東方~宝涙仙~ 其の拾(10)
今はとにかく紅魔館へ向かい原因をつきとめるしかない。妹を恐れながらも内心犯人、原因はフランドールではないことを望んでいる。もしもフランドールが犯人だとして、自分には止めれないことがわかっているから余計に不安になる。
妖精の森の上を越え、紅魔館の近くまでついた。紅魔館の前にいるたくさんのメイド妖精達が見えるほどに近くにいる。その団体の中のパチュリーの姿も確認できだようで、少しほっとした。
「あれが紅魔館?」
レミリアの下で声がした。
「そうなんだけど、あれー。なんか煙があがってるなー」
「入って大丈夫なの?」
「入っちゃいけない場所だからコッソリじゃなきゃいけないのだー」
「そういうのをスニーキングって言うんだよね!」
「そーなのかー」
ルーミアとかぼちゃんがすでに紅魔館まで辿り着いていた。
レミリアが二人の元へ降りて声をかけた。
「アタナ達私の紅魔館に何か用?」
レミリアに睨まれたルーミアが硬直し、かぼちゃんは「誰?」という顔をして硬直するルーミアを不思議そうに見ている。
「やばい!かぼちゃん逃げろぅ!」
「え、ちょルーミアちゃん!?」
「逃がさないわよ、もしかしたら紅魔館の異変について知ってるんじゃない?」
レミリアは真剣な顔で、しかし口元はにやけたような表情でスペルカードを取り出した。
「呪詛『ブラド・ツェペシュの呪い』!!」
「いげぇ!!かぼちゃん危ない!ナイフが変に起動変えて飛んでくるよ!!」
「南壁『ネパーレル・ローツェ』」
「え?」
かぼちゃんもスペルカードを発動した。
壁のような結界がルーミアとかぼちゃんの前に張られる。薄い結界ではあるが、大技ではない呪詛を防ぐには十分だった。
そして防いだ弾やナイフがオレンジ色の弾に変わ弾幕となってレミリアへ返される。不意にカウンターを喰らったレミリアは弾幕を完全には避けきれずかすかに腕に弾をかすらせた。
「すごいなー、かぼちゃん!」
「チルノやルーミア程度の体格にして私の弾幕を返すなんて…」
レミリアは呆気にとられて目を丸くした。ダメージは少なかったにしろ、驚きで少し笑顔になる。
レミリアは攻撃を止めて二人に話しかけた。
「アナタ達、この紅魔館の炎上についてなんか関係あるかしら?」
逃げようとしていたルーミアはレミリアの状況を把握して、レミリアに近づき質問に答えた。
「残念ながら知らないなー」
「でしょうね。冷静に考えればアナタ達が紅魔館に奇襲しかけれるとは思えないわ」
「何かあったのかー?」
「紅魔館から煙があがっててね、私のいない間に」
「フランドールがやったのかー?」
「……。」
レミリアは答えれなかった。フランドールであるとは断定したくない。
下を向いて、答えないレミリアにルーミアは「悪いこと言ったかな」という感じに顔をのぞいた。
ルーミアはこの時のレミリアの顔を初めてみた。普段のレミリアは偉そうで、でもどこか優しそうだけどやっぱり怖い、そんなイメージだった。しかしこの時のレミリアは寂しげで不安そうな顔をしていた。
「あの、紅魔館の吸血鬼…」
ルーミアはレミリアを呼んだことがない。ゆえにこう呼んだ。
「なんか悪い事言った…。ごめんなー…」
「アナタは別に悪くないのよ」
気まずかった。
………。
……………。
………。
…。
「あ、えー、ルーミアちゃん…」
かぼちゃんがルーミアの耳元でささやいた。
「紅魔館、行かないほうがいいんじゃない?」
「チルノや大ちゃん来たらどうするか決めよう」
「んー、入らないほうがいいと思うけどなぁ」
「チルノは何が何でも行きたがりそうだし、でも大ちゃんは断固拒否しそうだし……」
コソコソ話す二人にレミリアはまた話かけた。
「アナタ達はこれからどうするの。あんま紅魔館には近づかないほうが身のためよ」
「え、あー。帰る!行こう、かぼちゃん」
「ふえ?ちょっと!」
スタスタと行ってしまうルーミアを慌てて追いかけるかぼちゃん。
「また今度安全な時に遊びに来なさい」
「……わかった!」
背中を向けて手を振るルーミアに、振り返って手を振るかぼちゃん。
その二人を落ち着いた優しそうな親のように見送ってからレミリアは紅魔館へ向かい直した。
レミリアは独りでにつぶやく。
「紅魔館の異変の原因とか運命は読めないのに、あの二人とまた後で会う運命が読めるわね…」
その表情にいっさいの笑いはなく
真剣そのものだった
▼其の壱壱(11)に続く
作品名:東方~宝涙仙~ 其の拾(10) 作家名:きんとき