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「アキラ」
 夢と現を彷徨っていたアキラの意識は、その声音に違和感を抱いた。
 窓の外は暗い。正確な時刻は分からなかったものの、それでもまだ起床時間にしては早すぎるような気はしていた。
「アキラ」
 どろりと溶けかかった混沌としたアキラの頭の中だったが、やはり違和感は否めなかった。
 無理矢理にこじ開けた視界はまるで靄がかかっているように曖昧だったが、目の前に朧げに見えた人影の主が誰なのか、アキラにはすぐに分かった。
 しかしそれでは、道理が合わない。
 もう一度、声が聞こえた。その声に、アキラはまるで飛び起きるように上体を慌てて起こしたのだった。
「アキラ、トイレいきたい……」
 金色の長い前髪が顔の半分を覆っている。それはアキラがよく知る相手の風貌に違いなかったが、素直に認めるわけにはいかない現実がそこにはあった。
「ぐ……んじ?」
「アキラあ……トイレぇ〜……」
 舌足らずな物言いと、そしてアキラに圧し掛かるように乗った体の軽さと小ささ。まるでそれは、グンジのミニチュア版。まさに、そうとしかアキラには表現できずにいた。
「ど、どうしたんだよ、その格好?!」
 恐らくアキラの形相があまりにも壮絶だったのだろう。
 目の前のグンジ(ミニチュア版)は、寄せた眉根の皺をさらに深くし、ついに潤んでいた瞳から雫が零れ始める。
「う……うえ〜……」
 本格的に泣き出してしまった相手に、アキラはただ狼狽するしかできない。そして太ももあたりに、じわりと感じた温もりと湿った感覚。
まさか。アキラが恐る恐るその場所を見遣ると、くっきりと染みができていた。




 濡れたシーツもタオルケットもアキラのパジャマもそして、グンジが着ていたパジャマもパンツもすべて洗濯機の中に放り投げてボタンを押す。
 ふとアキラがため息をつくと、視界の端でびくりと揺れる人影が見えた。
「ご、ごめんなさい〜……」
 先ほどからずっとべそをかいているグンジ(ミニチュア版)は、アキラのため息が自分を責めているものだと思い込んだらしく泣きながら謝っていた。
「いや……半分は俺のせいだから……」
 どう対応していいか、アキラは未だに混乱していた。
 なぜこうなってしまったのか、アキラには皆目検討がつかない上に、記憶もない。
 目の前にいるのは、確かにグンジには違いなかったが、しかしアキラのよく知るグンジとはかなりかけ離れていた。
 なんといってもミニチュア版なのだ。
 年齢は五歳前後だろうか。身長はアキラの腰ぐらいしかなく、何もかもが小さい。
 いつもならば見下ろされているアキラがグンジを見下ろしているという事実が、どうにも落ち着かなかった。
「グンジ……なんだよな?」
「アキラ……まだおこってる……」
 潤んだ瞳で上目に見られると、アキラは何も言えなくなってしまう。この目の前で泣いているグンジ(ミニチュア版)をどう扱っていいか分からなかった。
 困ったときの神頼み、ならぬ、困ったときのキリヲ頼み。
 アキラはそう思いつくと早々に行動に移す。
(そうだ、キリヲなら……)
 邪険に扱いながらも、何だかんだと世話を焼いてくれる頼れるご近所さん。
 アキラはキリヲの家へと向かうことにした。




「はあ〜?」
 時刻はまだ明け方。仕方のない反応だとアキラは思う。
 呼び鈴をそこまでやるかというほど鳴らし続け、ドアをたたき続けた結果、出てきたキリヲの剣幕にグンジ(ミニチュア版)は咄嗟にアキラの後ろへと隠れたほど、キリヲは不機嫌そのものだった。
「だから、グンジが……」
「ねこちゃんよお……冗談なら笑えるものにしろや……。そりゃあお前のガキだろうがよお……もういいか、いいだろう、じゃあな」
実にキリヲらしい答えだと感心してしまった。しかしアキラの求める答えは有耶無耶のままだったことに気付いたところで、目の前のドアはもう閉ざされている。
キリヲは確かに、アキラの子供だと言った。聊か認めることに抵抗もあったし、何よりキリヲの言うことだ。しかも状況が状況であったことも考慮して、アキラは意を決してついに本人に問うことにした。
「なあ、お前のお父さんとお母さんは……誰なんだ?」
 ずっとアキラの後ろに隠れていたグンジ(ミニチュア版)の肩に手を置きながら、アキラは努めて優しく問う。きょとんとアキラを見つめる瞳は純真無垢そのもので、アキラはまるで見えない何かに圧倒されつつあった。
「おとうさんはグンジで、おかあさんはアキラだよ? アキラ、どうしたの? これ、なぞなぞ?」
 なぞなぞだったらどんなに良かったことか。アキラはぐらぐらと頭の芯が揺れるような眩暈を感じた。
「じゃ、じゃあなんでお前の名前がグンジなんだよ……」
 最早独り言に近いアキラの呟きに、やはり先程と同じ眼で首を傾げながら、グンジ(ミニチュア版)は律儀に答える。
「おとうさんが付けたんでしょう? おまえはおれの子供だから、グンジジュニアだって言ってたよ」
「ぐ、ぐんじ、じゅにあ……」
 ネーミングセンスの欠片もない、確かにグンジが付けそうな名前だと思わず納得してしまった。
 そして自分が母親だとして、どうしてそれを止めなかったのかと記憶がないのを抜きにしてもアキラは後悔してしまう。
「なんで……お母さんって呼ばない?」
「アキラがいやがるから……」
 生んだ覚えのない子供。そもそも男に子供なぞ産めるはずもない。不可思議な現実、けれどアキラの手をしっかりと握る小さな手の温もりが嘘だとは思えなかった。
 思いたくなかったのかもしれない。
「そっか……」
 もう、納得するしかないとアキラは思った。
 不思議とアキラの中からすでに違和感など消えていて、代わりに胸の内に広がるものは、愛しさ。
 自分と、グンジの子供。それはずっと心の何処かで願っていたことだったせいかもしれない。
 口にすることはなかったが、そんな光景を何度も夢に見たことがアキラにはあった。
「帰って飯にするか……」
 アキラが呟きながらグンジ(ミニチュア版)を見遣ると、満面の笑みで頷いている。つられるようにアキラも微笑みながら、二人は手を繋いで家路へと戻ることにした。
 しかし帰路の途中、アキラの頭にふと疑問が浮かぶ。
「そういえば……」
 グンジがいなかった。
 ミニチュア版ではない、ここでいうところのお父さんであるグンジの姿が、どう思い返しても浮かんでこない。
「グンジ……お父さんは……どこに……」
 そこでアキラを襲うのは、激しい頭痛。ぐるぐると回る視界に、吐き気が喉元までせり上がってくる。
 左手に感じていた温もりが、次第に冷たくなっていることに気付き、アキラは思わず小さな手をぎゅっと握った。
「おとうさんは、ここのせかいにはいないよ」
 明瞭な声が響く。けれど、アキラはもう立っていられないほどの頭痛で地面へと落ちるように座り込んでしまう。
 その拍子に離れてしまった手を捜し求めるようにアキラは自分の手を宙へと彷徨わせた。
「ばいばい、おかあさん……」
 甲高い、子供の声。
 いやだ。アキラは確かにそう思った。
 しかしその想いはすぐにどろりと溶けて、視界が真っ白になると同時に、アキラは意識を手放してしまった。



作品名:Family!! 作家名:たかな