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look at me

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たとえば、お気に入りの人形をこわされて泣いている女の子をはげますために。
たとえば、訓練中の怪我をごまかすために。
たとえば、たわいもない冗談にのるために。
たとえば、難しい話をしている皆を和ませるために。

『look at me』

僕を見て、一緒に笑って?
みんなの笑顔が、僕の幸せになる。
そう思っているのに、君は僕をみてくれない。


魔法陣を起動してサロンに入る。
多くの候補生達が集まる場所だが、入り口からくるりと見回しただけで、目的の人物はすぐ見つけられた。

セブンはこちら側に背を向けて、ソファに腰を下ろしていたが、一人ではなかった。
横に立つ男子候補生と何か話している。マントの色からするに11組だろう。
彼女が他の組の候補生と一緒にいる風景は、魔導院に来てからもう日常茶飯事となっていた。
サイスやナインに比べれば話しかけやすいけれど無口で一見近づきがたいセブンが、0組の中で一番依頼をしやすい人物という事実が発覚してから、ずっとだ。

でも今現在の会話の様子から、何か頼みごとというより普通の世間話をしているように見える。
談笑する二人に、何とも言えないもやもやとした気持ちが湧き起こった。

外局にいた頃とは違って、セブンはよく笑うようになった気がする。
ただ、目を細めて頬を緩めるだけのわずかな表情の変化は、感情の表現ではなく相手の話に対して反射的に起こっているだけにも見える。
僕はそんな機械的な笑顔が見たかったわけではないけれど、まず笑わせるだけで苦労していた身としてはずるいなぁ、と毒づきたくなる。

本当はセブンが変わったのではなく、環境が変わっただけだということは、分かっている。
安易な慰めは口にしないかわりに、相手の不安をぬぐうように微笑んで、黙って手をさしのべる。一度縋られてしまうと、他人は他人だと捨ておくことが出来ない、彼女の本質は変わっていないのだ。
だからこそ、多くの候補生に頼られて忙しくなってしまっているのかもしれない。
僕としてはもっと自分勝手に笑ってくれていいと思う、と伝えたら彼女には、おまえがいうな、と一笑に付されてしまった。

「いたいたー、セブン~」

さも今見つけたように、二人の会話をさえぎる大きさで、声をかけた。
さっと談笑の輪が割れて、怪訝な顔をした男子候補生とセブンがこちらを振り返る。
近づく僕を認識してジャック、と彼女が応えてくれた。
セブンの唇が小さく自分の名を呼んだだけなのに、むくれていた気持ちが躍りだしそうになる。

「何、話してたの~?」

男子候補生が目を瞠って息を呑んだのが、なんだか可笑しい。
いつもと変わらぬように笑いかけたつもりなのだが、研究員と言えど流石は候補生というべきだろう。彼が戦場に出ることはないのだろうが、戦場で敵意をすばやく察知できない人間に待つのは死のみだ。
彼も候補生たちがくつろぐための部屋で、見知らぬ相手から突然敵意を向けられるとは思っていなかったのだろう。
「じゃあ、自分はこれで」と簡単な別れの社交辞令をすませ、目もあわせないまま早々と逃げていく。
走り去る背中をさりげなく目で追っていると、ジャック、ともう一度名を呼ばれた。
座っている姿勢から自然と上目遣いになるセブンは、困ったような咎めるような、それでいて面白がるような表情でこちらを見ていた。
僕がお邪魔虫を追い払った時に、彼女はいつも秘密を見つけた子どものような顔をする。きっと無意味に他の組の人たちを威嚇する僕が可笑しいのだろうが、普段彼女があまり見せない、歳相応の反応が見たいからわざと目の前で追い払っていることまで気付いているのだろうか。

「終わったのか?」
「うん、バッチリだよ~。みてみて~」
「そうか」

一部の生徒について、報告書の再提出のあまりに多さに頭を抱えた0組の指揮隊長が、提出前の相互確認を言い出したのは、つい最近のことだった。
言い出したクラサメ本人ですら乗り気ではないようで、0組側からももちろん反発が起きた。
お守りはごめんだの、再提出はその生徒の自己責任だの、確認作業をいれても内容は改善しないだの、本人達(再提出組)を前に結構な言い草だったが、最終的に「マザーの指示」には文句はつけない0組だった。
マザーに特に執着のないマキナとレムはといえば、苦笑とともに「頑張ろう」と励ましの言葉をくれただけだった。実際彼らは他の組にいるときも優秀な人物だったらしいから、確認される側ではなく確認する側なので、他人事に聞こえても仕方ない。
別に、報告書を見せる相手がクラサメからクラスの仲間に変わろうがどうでもよかったが、僕にとって嬉しい利点もあった。

作品名:look at me 作家名:みりん