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Love Shock(前編)

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いつもの光景、いつもの景色。
いつもの日常。


いつもの放課後。



先程まで少女達で賑わっていた教室は、今はしんと静まりかえっている。
教室にいるのは、少女がただ一人。
沢田綱吉という少女だけ。
名前は男のようだが、沢田綱吉はれっきとした女の子。
親しいものたちからはツナと呼ばれている少女だ。
ツナは教室で一人、ぼんやりとしていた。
そんななか、ツナがいる教室に入ってくる生徒たち。
見ない顔。
多分同じクラスの生徒ではない。
ツナは自分の席に座ったまま、ぼんやりしながら見るともなしに教室に入ってきた生徒を見つめる。
彼女たちはツナの席の隣まで来て、写真を広げだした。
それは、雲雀恭弥の写真。
この並盛を支配する、女王の写真。
その強さと凶悪さで知られた彼女は、数多の人に畏怖と畏敬、恐怖の対象として知られているが、実は類まれなる美貌のために、ファンも多い。
この少女達も、雲雀のファンなのだろう。
ツナの横で雲雀の写真を広げ、とても楽しそう。
ここにいるツナの事などいないかのようにして、楽しそうに写真を見ている。
ツナは親しい友人以外には、校内の生徒達にいないものみたいに扱われる事が多いので、空気のような存在であるツナを気にする事なく少女達は雲雀の写真を物色しているのだろう。
ツナは自分がダメな人間だから無視されていると思っているのだが、実際は、ツナは校内の生徒達から美少女として認識されている。
そんなツナを慕い集まる友人達は、その特異さ故この学園でも特に知られたものばかり。
彼女らにいつも取り巻かれ、囲まれているツナ。
ツナの友人だという彼女達は、皆ツナに恋愛感情を持つもの達ばかり。
ツナの事が好きだという彼女達は、それぞれツナが他の生徒と接触をしないように、他の生徒がツナに近付かないようにと常に目を光らせている。
できるなら、ツナを自分だけが独占したい。
そう思っているからだ。
ツナは常にそんな友人達にかこまれているため、ごく普通の一般生徒はなかなかツナに近付く事ができない。
当然、ツナに声をかけるなんて事、出来るはずがない。
ツナの友人として例外的なのは笹川京子や黒川花、三浦ハルや六道凪なのだが、笹川京子は元々この並盛学園では美少女として知られていたし、姉はかの熱血生徒会長にしてボクシング部の部長、笹川良平。黒川花は笹川京子の昔からの親友。三浦ハルも特殊な立場であるし、六道凪も姉が黒曜の支配者である、あの六道骸だという事もあり、別格扱い。
今この教室で写真を販売している女子生徒だって、実はツナに近付きたいものたちばかり。
だからわざわざツナの席の隣に集まっている。
今なら、沢田綱吉は一人。
今は、沢田綱吉を取り囲むものたちはいない。
いつもみたいに、威嚇されない。
遠くからこっそり見ようとしても、ツナの取り巻きである人たちに睨まれて、見る事すらも出来ない。そんな状況ではない。
今なら、彼女を見る事ができる。
一般生徒である彼女達には、こんなの滅多にないチャンスだ。
なら、ちょうどこのチャンスをいかなさくてどうする。
彼女達は、かの美少女、沢田綱吉をよく見よう。近くで見ようと思ってわざわざツナの席の隣に陣取り、いつも以上にドキドキして、ちらちらとツナの方をみながら写真を取り引きする。
彼女が誰かにこの写真の事を言うとは思えない。
彼女は告げ口とは無縁の存在。
学園の姫ともいうべき女性。
いつだってまわりをかこむ存在のために、写真すらない女性。
その彼女が間近にいる。
ちらちらみながら、少女達は今まで近づく事が出来なかった、見る事すらをもはばかられているプリンセスを見つめる。
しかしツナはそんな事は知らない。
ひそやかに雲雀の写真の話をして、きゃっきゃきゃっきゃと楽しそうな少女達が羨ましくて仕方がない。
ツナも、このなかにまじって雲雀の写真を見たい。
いいな。いいな。そう思いながらツナは自分の隣を気にする。
時々ちらちら見られている気配がするのは、自分が邪魔なためか、それか雲雀の写真を取り引きしているためだろう。
雲雀の写真は危険物。
そんなものを取り引きしているのだから、空気のようなツナでも気になるはずだ。
少女達もツナを気にしているようだが、ツナも気になる。
雲雀の、写真。
あの憧れの雲雀恭弥の写真。
ツナは、普段なら放課後はほぼいつも科学室に通っている。
しかし今日は日課の科学室通いは出来ない。
科学室の主であるスパナが留守で、正一もいないからだ。
スパナは科学おたくで日本おたく。正一は何とかいうバンドが好きで、将来はミュージシャンになりたいと言っているが、ツナには正一がミュージシャンに向いているとは思えない。こんな事を口にすると正一はショックを受けるだろうから言わないけど、正直、正一の音楽家としての才能は微妙だとツナは思っている。
そんな正一はその道では知られた科学者の卵らしい。
スパナは明らかに変人だが、とても優秀。
正一は科学よりも音楽に興味があるのだが、彼女の才能はスパナ以上で、この二人がセットでどこかの学会に招待されたらしく、今日は不在。
いつもツナが通っている科学室。スパナや正一からは勝手に入っていいと言われているが、あの天才で天災な発明家二人がいる科学室だ‥‥‥。
どんなけったいな仕掛けがあるだろうかと考えると一人で入る勇気はない。
何らかのカラクリがあって、スパナも正一もいない時にそれが動いてしまったりしたらツナには対処しようがないからだ。
ツナが普段ほてほて通っている科学室は、実はとてもあやしいものと危ないものに満ち溢れた場所。
何より科学室にいる研究者二人がすでに危ない。
正一は一見まともで常識人そうな顔をしているが、研究のためなら何でもしそうなスパナと同じ科学者だ。実はとても非常識で困った研究とかしてるに決まっている。
ツナは心のなかで正一がきいたらがっくりきそうな事を思っていた。
正一は科学者のなかではかなりの常識人。
あまりにも常識人すぎたために周りにいる不可解で常識知らずの(というか常識なんてどうでもいい。そんなものは科学の発展に邪魔だと思っている)科学者たちを見て、胃痛と親友になっている。
そんな正一が聞いたら涙するであろうツナの思い込み。
正一(科学者・常識人代表)はスパナ(科学者・常識知らず代表)と一緒くたにされてしまっていた。
今日は科学室に二人がいないし、山本は部活で獄寺はダイナマイト(危険物)がどーとか言いながらイタリアに行った。
今日はもう学校に用事はない。
そんなツナがどうして一人、こんな場所に居残っているのかというと、ツナの数少ない友人である笹川京子と黒川花と三浦ハルがお料理クラブに顔を出しているためだ。
今回彼女達は、ツナの好きなものを作ってくれるらしい。
最初、科学室に行かないなら、一緒に料理部でお菓子を作ろうと誘われたが、ダメツナがいたら京子達までまわりの人達からひそひそ言われたり、変な目で見られたりするから遠慮した。
京子達はそんなの気にしないと言ってくれるが、ツナがイヤなのだ。
自分のせいで京子達まで変な目で見られたりする事がいや。
作品名:Love Shock(前編) 作家名:浅田リン