東方宝涙仙~ 其の壱弐(12)
東方〜宝涙仙〜 ※入力ミスなどが含ませる可能性があります。あらかじめご注意を
「また壊しにきたの?」
ー紅魔館・門前ー
レミリアはルーミア達を見送り、紅魔館の門前まで来ていた。門前にはレミリア以外誰もいなかった。しかし上空から見た限り、正面の門前から入ると紅魔館のエントランス付近が妖精メイド達でごった返しているので裏口に回ることにした。
「爆発したのは…見るところキッチンあたりかしら」
この時レミリアは少しほっとしていた。キッチンなら何者かの犯行による爆発ではなく、料理中の事故の可能性も充分に考えられるからだ。犯人なんていてほしくない、犯人がいてもあくまでも事故であってほしい。それがレミリアの願いだった。
「なんにせよ爆発した場所を探さなきゃならないわね」
裏口についたレミリアは紅魔館の二階にあたる部分の廊下の窓を開けて中へ侵入した。自分の家にこんな入り方をするのなんてどこぞの居候猫型ロボットのお友達の眼鏡君くらいだろう。母親を怒らせた日には黄色いミニヘリコプターらしきものをつかって二階の窓から入り込む。今のレミリアの侵入方法はそんな感じだ。
ただ、忍び込む理由が全くもって違う。あくまでもあっちは解決が簡単な理由、こっちは深刻で場合によっては解決が難しい。
そろそろ太陽が沈む頃、今日の月は紅いそうだ。
ー紅魔館内部ー
「侵入成功ね。なんで自分の館なのにこんな入り方しなくちゃならないのかしら」
レミリアの入った場所は煙すら立ちこめていない、いわば安全な場所だった。音すらしない静けさ、夕暮れと蝋燭しか明かりのない暗い廊下が似合っていた。
「随分と幻想的ね。こんなにも綺麗だったかしら、ここ」
レミリアは窓から月を探した。まだ完全には月が出ておらず、少し残念そうに目線を戻した。
レミリアはキッチンへ向かった。爆発の原因であろう場所の第一候補はキッチンだからだろう、迷うことなくキッチンを目指した。
「誰もいないようね。みんな逃げたせたのなら不幸中の幸いね。でもまだ被害の薄いところにいるのは確かだろうけど」
キッチンに近づくにつれて足元に煙が見られ始めた。
そして、気付くとすでに周りは煙い廊下になっていた。進めば進むほどだんだんと煙が濃くなってゆくのを感じた。
どんなに煙が立ち込めようともレミリアが止まることはなかった。一秒でも早く原因をつきとめて安心を得たいのだろう。
小さめの第一キッチンの近くまで来たわけだが、だいぶ焦げ臭い匂いが広がっている。ただ、死体の匂いなどはしなかった為、ここでの死者被害者はいないと思われる。レミリアはキッチン内に入ろうとしたが、崩れ落ちた天井や物のせいでとても入れる状況ではなかった。
「困ったわね…」
ため息をついて困った顔をするレミリア。そこに一人の少女がレミリアに話しかけた。
「お姉…さま…?」
レミリアが振り向く。レミリアと少女の空間の時間が止まったようにお互いが静止する。
煙のなかでお互いは相手の目を確実に見ていた。
音が消える。時間が消える。空気が消える。意識が消える。
そんな感覚に包まれた。
時間を動かすようにレミリアの口が動いて音が鳴りだす。
「フラン………」
目の前の少女はフランドール。まさに姉を探していた妹が奇跡を起こしたかのように出会えた。
しかしフランドールを幽閉されたはずなのにここにいるということをレミリアが知った今、どうなるだろうか。しかもこの紅魔館が崩れている状況であらゆる物を壊す犯人候補の妹が目の前にいてしまうのだ。
「お姉さま……あのね、その…」
「やっぱまたあんたなのね」
「え」
「なによ。また壊しにきたの?」
「聞いてお姉さま、今回はフランじゃないの!」
「今回は?じゃあやっぱ咲夜を殺したのもあなたなんじゃない!」
「違うよ!フランじゃないってば……なんで…なんで信じてもれないの…」
「しかもなんで何も聞いてないのに今回の異変を否定してくるのよ。怪しいとしか思えないわ」
「だって…お姉さま絶対に疑ってるから疑い晴らそうかと思って…」
「残念だったわね、疑い晴れるどころかどんどん疑われてるわ」
「ホントに違うってば…咲夜も今回もフランじゃない……」
否定すればするほど怪しまれるフランドール。必死で説得しようとするが全て逆効果になってしまう。
「咲夜を殺したのは……」
「もう構ってられないわ。地下に戻りなささい」
フランドールはその場から動かなかった近づくこともなく、下がることもなくその場に立っていた。
フランドールを無視するようにレミリアは歩き出した。煙が舞う廊下を再び歩き出し、崩れ落ちた瓦礫を踏みしめて前進する。レミリアが動くとフランドールも後ろをついてきた。
「お姉さま…」
