情火
瀬戸海に浮かぶ長曾我部の船が、どんどんと小さくなっていく。いずれあの船が白煙を上げるその日まで。
「我の掌の中で、踊れ」
ククと喉を鳴らす。同じ滅びを願うものでも、吉継とはあまりに質が違う。毛利家大事とは違うところにある、たったひとつの至玉なるもの。
これから日ノ本は大きく荒れて、舵取りもまたひどく難航することだろう。数多の武将が散らばる盤上において、賽を振るう男は幾人もいる。
その中で、すべての者を出し抜いて、思い通りの盤面を描いてみせる。そうして最後に、あの一つ目を己のものとするのだ。
これほど甘美なものはないと呟けば、潮の香りを乗せた浜風が応えるように吹き荒れた。