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へなちょこマ王とじょおうさま 「11、私、家出します!」

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 不思議そうな顔色を察したのか、おじさんは優しく、恥ずかしそうに笑った。太陽が出てきてあたたかくなって来た空気と同じあたたかい微笑みだった。
「これかい?これは娘に渡そうと思っていたもんだ。結局、娘は妖魔に襲われて、渡せなかったんだがね…。」
「おじさん…」
「店も、俺は奥で品を作るだけで、店のことはすべて娘に任せて来た。妻が亡くなってずっとそうだったから、それが当たり前だと思っちまったんだな、子供は親の後に逝くもんだって…崩れかけた国で、そんなことは夢のまた夢だって、分かっていたはずなのにな…」
 父と娘のふたり家族。
 残された父親。
 私と母さんに重なった。正確には、私が逝った後の母さんに。
 寂しそうに笑うおじさんが、性別も育った国も世界もなにもかも違うのに、私が王として、娘としての生を終えて消えた後の母さんに重なって見えた。

 放っておけないだろ!
 影に潜む私の守護者たちがため息をつくのが、なんとなくわかった。肩に乗る峨城は、妖魔だとばれないようにいつものようにクツクツ笑うのを頑張って耐えているのか、揺れる身体を誤魔化すように私の顔にすり寄って来た。触れる赤い羽が小刻みに揺れている。
 今回は私に賃金が払えるようになるまでは手伝うつもりだけど、それまで頑張ってね、峨城。心の中で声援を送って、私はおじさんを見つめた。
「おじさん、私を雇ってみない?」
 商業の巧国の子供だからね、こういうの、私得意なんだ!
 そう言うと、おじさんは私が母に重ねているように、私に娘さんを重ねて見たのか、とても複雑そうな色を宿した瞳を揺らした。

 おじさんに、新しい一歩を踏み出す勇気と、明日を生きる希望を!