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たいばに カード

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トレーニングルームで目当ての人物を見つけた虎徹は、そちらに近寄る。どうやら、学校の課題をやっているらしく、せっせとレポート用紙に文字を認めている。
「ブルーローズ、ちょっといいか? 」
「なに? 今、忙しいんだけど。」
「ああ、悪いな。ちょっと頼みがあんだけどさ。」
 虎徹の頼みなんてものは、なかなかない。だから、内心でウキウキしつつ、言葉はぞんざいに、「なに? 」 と、投げる。こういうところが、ツンデレなブルーローズらしいところだ。
「女性の喜びそうなバースデーカードが欲しいんだけど、どっかで買って来てくれないか? 」
「はあ? 」
「年齢的には、おまえさんのお母さんぐらいなんで、その辺りを考慮してくれると有り難いんだけど。それとも流行のでもいいし。」
「それ、贈り物は? 」
「いや、カードだけ。俺、センスないらしいからさ。」
 毎年、虎徹は、この時期にカードを贈るのだが、センスがないと言われ続けているで、たまにはオシャレなものでも用意しようと思った。それには、今時の若いセンスがいいだろうと頼んだのだ。
「あら、タイガー。そういうのなら、あたしに頼みなさいよ。」
 どこから現れたのか、背後からネイサンが虎徹の肩に抱きつく。うおっと驚いたが、相手のほうが上背があるから突っ撥ねても離れてくれない。
「おまえ? おまえにセンスとか求められるのか? 」
「失礼ね、ブルーローズのお母さんぐらいなら、あたしと同世代じゃないの。それなら、あたしのほうが喜ぶものはわかるっていうものよ。」
「ケバケバしいのじゃないほうがいいんだけどなあ。」
「誰が、ケバケバしいって? 失礼ね。・・・・いいわ、そういうことなら、女子みんなで一緒に探してあげるから、お礼に、あんた、食事でも奢りなさいよ? どう? ブルーローズ、あたしたちで探せば、楽しいわよ? 」
 女子一同ということは、パオリンも巻き込むつもりなのだろう。まあ、それも楽しそうだ。それに、女子が揃っていれば緊張せずに虎徹とも話せるし、食事も一緒にできる。そこいらを考えて、ネイサンは提案してくれているのだと、ネイサンのウインクで理解した。
「ええ、いいわ。選りすぐりのカードを探してあげる。パオリンにも連絡しないとね。」
「大丈夫よ、あの子なら、今、マシンをやっているところだから。」
「メシぐらい奢るけど、一枚でいいんだぞ? 」
「もちろん、あたしたち全員のお眼鏡に叶うものを用意させていただくわ。そういうことなら、さっさと、あんたも課題を終わらせなさい。」
 急いで、その課題を仕上げろ、と、ネイサンは命じて、パオリンのほうの予定を確認するべく虎徹から離れた。
「家に連絡しとけよ? ブルーローズ。」
「わかってるわ。邪魔しないで、これ、さっさと仕上げるから。」
 虎徹とデートだ、と、内心でブルーローズははしゃいでいる。虎徹の相棒が常時、張り付いていて、なかなか一緒に出かけるなんてない。今日は、その相棒が単独で別の仕事に出ているらしい。




 結局、その場に居たヒーロー全員が揃って外出なんてことになる辺りが、虎徹の人気の高さというものだ、と、はふっと息を吐いた。なぜかしら、女子だけでなく折り紙やロックバイソン、スカイハイまでついて来たのだ。
「虎徹、どこの後家さんだ? カードで愛の告白か? 」
「バッカ、てめぇーは、そういうとこにしか頭まわんねぇーのかよ、アントニオ。」
「タイガーくんが、カードなんて考えもしなかったよ。素晴らしい、そしてエクセレント。いいのを探さなくてはね。」
「あら、キース。探すのは女子部のミッションよ? あんたたちは、ただの暇人。」
「そうつれない事を言わないでくれよ? ネイサン。」
「カリーナさんのお母さんぐらいってことは、俺の母とも同じくらいですよね? うちは清楚なレース柄とか好きなんです。」
「えーー、僕のママなら龍とか虎の模様だよ? お祝い事は派手なほうがいいんだよ? 」
 もう、なんていうかわやくちゃだ。目的の雑貨屋でも大騒ぎになっていたが、ブルーローズが選んだものを虎徹は採用してくれた。白地に押し花の花が飾られたものだ。これなら、すっきりしてセンスもいい、と、ネイサンが後押ししてくれた。じゃあ、そういうことなら、と、虎徹もブルーローズの手から受け取ってくれた。
「ありがとさん。じゃあ、会計してくる。・・・あ、おい、アントニオ、キース、おまえらは自腹だからな。」
 この後、みんなで食事をすることになっている。それについての抗議を残してキャッシャーに走っていく。自分が役に立ったことは嬉しいのだが、そのカードの贈り主は、一体、誰なんだろうというところにはモヤモヤする。
「くくくく・・・大丈夫よ、カリーナ。あの男が、あんなものを用意するのは、そういう相手じゃないの。古い知り合いだと思うわ。」
 こそっとネイサンが耳元で、そう囁く。
「そういうもの? 」
「そういうものよ。だって、あの男、マリッジリングを指にしたままじゃないの。もし、そういう相手なら外しているはずでしょ? 」
 虎徹の左手の中指には、以前からずっとマリッジリングが嵌められたままだ。亡くなった奥さんのことを忘れていないから、あれはあそこで光っている。
「それなら、わたしにもカードくれてもいいじゃない。」
「まあ、そういうことは、直前にアピールするのね。鈍い男なんだから、気付かせなきゃいけないわ。あんた、あたしにばっかり言ってないで、直接、あの男に言いなさいよ。」
「そっそんなことっっ。」
「大丈夫よ。あんたがねだったらカードぐらい用意してくれる器はあるんだから。」
 クスクスとネイサンは笑って、傍を離れた。店の予約を入れているらしい。これだけの大人数になると、個室でも借りないといけないわね、と、ロックバイソンに話しかけている。
「そうだな。どっか、おまえの関係であるのか? 」
「まあね。近くの中華でいいかしら? 」
「高くないところにしてやってくれ。」
「虎徹に払わせるのは女子の分だけだから。あんたたちは自腹。」
「わかってるよ。」
 ファイヤーエンブレムとロックバイソンが、ふたりで店の相談をして予約を居れ終わる頃に、タイガーも戻って来た。さすがに、このなんの集団かわからないメンバーだと個室でないと騒いだら、ヒーローだとバレてしまう。そこいらも考えてのチョイスであるらしい。
「虎徹、店は予約しといたわよ。」
「サンキュー、ネイサン。じゃあ、行こうぜ。」
 ごはん、ごはんと腕に懐いているパオリンの頭を撫でて、虎徹は出て行く。続くようにブルーローズも追い駆ける。この恋は、なかなか手強い。ちっとも、ふたりで話すような雰囲気になるのは難しいからだ。





 翌日、バーナビーが出勤したら、珍しく虎徹が先に机に座っていた。これといって経費の精算とか出動の報告書もないはずなのに、うーんと唸っている。
「虎徹さん、おはようございます。」
 声をかけたら、おう、と、いう返事だけだ。背後から机の上を覗き込んだら、綺麗なカードが目に飛び込んだ。
「何事ですか? 」
「書くこと決まんなくてさ。バースデーカードなんだけど、なんかいい文句はないか? 」
「は? 」
作品名:たいばに カード 作家名:篠義