東方宝涙仙~ 其の壱弐(12)
「ここで自害するわよ、フラン」
まさかの言葉にフランドールは目を丸くした。
「え?自害って…お姉さま…?」
「もう罪滅ぼしなんてできないわ。だからせめてここで命を捨てるしかないのよ。最低な手段だけども、もう…これしかないわ」
「お姉さまも…?」
「ええ、ついて逝ってあげるわよ」
「なんでお姉さままで!フランだけなら…わかるよ…?でも…」
「あなたに悲しい思いをさせた。あなたがこうなったのもそのせいかもしれないもの」
フランドールから見たレミリアは少し泣いていたように見えた。"辛そうな笑顔"という表現が一番近い。
それを見ていてフランドールも涙目になりそうだった。
「入るわよ」
「どうやって死ぬの?」
「首でも吊る?」
「そんなの怖いよ…」
「死は誰でも怖いものよ」
「お姉さま…本当にするの…?」
部屋の中に入るとレミリアはそれ以上答えなかった。
ー紅魔館・エントランスー
「あかり!大丈夫!?」
「え…ええ…なんとかです」
「よかった、だいぶ辛そうだったから…」
メイド長風香と料理長あかりはエントランスまで逃げ切っていた。エントランスの妖精メイド達はみんなまだ動揺ぎみだった。そこで一人のメイド妖精が風香に話しかける。
「メイド長!あの…」
「何?」
「夢子さんが…夢子さんが見つかってないんです!」
「夢子が!?」
「それだけじゃありません、美鈴さんもです!」
それを横から聞いていたパチュリーが反応を見せた。
「美鈴も!?」
パチュリーはだいぶ息が整ってきたようだが、心理面はまだ整っていなかった。パチュリーは急に走り出して、まだ煙の残る紅魔館の廊下へと向かった。
「ちょ、パチュリー様!」
風香がパチュリーを追いかけた。
「あかりをよろしく頼んだ!!」
妖精メイド達にそう言い残して風香は煙の中へと消えていった。
「パチュリー様、大丈夫なんですか?」
「私なら美鈴は探すしかないでしょ、あなたは夢子を探してちょうだい」
「了解です。パチュリー様と美鈴さんが御無事である事を願います」
「あなた達も無事帰ってきなさい」
「ありがとうございます、では自分はこっちへ行きますので」
「じゃあ私はこっちね」
二人は二手に分かれて捜索を始めた。
ー紅魔館・廊下ー
「ぐしゃーんぐしゃーん、ふひひひひひひ。フランちゃーん、どこ行ったのかなー」
▼其の壱参(13)へ続く
作品名:東方宝涙仙~ 其の壱弐(12) 作家名:きんとき