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へなちょこマ王とじょおうさま 「8、人としての死」

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 なのに、母のことを、母の泣き顔を思い出しただけで、心が揺れ、「泣くな」と言った自分が、心の汗を流し始めている。

 小さく嗚咽を漏らしてしまった私を、小さな塙和が抱きしめてくれる。
 胸に顔を埋めて~とかやってみたかったけど、私よりも塙和は大分小さいから、せめて、塙和が抱き着いて私の泣き顔が見えないようにしてくれた。

 ごめんなさい、塙和。
 天勅を受けて、王としての生が始まった途端に泣きだしてごめんなさい。
 強くなるから。
 だから、今だけは泣くことを、許してください。
 …違うね。
 塙和と出会って間もないけれど、塙和はいつも私を気遣って、気にかけてくれた。だけど今だけは、私に起こっていることは無視して、聞かなかったことにしてください。
 塙和から離れて、一人で歩きだした瞬間からは、きっと明るい私に戻っているから!

 歩きだし、進香を済ませ玄武に乗り込んだのはそれから一刻を過ぎた頃だった。