ideal
優しい言葉だった。
温かいぬくもりだった。
向けられたのは笑顔だった。
呼ばれたのはおれの名前だった。
おれは初めて愛されるということを知ったんだ。
なぁ、理想の人はいるか?
理想は高いか?
条件は何個もあるか?
おれはそんなの無かった。
ただ、おれが好きならって・・・
それだけだった。
だけど、
おれは・・あいつの理想の人になれなかった。
都合の良い奴を演じるので精一杯だった。
おれはあるがままのあいつを愛してた。
でも、おれはあいつが好きでいてくれるように自分を変えた。
いくつもの感情を抑えてきた。
いつかあいつの理想的な人になれるんじゃないかって。
でも、エースに会って気づいた。
いつかあいつの理想通りになったら、それは一体誰なんだ?
おれはどこに行ったんだ?
おれは生きてるか?
エースはおれをおれのあるがままを好きだと言った。
『大丈夫、サンジが無理してたらおれはすぐに気付く。
そんで、そんなお前は嫌いだ。本心を言えって言うから。』
どんな本心でもいい。
ゾロが好きならそれでいい。
それがサンジだ。
見かけじゃない。
声じゃない。
身体じゃない。
お前が好きなんだ。
照れたエースを見て、
同じように照れた心に芽生えた感情におれはまだ名前をつけれないけれど。
それが、もしかしたらエースを幸せにしたら良いなって。
ただ自分の傷口を癒すためじゃなく。
言い訳じみてはいるけれど。
エースと居て落ち着いてるおれが伝わればいい。
エースと居て癒されてるおれが伝わればいい。
こんなに愛したいと願っていれば、いつか愛に変わるだろうか。
なぁ、ゾロ。
お前は、
理想の人がいるんだろう?
理想があるんだろ?
条件があるんだろう?
それをクリアする人物の『理想の人』である自信がお前にはあるか?
・・・・・あるんだろうな、お前なら。
嫌な思い出を増やして悪いと思ってる。
だけど、出来れば忘れないで欲しい。
お互い前へ進もう。
ありがとう。
過去形で言わせてくれ、
愛してた――――――
end