【パラレル】綺麗なワカメと間桐家と
さて。
作戦もクソも無く、感情の赴くままに、行き当たりばったりで唐突に動いた事態な訳だが。
……まぁ、どうせ雁夜も桜も結局、行き着く先はハッピーエンドだ。
現実にそんな都合の良いものなどありはしないとは言うが。
それでも僕がそう信じてやってるんだ。それ以外の結果なんて認めない。
血は繋がっていない。初めて会ったのだって随分遅い。一緒に暮らした時間も普通の家族に比べるなら、かなり短い。
それでも、僕を息子と、兄として接する、無駄にお人好しで愛情深いこの僕の家族達は。
僕の望み通り、幸せになるしか道はないんだ。
「落ち着こう桜ちゃん!!お風呂は一人で入ってみよう!!お父さんは外で待ってるから!!ね!?」
「脱衣所ですねっ!?つまりお風呂から出たら雁夜さんがタオルで拭いてくれるんですね雁夜さんっ!!」
「言ってないよ!?」
「昔は拭いてくれたのにおとーさんひどい!!」
「うわあああここで娘の立場を使おうとか桜ちゃん狡猾!!」
「女は全てを武器にするんですよ雁夜さん!!もう諦めて私に囚われちゃって下さい!!」
「あばばばば慎二君助けてぇっ!!」
「残念、僕は桜の味方だ」
「うわああ俺の味方がどこにもいなかった!!ちくしょうこれも全部時臣のせいっ!!」
「ああっ、雁夜さんが逃げた!!」
逃げる雁夜を追う桜。
もう諦めて桜に捕まればいいのに、うちの親父も往生際が悪い。
……実際に親父なんて呼んだ事は一度たりとも無いが。
何にせよ、あいつらはそう遠くない内にくっつく。なら、名前で呼んだ方が良いだろう。
ただでさえ複雑な家系図だ。そんなものを後世に残す気は無いが、親父と妹が一緒になって、それぞれをどう呼ぶかとか、考えるだけで面倒な事この上無い。
だから僕は、あいつらを名前呼びのままだ。
それはそれとして。
「……式は挙げてやりたいしなぁ」
遠坂の連中にも見せてやりたいし。
特に当主にな。あの優雅優雅言ってるオッサンがどんな反応をするか楽しみだ。
「雁夜さぁぁんっ!!」
「桜ちゃん勘弁してー!!」
もう日常の一部となった、父と妹の追いかけっこの騒がしさを背に。
僕は日課の情報収集をする為、パソコンのある自室へと向かった。
……式場とかもついでに調べておこうかな。かかる費用なんかも。
そんな事を思いながら。
作品名:【パラレル】綺麗なワカメと間桐家と 作家名:柳野 雫