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【パラレル】綺麗なワカメと間桐家と

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 呆然としていた俺に、はよ追っかけろ、と呆れながら言ったのは慎二君だった。
 桜ちゃんにされた事を思い出し、慌てふためく俺に構わず、いいから行け!!と背中を押す。
 葵さんもニコニコしながら頑張って、とか言ってた。……何を頑張れと。
 でも、確かに放ってはおけなかった。
 とにかく、桜ちゃんを追って走って……コケてこの様だよちくしょう。
 まぁ、怪我の功名かこっちに来てくれたからよかったけど。
 取り敢えず立ち上がらせてもらって、そのまま暫く。
 桜ちゃんは俺の着物の裾を握って、俯いたまま。
 俺は俺で桜ちゃんの手を握ったままだ。……いやだって、また逃げられたら困るだろ?
 そんな誰にしているのか解らない言い訳を内心で呟きつつ、口を開く。
「……桜ちゃん」
「………はい」
「戻ろうか」
「………………」
 返事はない。
 俺の着物を握る手の力が強まった気がした。
 ……うん、どうしようかこれ。
 俺は困り果てる。
 ……やっぱり、考えなきゃいけないんだろう。
 桜ちゃんの言った言葉。あれは告白なんだろうし。
 流石にあの台詞とあの行為……えっと、キス、とか……されれば、俺にでも解る。
 それに、思い返してみれば、慎二君も葵さんも解ってた様な気がする。つまり、解ってなかったのは俺だけか。
 ……うわぁ、おじさん、お父さんとして立つ瀬が無いんだけど。
 いや違うか。……お父さん、だけじゃないんだ。
 桜ちゃんに……桜に、とっては。
 ……いつからそんな事を思っていたんだろう。
 俺は、確かに桜ちゃんとずっと一緒に居たけれど。
 愛してもいるし、愛されているとも思ってはいたけれど。
 ………男性として、なんて。
「……雁夜さん」
「……うん」
 俺の名を呼んで、顔を上げる。
 名前で呼ぶ様になったのも、そういう意味か…。
「……まだ、答えは言わないで下さい」
「……桜、ちゃん」
「ちゃんと考えて、ちゃんと私を見て……それから、判断してほしいの……」
 切実そうなその表情に、胸が苦しくなる。
 だって、桜ちゃんは娘だ。
 血は繋がってないけど、俺の娘なんだ。
 だから、やっぱり答えは決まっていて。
「私をそう見る事ができないって、今決めないで。私が雁夜さんを選んだら、不幸になるとか、そんな事言わないで。………ちゃんと私を見て、決めて」
 ……先制された。釘を刺された。
 ちくしょう、流石だ、うちの娘は。
 眼差しは真剣だ。
 俺を見詰める瞳はもう、揺らがない。
 え、ちょ、やばいこれ。
 俺の方がぐらぐら揺れてきてる気がする。
 いや落ち着け俺はお父さんなんだよお父さん!!まだ桜ちゃんは色々と親愛の情とか恋愛の違いとか解ってないだけだよ混同してるだけだよ全部時臣のせいっ!!
「……ここで抱き締めていくとこまでいきゃあいいものを」
「それが出来れば雁夜君じゃないわ」
「確かに」
 ………固まって心の中で絶叫中だった俺の耳に、二つの声。
 桜ちゃんと同時に声のする方を見てみれば、当然声の主がいた。
「えらく遅いから何してんのかと思えば……」
「何してるの?」
 溜息を吐く慎二君と、首を傾げる葵さん。
 慌てて離れようとするが、桜ちゃんが離れてくれない。………あばばばば。
「とにかく帰るぞ、二人とも。桜、取り敢えず雁夜の比重が葵さんよりおまえに傾いているのは明らかだ。今回はこれでよしとしておけ」
「し、慎二君っ!?」
 何その台詞!?何で葵さんが出てくんの!?っていうかバレてたこれ!?
「うん、絶対諦めないっ!!頑張る!!」
「さ、桜ちゃんっ!?」
 腕抱え込まないで!!ぎゅうぎゅうすんのやめて!!ああああ押し付けないでその凶悪な肉!!うちの娘育ちすぎだと思うんだ特に一部分が!!
「大丈夫よ、私は桜と雁夜君の味方だから!!」
「葵さんまでっ!?」
 なんだこれ!?
 色々と団結してるっぽい周囲に取り残されながら、なんとなく向かう未来が一直線っぽい事に目を逸らしつつ。
 ああ、今日のご飯は何かなぁ、などと、俺は現実逃避をするのだった。