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Gelato

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Gelato



雲ひとつない、どこまでも青く透き通った綺麗な空がデイバンの街を見下ろす。そんな昼下がり、俺はジャンさんとプランゾを済ませて二人でぶらぶらとデイバンの街を散歩していた。
一人で歩くこの街は、ただの『街』で『仕事場』という認識でしかないのに、ジャンさんとただ一緒に歩いている、ただそれだけで、全部が目新しく思えてくる。
同じ場所を何度かジャンさんと一緒に歩いても、それは変わらなかった。ジャンさんと歩くたびに、一つ一つ新たな思い出がうまれていく。
一昨日のジャンさん、昨日のジャンさん、そして今日のジャンさん。全部違う。
不思議だ。確かに同じジャンさんという一人の人なのに、毎日違って見える。
――不思議で、素敵な人、だ。
俺の大切な人、ジャンカルロ。

「ジュリオ、何笑ってんだ?」

ふいにジャンさんの声が聞こえてはっと我に返る。笑っている自覚はなくて、そう言われて驚いた。
何を考えていたのかと告げられるはずもなく、俺は口篭るとジャンさんは小首をかしげたが、「まあいいか」と深く追求はしてこなかったので、俺は安堵のため息を小さく吐いた。

そのまま二人で他愛のない話をしながら歩いていると、公園にさしかかった所でジャンさんが何かを発見したのか「あ!」と声を上げ立ち止まる。それにつられて俺も足を止めた。

「ジャンさん?」

どうしたのかと聞こうとすれば、俺に「ちょっと待ってろ」と言い置いて、俺が返事をする前にジャンさんは走っていってしまった。
ジャンさんの命令を守るか否かを悩んだが、離れている間にジャンさんの身に何かあったら、護衛として失格だ。何より俺は俺を許せない。
俺は急いでジャンさんの後を追って走り出した。

公園内は家族連れのデイバン市民がほどよく集まっていて、思い思いの時間をのんびりと過ごしているようだった。
そんな中を俺はジャンさんを探して駆け抜ける。すぐに追ったはずだったのにジャンさんを見失ってしまってあせったが、公園内に普段は置いていないであろう移動屋台を発見して、俺はそちらへ向かって走り出した。
勘は当たり、すぐにジャンさんは見つかった。ほっと胸を撫で下ろして、俺は脚を一度止め、歩き出した。
屋台の店主とジャンさんは僅かに会話した後、両手に見慣れたそれを持ち戻ってくる。少し俯き加減だった顔がこちらに向いて、ジャンさんと視線が合うと、少し驚いた顔をした後ににっと笑いかけてくれた。
ジャンさんの手にあるそれは、アイスだ。コーンの上に山のような形を描いたように乗せられている。

「ジャンさん、それは…」
「さっきドルチェ食わなかったからな。丁度いいと思って」
「でもジャンさん、お金…」
「ああ、いいって。さっきのはお前のおごりなんだから、これくらいは俺に出させろよ。…ほら、ストロベリーでいいだろ?」

そう言ってジャンさんは右手に持っていたピンク色のストロベリーアイスを差し出してくる。それを手を伸ばしてジャンさんの手から受け取った。
本来ならば俺が金を払うべきなのに、ジャンさんに金を出させてしまった。すごく申し訳ない。けれど、俺の好みを覚えていてくれて、とても嬉しい。自然と笑みがこぼれた。

「ありがとう、ございます…ジャンさん」


近くにあったベンチに並んで座り、気温のせいで少し柔らかくなったアイスを食べる。
ジャンさんはチョコレートアイスを赤い舌でぺろぺろと舐めながら、「うめぇー!」と呟き、俺はそんなジャンさんを見て、自分のアイスを一口ぺろりと舐める。
苺の甘酸っぱい酸味が口内にひろがって、その美味しさに僅かに頬を緩めながらまたアイスに口をつける。
ジャンさんが選んでくれた、俺のためのアイス。感動と美味しさで、俺は嬉しくて声に出して笑ってしまいそうだった。

「なぁジュリオ、そっち美味いか?」
「はい、美味しいです」

ふいにジャンさんがそう聞いてきたので俺は頷く。そして少し考えて、アイスをジャンさんの方へと差し出してみた。

「食べます、か…?」
「ワォ! さっすがジュリオ、話しがわかるなー!」

そう言った俺にジャンさんは瞳を輝かせて待ってましたとばかりに頷いた。そんなジャンさんにふふっと笑って俺は「どうぞ」とアイスを近づけた。
ジャンさんがアイスに口を近づけ、小さく口を開けて赤い舌を覗かせる。
…たったそれだけなのに、何故か俺は変な気持ちになって、目をそむけた。本当は見ていたかったけど、見てはいけないような気がした。

「んー、やっぱりこっちも美味いな」

そう呟いたジャンさんに視線を戻すと、唇をぺろりと舌で舐めていた。たったそれだけの仕草でもどきりと胸が鳴ってしまう。
――俺はおかしい。
こんな、青く透き通った空の下、公園のベンチに座ってジャンさんとアイスを食べている。ただそれだけなのに。
胸の高鳴りと混じって、身体が熱くなる。欲を感じてしまう。
俺は少しでも冷静さを取り戻そうと、熱い息を吐き出した。

「…どうしたジュリオ?」

ジャンさんの声に、俺はぴくりと肩を揺らす。首を横に振って、何でもないと告げた。本当の事など、言えるはずがない。
バツが悪いのをごまかすように手元のアイスに口をつけようとして、そしてはっとする。
アイスに、チョコレートが付着していた。
俺のアイスはストロベリーだ。受け取ったときには綺麗なピンク色をしていたので、店主がミスをしたわけでは勿論ない。
つまりこれは、ジャンさんが口にし、口内に残っていたチョコレートアイスが付着したという事。
その事実に気付いて俺は不自然に動きを止めてしまった。

「ジュリオ?」

不思議そうなジャンさんの声に、俺は再び「何でもないです」と首を振った。
ジャンさんは首をかしげたがそれ以上は何も言わず、自分のチョコレートアイスに口をつけていた。それを横目で見てそっと安堵のため息を吐き、視線を手元のアイスへと戻す。
勿論視線の先は、チョコレートが僅かに付着している、ジャンさんが食べた後が残るその部分だ。
口をつけなければ再びジャンさんに心配をかける事になる。
……なんて事は、ただの建前だ。本当は舌を這わせたくてたまらない。ジャンさんが食べた、ジャンさんの欠片が残っているこの部分に、俺はどうしようもなく欲を感じていた。
……俺は意を決してその部分に舌を這わせた。
甘い、甘いストロベリーアイス。それに加えて少しだけ感じるチョコレートの味。…ジャンさんが口に含んだ、チョコレートアイスの味…。
それを夢中で食べた。もうチョコレート部分は口内で溶けて喉を落下していったけれど、味がストロベリーの味だけしか感じられなくても、それでも夢中で食べた。
そして気がつけば、手元にあったアイスはコーンすら跡形もなく胃の中へと収まってしまった。
全部食べ終えてしまったと気付いて、残念なような満足のような少しだけ複雑な心境でふうとため息を吐いた。

「ジュリオ、お前何考えながら食ってたんだ?」

ふいにかけられたジャンさんの言葉に、俺は大げさなくらいびくりと肩を揺らしてしまった。

「随分とやらしー顔しながら食ってたけど」
「え、あ…え、そ、れは…」
作品名:Gelato 作家名:みみや