衝動SSまとめ④
快新
2012/4/23更新
幼馴染という関係を壊せない快斗。
大学生設定です。
つづきます。
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大学で俺は工藤新一と毛利蘭に出会った。
二人はいつも一緒に来て、一緒に帰っていく。
幼馴染を失った俺にとって二人の関係は羨ましかった。
だからいつも見ていた。
その二人と仲良くなるきっかけは結構恥ずかしい話だけど…
俺が寝坊して提出課題の説明をすっかり聞き逃した日。
高校卒業して青子とのことでひどく落ち込んでいた俺は、友人を作る気力も無くて、大学で孤立していた。
だから、友人に聞けば…という友人が居なかった。
以前なら、友人だろうが友人じゃなかろうが話しかけていたのだが、
どうやらこの一人の期間にすっかり人見知りになってしまっていた。
そんな時だった。
毛利さんが近づいてきて俺に親切に教えてくれた。
どこか青子に似た毛利さんの優しさが本当に嬉しくて、ちょっと泣きそうになったのを覚えてる。
そのすぐ後に事件か何かで遅れてきたのだろう工藤新一とも挨拶を交わして、
俺は大学で初めての友人が二人も出来た。
それからは俺は大学に居る間は二人と過ごしていた。
新一と一緒の時はサボったり、事件の話を聞いたり。
蘭ちゃんと一緒の時は真面目に勉強したり、美味しいお弁当を分けてもらったり。
3人一緒の時は、俺が手品したり、たわいない話をして笑いあった。
空っぽになった俺の心が少しづつ埋まっていった。
でも、俺は大学以外では2人を避けた。
出来れば休みだって一緒に過ごしたい。
それぐらい2人のことは大切で大好きになっていた。
でも、2人の時間をこれ以上減らしたくない。
俺は自分で青子との関係を壊してしまった。
自分だけが傷つくなら構わない、でも俺以外の人は傷つけたくない。
そんなのはあまっちょろい考えで、不可能だということは分かってる。
見えない所、知らない所で人を傷つけることは沢山あるから。
だから・・だからこそ、俺に見えている人、知っている人だけは傷つけたくない。
「黒羽どうかしたのか?」
「ううん、何でもない。」
今日も俺は新一と蘭ちゃんと一緒に居る。
蘭ちゃんは選択が違うから、別行動になっている。
だから今は新一と2人きり。
「なぁ、抜けないか?」
「もう、新一は単位がピンチでしょうが。」
「ちぇっ。」
「蘭ちゃんに報告するよ。」
「・・・わーったよ。」
「よしよし。」
「ヤメロ。 はぁ…眠ぃ。」
新一は高校生探偵で、結構有名人。
大学生になってからは事件の数も増えたらしく、大学に来れない日も多かった。
だから、単位が非常にやばい。
でも、忙しくて眠れない日も多いからいつも眠そうにしている。
蘭ちゃんと俺はそんな新一が心配でたまらなかった。
「ノート取るから、寝てな。」
「・・・さんきゅ。」
「いびきかいたらフォローしないからね。」
「気をつける。」
「そうして下さい。」
「ん…」
そうして新一は眠ってしまった。
こんな日もよくある。
新一は頭が良いから簡単に追いつける。
ただこうして単位を取れば何とかなるのだ。
新一の寝顔は凄く穏やかで綺麗。
いつも見惚れてしまう。
よく蘭ちゃんに新一と俺が似てるなんて言われるけど、どこが似てるんだろうと思う。
こんなに綺麗な寝顔、絶対に俺はしてないだろうし。
ずっと見つめていたいけど、
約束したからにはしっかりノートを取らないといけないので、
視線の先を新一からノートに移す。
隣から微かに聞こえてくる新一の寝息がなんて心地良いんだろう。