フランドールがどんなに呼び止めようともレミリアは反応を示さない。ただひたすらにどこかへ向かって歩き続けるばかりだ。
レミリアはすでに考えるのをやめているのだろう、今の彼女からは何も読み取れない様な姿だった。階段を上がるときも無表情で、慣れた作業を行っているかのようにスタスタと上がっていた。
そしてついにレミリアの口が開いた。
「フラン…」
フランドールは急に呼ばれたのでしっかりと対応できなかった。
「フラン…あのね、あなたはどうしようもない事をし続けてきたのよ。それは認めなさい」
「お姉さま、でもフランは…!」
「いいから黙って認めなさい!!」
フランドールは黙るしかなかった。かつて完全な狂人であったフランドールは何も否定できないのだ。もう、やってないにしても現実を認めるしかなかった。
「お姉さま、どこに向かってるの?」
「いつかわかるんだから、その時に自分で調べなさい」
フランドールは話を逸らそうとしたのだが、成功はしなかった。
「フラン、あなたはもう充分自分と戦ったわ」
「どういうこと?」
「昔のフランならもっと狂って紅魔館を壊したかもしれない。それなのに今はこんな落ち着いて、成長したものね」
「褒めてるの?」
「ええそうよ。でもねフラン、あなたは償えない事をしてしまったのよ」
「………」
「咲夜を殺した、そして幽閉されても牢獄から脱出して紅魔館を壊した。なかなかの罪よこれは」
そう言うとレミリアはあるドアの前で立ち止まった。
「ここよ」
「ここって…」
「あら、覚えてるのかしら?」
「初めて紅魔館に入ってきたときのフランとお姉さまの部屋だよね」
「よく覚えてたわね」
二人の目の前にあるドアには『二人の部屋』と書かれた木の札が貼りついていた。まだ咲夜どころか、妖精メイドやパチュリーすら紅魔館にいなかった時代。レミリアとフランドールが二人きりで過ごしていた紅魔館で、二人が使用していた部屋。
元々は小さい家で紅魔館とは言えなかったのだが、パチュリーが仲間に加わったことで横に大きな図書館を設立。そして住む場所を失った妖精を居候させてゆく事となり、どんどんと敷地・建物は開拓され、今の紅魔館にいたる。
この部屋はその小さな家を模してフランドールとレミリアが作った部屋であり、思い出の部屋である。そんな部屋になぜレミリアはフランドールを誘導したのだろうか。この後わかることになる。
「また壊しにきたの?」
ー紅魔館・門前ー
レミリアはルーミア達を見送り、紅魔館の門前まで来ていた。門前にはレミリア以外誰もいなかった。しかし上空から見た限り、正面の門前から入ると紅魔館のエントランス付近が妖精メイド達でごった返しているので裏口に回ることにした。
「爆発したのは…見るところキッチンあたりかしら」
この時レミリアは少しほっとしていた。キッチンなら何者かの犯行による爆発ではなく、料理中の事故の可能性も充分に考えられるからだ。犯人なんていてほしくない、犯人がいてもあくまでも事故であってほしい。それがレミリアの願いだった。
「なんにせよ爆発した場所を探さなきゃならないわね」
裏口についたレミリアは紅魔館の二階にあたる部分の廊下の窓を開けて中へ侵入した。自分の家にこんな入り方をするのなんてどこぞの居候猫型ロボットのお友達の眼鏡君くらいだろう。母親を怒らせた日には黄色いミニヘリコプターらしきものをつかって二階の窓から入り込む。今のレミリアの侵入方法はそんな感じだ。
ただ、忍び込む理由が全くもって違う。あくまでもあっちは解決が簡単な理由、こっちは深刻で場合によっては解決が難しい。
そろそろ太陽が沈む頃、今日の月は紅いそうだ。
ー紅魔館内部ー
「侵入成功ね。なんで自分の館なのにこんな入り方しなくちゃならないのかしら」
レミリアの入った場所は煙すら立ちこめていない、いわば安全な場所だった。音すらしない静けさ、夕暮れと蝋燭しか明かりのない暗い廊下が似合っていた。
「随分と幻想的ね。こんなにも綺麗だったかしら、ここ」
レミリアは窓から月を探した。まだ完全には月が出ておらず、少し残念そうに目線を戻した。
レミリアはキッチンへ向かった。爆発の原因であろう場所の第一候補はキッチンだからだろう、迷うことなくキッチンを目指した。
「誰もいないようね。みんな逃げたせたのなら不幸中の幸いね。でもまだ被害の薄いところにいるのは確かだろうけど」
キッチンに近づくにつれて足元に煙が見られ始めた。
そして、気付くとすでに周りは煙い廊下になっていた。進めば進むほどだんだんと煙が濃くなってゆくのを感じた。
どんなに煙が立ち込めようともレミリアが止まることはなかった。一秒でも早く原因をつきとめて安心を得たいのだろう。
