春雷
無言で睨んでいると、ふいにハリーが手を伸ばして、ドラコの銀色の髪の毛に触れてきた。
「髪の毛を伸ばしているんだ。もしかして、ルシウスを真似ているの?」
予想外の相手の行動にドラコは固まり、一瞬動けなくなる。
サラリとハリーの指先が絡まり、繊細な手つきで髪を滑っていく感触に、ドラコは慌てて身を反らした。
「そんなんじゃない。ただ忙しくて、切らずに伸ばしていただけだ」
たかが髪先を触られたくらいで耳まで赤く染めながら、必死で反論するドラコの姿を、面白そうにハリーは見詰める。
もっと、からかって、いろんな表情を見てみたいほど、相手の反応が予想外にオーバーなのもよかった。
喧嘩腰でもなく、皮肉屋でもない、ドラコの表情は、結構可笑しくて魅力的だ。
これならば、本当に同じオーラーとしてパートナーを組んでも、うまくいくかもしれない。
ハリーはひとりで満足げに頷いた。
「いや、似合うなって思ったから……」
ただ、それだけ言うとハリーはあっさり離れて、出口へと向かった。
とりあえず、上司に直談判して、話を詰めて、了解を得てから、ドラコに話を持っていくほうが良作だ。
最初から急いては相手を余計に警戒させてしまうだろう……。
ドアを開けながら振り返り、再びドラコに声をかける。
「闇祓い局で、待っているから」
すかさず、ドラコは反論した。
「待たなくていい!」
赤い顔のまま言い返す相手に向かって、ハリーは唇を緩めると、再び同じ言葉を告げる。
「僕は、待っている──」
ドラコに意味ありげに、しかも悪戯っぽく微笑み、それだけを言い残すと、ハリーはゆっくりと部屋から出て行った。
──満開になったブルーベルの花が溢れる窓辺で、ドラコは椅子に座り直す。
腕を組んで、自分のこれからのことを、未来を、真剣に考え始めたのだった。
【END】