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穏やかな朝に包まれて

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 温かく、ふんわりとした感覚をエリックは瞼の裏側に受け止めた。眩しく思いつつ、うっすらと目を開けてみる。風で微かに靡いているカーテン、その隙間から射してくる日差しがこちらに当たっているせいなのだと気付いた。
 射し込んでくる日の光に眠気がぼんやりと残る意識を抱えつつ、目を細めながら半身を起こしたその時、


「やぁ、やっとお目覚めのようだね」


 不意に左隣から聞き覚えのある声が聞こえた。落ち着きのある、けれども甘さをも含んだ声色。
 見ればチャールズがベッド脇で両腕を組み、顎を乗せたまま上目遣いで此方を見つめていた。
 薄暗い部屋の中で通り抜けた朝日が彼を照らす。やんわりとした笑みは朝の光には相応しすぎるほど、綺麗だった。

「…他の奴らはもう起きているのか?」

 普段、ドア越しで耳にする足音や物音がせず、妙に思い、チャールズに問う。

「いや、まだみんな眠っているようだよ。まぁ、時間が時間だからね。僕らは相当早くに目を覚ましたみたいだし…」

 そう返され、置時計に目を向ける。確かに時刻はまだいつもの起床時間よりも2時間も早く、チャールズの言った通り大分早朝に目覚めてしまったようだ。
 時計からチャールズへと視線を戻す。途端に彼の右手が伸びてきて、頬を包み込み、何度も何度も、優しく撫でてきた。
 突然の事に一瞬だけ目を見張ったが、触れられていくうちに段々と心地よくなってきて沈黙していた眠気に再び襲われそうになる。

「…さてと、」

 撫でていた手が離れ、チャールズが立ち上がる。同時に霧が晴れていくように睡魔も消え去っていった。

「まだまだ時間がたっぷりあるんだ。どうだい? たまには2人っきりで朝のティータイムという事で一緒に紅茶でも飲みながらゆったりとしないか?」




作品名:穏やかな朝に包まれて 作家名:なずな