小さめの第一キッチンの近くまで来たわけだが、だいぶ焦げ臭い匂いが広がっている。ただ、死体の匂いなどはしなかった為、ここでの死者被害者はいないと思われる。レミリアはキッチン内に入ろうとしたが、崩れ落ちた天井や物のせいでとても入れる状況ではなかった。
「困ったわね…」
ため息をついて困った顔をするレミリア。そこに一人の少女がレミリアに話しかけた。
「お姉…さま…?」
レミリアが振り向く。レミリアと少女の空間の時間が止まったようにお互いが静止する。
煙のなかでお互いは相手の目を確実に見ていた。
音が消える。時間が消える。空気が消える。意識が消える。
そんな感覚に包まれた。
時間を動かすようにレミリアの口が動いて音が鳴りだす。
「フラン………」
目の前の少女はフランドール。まさに姉を探していた妹が奇跡を起こしたかのように出会えた。
しかしフランドールを幽閉されたはずなのにここにいるということをレミリアが知った今、どうなるだろうか。しかもこの紅魔館が崩れている状況であらゆる物を壊す犯人候補の妹が目の前にいてしまうのだ。
「お姉さま……あのね、その…」
「やっぱまたあんたなのね」
「え」
「なによ。また壊しにきたの?」
「聞いてお姉さま、今回はフランじゃないの!」
「今回は?じゃあやっぱ咲夜を殺したのもあなたなんじゃない!」
「違うよ!フランじゃないってば……なんで…なんで信じてもれないの…」
「しかもなんで何も聞いてないのに今回の異変を否定してくるのよ。怪しいとしか思えないわ」
「だって…お姉さま絶対に疑ってるから疑い晴らそうかと思って…」
「残念だったわね、疑い晴れるどころかどんどん疑われてるわ」
「ホントに違うってば…咲夜も今回もフランじゃない……」
否定すればするほど怪しまれるフランドール。必死で説得しようとするが全て逆効果になってしまう。
「咲夜を殺したのは……」
「もう構ってられないわ。地下に戻りなささい」
フランドールはその場から動かなかった近づくこともなく、下がることもなくその場に立っていた。
フランドールを無視するようにレミリアは歩き出した。煙が舞う廊下を再び歩き出し、崩れ落ちた瓦礫を踏みしめて前進する。レミリアが動くとフランドールも後ろをついてきた。
「お姉さま…」
フランドールがどんなに呼び止めようともレミリアは反応を示さない。ただひたすらにどこかへ向かって歩き続けるばかりだ。
レミリアはすでに考えるのをやめているのだろう、今の彼女からは何も読み取れない様な姿だった。階段を上がるときも無表情で、慣れた作業を行っているかのようにスタスタと上がっていた。
そしてついにレミリアの口が開いた。
「フラン…」
フランドールは急に呼ばれたのでしっかりと対応できなかった。
「フラン…あのね、あなたはどうしようもない事をし続けてきたのよ。それは認めなさい」
「お姉さま、でもフランは…!」
「いいから黙って認めなさい!!」
フランドールは黙るしかなかった。かつて完全な狂人であったフランドールは何も否定できないのだ。もう、やってないにしても現実を認めるしかなかった。
「お姉さま、どこに向かってるの?」
「いつかわかるんだから、その時に自分で調べなさい」
フランドールは話を逸らそうとしたのだが、成功はしなかった。
「フラン、あなたはもう充分自分と戦ったわ」
「どういうこと?」
「昔のフランならもっと狂って紅魔館を壊したかもしれない。それなのに今はこんな落ち着いて、成長したものね」
「褒めてるの?」
「ええそうよ。でもねフラン、あなたは償えない事をしてしまったのよ」
「………」
「咲夜を殺した、そして幽閉されても牢獄から脱出して紅魔館を壊した。なかなかの罪よこれは」
そう言うとレミリアはあるドアの前で立ち止まった。
「ここよ」
「ここって…」
「あら、覚えてるのかしら?」
「初めて紅魔館に入ってきたときのフランとお姉さまの部屋だよね」
「よく覚えてたわね」
二人の目の前にあるドアには『二人の部屋』と書かれた木の札が貼りついていた。まだ咲夜どころか、妖精メイドやパチュリーすら紅魔館にいなかった時代。レミリアとフランドールが二人きりで過ごしていた紅魔館で、二人が使用していた部屋。
元々は小さい家で紅魔館とは言えなかったのだが、パチュリーが仲間に加わったことで横に大きな図書館を設立。そして住む場所を失った妖精を居候させてゆく事となり、どんどんと敷地・建物は開拓され、今の紅魔館にいたる。
この部屋はその小さな家を模してフランドールとレミリアが作った部屋であり、思い出の部屋である。そんな部屋になぜレミリアはフランドールを誘導したのだろうか。この後わかることになる。
作品名:東方宝涙仙~ 其の壱弐(12) 作家名:きんとき