衝動SSまとめ④
快新
2012/4/24更新
幼馴染という関係を壊せない快斗。
大学生設定です。
つづきます。
――――――――――――――――――――
「新一起きて。」
「ん…ん…」
この瞬間がいつもドキッとする。
寝顔をいつまでも見ていたいような…
その閉じた瞼で見えない瞳を早く見たいような…
少し新一が動いてサラサラな髪が顔を隠した。
勿体無くて髪の毛をどかそうと手を伸ばしたが、心臓が妙にドキドキいってる。
何故だか緊張してしまい、新一にあともう数センチっていう所で手が止まってしまった。
行き場の無い手がその場で固まってしまっている。
「俺、何意識してんだ…?」
俺はゴクリと唾を飲み込み、意を決して新一の髪の毛に触れようとした。
指先に神経が集中してる。
その指先が新一に少し触れた瞬間、
「黒羽くん?」
「うわぁっっ!!!」
「痛てっ」
背後から蘭ちゃんが声をかけてきた。
本当に全神経が指先にいってたみたいで、まるで気付かなかった。
そして吃驚した拍子にどうやら新一の頭を思い切り叩いたようだ。
「ごっごめん新一!!」
「・・・・・」
「黒羽くん、ごめんね。」
「いっいやいや蘭ちゃんは悪くないよ。
俺がボーッとしてたのが悪いからさ。…新一大丈夫?」
「・・・・・痛い。」
「ごっごめん・・」
「もう新一、黒羽くんだってわざとじゃないんだから。いいじゃない。」
そんなに痛かったのだろうか、新一はだいぶ機嫌を損ねたようだった。
確かに、俺の手も少し痛い。
「ほら、新一お昼に行くよ。黒羽くんも行きましょ。」
蘭ちゃんに無理矢理立たされて新一が連れて行かれる。
俺のせいで少し不機嫌な新一にもお構いなし。
でも、俺はそれが素敵だなと思う。
遠慮するとき、遠慮しないとき、その境界線をお互いがよく分かってる。
俺は荷物を鞄にしまい、2人の後を追う。
「今日のお昼は何かしら。」
「じゃじゃーんv今日は春巻きです。」
「わぁ美味しそう。いただきます。」
いつものように大学の中庭のベンチに腰掛け、3人分のお弁当を広げる。
こうして3人で過ごすようになってからはほぼお弁当。
俺は元々料理は好きでやっていたから構わないけど、新一はやれば絶対出来るのにあまり関心が無い。
ほっとくとコーヒーだけとかそんな食生活になってしまうから、毎日蘭ちゃんがお弁当を作って来る。
そんな蘭ちゃんを休まてあげたいと思って、週に一度俺が3人分のお弁当を作る。
そこまで味に自信があったわけじゃないけど、2人とも美味しいと言ってくれるから嬉しかった。
「今日もすっごく美味しい。さすが黒羽くん。」
「ありがとう蘭ちゃん。」
新一も少しは機嫌が直ったのか黙々と食べてくれた。
放課後になり、いつものように二人は俺に声をかけてくれる。
でも俺はいつものようにそれを断る。
「ちょっと調べ物して帰るからさ。」
「手伝おうか?」
「大丈夫。ありがと蘭ちゃん。」
「・・・俺も調べもん。」
「そう?じゃあ私、買い物あるから先に帰るわね。」
「え?」
「じゃあね黒羽くん。新一も。」
「おう。」
「え?ちょっと、え?いいの!?」
「行くぞ黒羽。」
二人が別々の方向に向かって歩き出す。
それは大学でもよくある光景なのに、
俺は毎回、毎回、あの日あの時の俺と青子を重ねてしまう。
もう二度と振り向き合わないんじゃいかって。
もう二度と笑い合えないんじゃないかって。
おおげさって分かってても。
止まらないんだ。
怖いんだ。