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Bang

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「奥村弟、第二分隊隊長」
 はい、と奥村雪男が手を挙げながら、おや、と思う。二人揃っていない現場ではフルネームで呼ばれる。『弟』と呼ばれたと言うことは、兄、燐も招集されているということだ。
「奥村兄、第五分隊隊長」
 へーい、と集団の後ろで敷地の石に座り込んだ奥村燐が、暢気な声で返事をした。同時にぷかりと煙が薄く上がる。
「おい、禁煙だぞ」
 祓魔隊隊長の中年男性が苛立ったような声で注意する。へいへい、と燐は忙しそうにフィルターまで吸うと、煙を宙へ吹き出しながら携帯灰皿に吸い殻を放り込んだ。
 まったく。最近寮にも帰ってこないし、来たのも知らなかった。いったい何してたんだよ。
 雪男は足早に燐へ近付いていく。同時にすらりとした影が燐の傍に立った。
「ちょっと」
「よ、出雲。お前も第五?」
 袋状の携帯灰皿とタバコを、シャツの胸ポケットに仕舞う。ライターはズボンのポケット。仕舞うところが決まっているらしいが、その規則性が雪男にはまるで理解できなかった。
 いつもワリィな、と言う燐に、ホントよ。とすげなく返すところは相変わらずだ。
「髭くらい剃ってきなさいよ。なんなのその無精ひげ」
 神木出雲が呆れたような目つきをする。
「あー、ちょっと忙しくてよ」
 ばりばりと頭を掻きながら、燐はたはは、と笑った。互いに任務続きで久しぶりに顔を見た燐は、ボサボサに伸びた髪の毛に、伸ばしているにしてはまばらで汚らしいヒゲがこびりついている。祓魔師のコートはだらりとボタンが空き、下からはよれよれのワイシャツの襟元に、ネクタイがだらしなくぶら下がっている。てかてかに光ってよれよれのスラックスにブーツを履いているが、以前見たときよりもくたびれているような気がする。
 出雲は女性用の祓魔師のコートに、下は薄いタートルネックのシャツ。そしてすらりとした脚がはっきり見て取れる、伸縮素材のピタリとしたワークパンツに、ごついブーツと言う出で立ちをして居る。使い込んで飴色になった道具入れがついたベルトが腰に回されていた。相当の場数を踏んできた証拠だ。
 彼女の後ろから、燐の分隊に配備された祓魔師《エクソシスト》たちがぞろぞろと近づいてきた。
「燐サン!チーッス!」
 集団の中から、一人の候補生《エクスワイア》が犬のような人懐っこさで声をかけてくる。明るい茶色に染めた髪の毛に、顔のあちこちにピアスがついている。正十字学園の制服をずいぶん着崩していた。
「イツキ。なんだ、お前も一緒かよー」
「あ、ヒデー!なんスかぁ」
 殴る真似をした少年の手を避けながら、ワリィ、ワリィと笑う。最近燐と一緒にいるのをよく見かける少年だ。
「出雲サン、雪男サン、チッス」
 真面目なのだかフザケてるのか判らないが、少年は大仰にお辞儀をする。
「こんにちは」
「…どうも…」
 出雲がためらいがちに答える。彼女はこう言う一気に距離を縮めてくるタイプは苦手だった。自分もそうかも、と雪男はぼんやり思う。
 燐に懐いている少年は少し悪ぶってはいるものの、彼なりに礼儀正しく、明るい。だけれども最近の自分はちょっと仲良く出来そうと思えるタイプではなかった。
 燐と仲良くしているのも、心がざわつく。いったい、どうしたというんだろう?
「神木君、雪男君、ちょっと」
 隊長が二人に手順を確認してくる。
「下級悪魔は聖水と聖銀弾で対応できるでしょう」
「王クラスの小鬼《ホブゴブリン》は、ライフルで狙撃。同時に詠唱騎士《アリア》と手騎士《テイマー》で対応します」
「聖水手榴弾はC濃度、CC《ダブルC》濃度の二種類で準備しています」
 隊長はうんうん、と頷いている。本当に判っているのだろうか?口癖のように言う『若い奴の意見も尊重する』なんて台詞は、実のところ面倒な立案や責任をこっちに押しつけているのじゃないだろうか。
 今回の任務は中級悪魔が出現する現場だ。かなりの数にも関わらず組織だった動きが見られることから、上級悪魔が関与している可能性もある。万が一を考えて、上級から中級までのかなり手練の祓魔師を集めた。結構大規模な祓魔隊だ。それを十の分隊に分けて、それぞれ担当地区を割り振る。各隊には竜騎士《ドラグーン》、騎士《ナイト》、手騎士《テイマー》、詠唱騎士《アリア》がバランスよく振り分けられて、何があっても対応できる体制になっている。その隊を纏めるのが雪男たち上一級祓魔師だ。
 出雲と雪男は数年前に上一級祓魔師へ昇格した。燐は後一歩、というところでまだ上二級に留まっている。
 同期で京都出張所に配属された、勝呂竜士、志摩廉造、三輪子猫丸たちも、すでにそれぞれ上級祓魔師に昇格している。時々東京の方の任務に駆り出されて、顔を合わせることもある。祓魔用具を扱う『祓魔屋《フツマヤ》』の娘、杜山しえみは医療班として任務を受けることが多く、今日は別の現場に駆り出されているらしい。
 燐たちの代は比較的昇格の早い有望な祓魔師たちが多かったが、それでも正十字騎士團としては、燐に早く上一級にあがってほしいらしい。そうすれば、出雲、雪男、燐をそれぞれ隊長に据えて、より祓魔任務の数がこなせるようになるからだ。
 調子のいいことだ。以前は脅威としてしか見ていなかったくせに。
 いまだに勉強はイマイチだが、燐には統率力もあるし、判断力も素早い。そこを團としては買っているらしい。
 勝手に買ってくれるのは良いが、正直なところ本能とか野生の勘の方が大きいのではないかと思っている。相変わらず悪魔の知識は足らないし、詠唱は一節も唱えられないし、手騎士の素質がないとは言え、悪魔のクセに使い魔を呼び出すことも出来ない。それなのに、まさしく都合が良いとしか思われないタイミングで、彼の本能が標的を祓う。
 そんな都合のよさは、別の方面でもいきなり発揮されることがある。この前も祓魔現場で免許も持っていない大型バイクを突然乗りこなしてみせた。私有地内だったから良かったようなものの、少しでも条件が違っていたら始末書どころでは済まなかった。その兄の後ろに乗らざるを得ない状況だったのだが、アクション映画もかくやと思われる相当に荒っぽい運転で、これなら散々『|慎重すぎる《ビビリ》』とこき下ろされる自分の運転の方がよっぽどマシだと思ったし、運転しないで、と言うか、神様だか悪魔だか知らないけど免許だけは絶対に取らせないでくれ、と真剣に願ったくらいだった。
 そんなワケで、まぁ、そこそこにまともな祓魔師になった燐は、後は名目的な資格を取るだけとなっている。今は苦肉の策として、資格上は立場が上の出雲や雪男を補佐につけてなんとか体裁を保っている、と言うことらしい。
 かなり厳しい現場にも出ているみたいだし、実務経験としては十分なはずだ。あとは昇格試験を受ければ良いはずなのに、それもせずに現場に出まくっているなんて、一体何をしているんだろう?
 くれぐれも問題は起こさないように、と言葉を変えて長々と続く隊長の説教が下らなすぎて、ハイハイ、と生返事をしながらそんなことを考えていた。
「ひょー、出雲サンと雪男サン、相変わらずクールッスねー」
作品名:Bang 作家名:せんり