Gelato
確信をついたようなジャンさんの言葉に動揺して、俺は言葉にならない羅列を口にしながら口篭る。
俺が何を考え何を思いアイスを食べたのかジャンさんはわかってしまったのだろうか。俺の汚い欲望を知られてしまっただろうか。
それを思い俺は酷く恐怖を覚えた。
俺はおかしい。だって俺は、ジャンさんが僅かに口をつけただけのアイスにすら、興奮を覚えた。嫌いにならないで、と思うのが間違いだ。
けれど、ジャンさんに嫌われたら、俺はどうしたらいいのだろう。生きていけない。
「ジャン、さ…すみ、すみませ…! きらい、嫌いに…ならないで…っ」
だから俺は懇願するしかなかった。
嫌われたくない。嫌いにならないで。ジャン。ジャンさん。…ジャン。
目頭が熱くなって、涙が溢れそうになる。
そんな俺を見てジャンさんはこらえきれないような笑いを漏らした。俺はそんなジャンさんを見てどうしたらいいのかわからずに思わず固まる。
「ジュリオ、お前俺に嫌われるようなことでも想像してたのか?」
「え…あ…それ、は…」
「してたのか」
「すみ、ません…俺…おれ…」
再びじわりと涙がにじむ。そんな俺にジャンさんは「ばーか」と笑いながら髪をくしゃくしゃと撫ぜてきた。
「泣きそうな顔すんなって。俺まで興奮するだろ」
「あ…、ジャンさん…?」
「理由は後で聞きだしてやるよ。ここだとまずいし、な」
「え…」
ジャンさんの言っている意味をすぐに理解できずにぱちぱちと目を瞬かせる。数秒考えて答えを出した所で俺は口を開いた。
「でもジャンさん、仕事…」
「それなら、まあなんとかなるだろ。優秀なダーリンがいることだし?」
あいつの前髪はまた抜けるかもしれないけどな、と冗談交じりに言いながらジャンさんは俺にウインクを投げてくる。そんなジャンさんに俺はふふっと笑う。
「ほら、行くぞ」
手を差し出されて、それを掴む。
向かうのは他でもない。俺の……俺とジャンさん、二人のアジト。