―――
「おれに抱かせろ。」
「・・・・・っ・・!!!!!?」
「おれが寂しさ埋めてやる。」
「・・・・・エー・・んぅっ・・」
「・・・・・・・っやめ・・」