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神無月愛衣
神無月愛衣
novelistID. 36911
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化物語 -もう一つの物語- 其ノ貳

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 告られただぁ!? いや、僕の世界でも確かに僕は羽川から告白されたけれども……ええ!?
 この世界でもなの!? どうしよう……何て言えばいいんだろう……?
 あそこでは、戦場ヶ原と既に付き合っていたから羽川を振ったわけだけれど……このじゃ、その戦場ヶ原と何の関わりもないみたいだし……。
 でも、ここは、違う世界のことであって、僕の世界のことじゃない。
 だからこそ、勝手に返事を言って良いのだろうか……?
 そんな感じで、永遠とどうするべきか考えていると――
「ほら、やっぱりね」
 と、羽川が言った。
「え?」
「やっぱり、あなた、阿良々木くんじゃないでしょ」
「いや……だからさっきからいってるだろ? 僕は――」
「だって私、阿良々木くんに告白、してないもの」
「…………」
 嵌められた――!? 羽川さんに!? うわっ! 恥ずかしい! 死にたい!
 何なんだろう感じ……羞恥心しかないぞ。
 いっそここから消えたい。
 そして元の世界に帰りたい……。
「でも、ああらぎくんじゃないって言ったけれど……見た目は阿良々木くんなのよね……あと声も」
「…………」
「だから、おかしいのよ。ねえ、本物の阿良々木くんは……どこなの?」
「…………え……っと……」
「私の彼氏は、どこに行ったの?」
「………………はい?」
「いやだから……何度も言わせないで。私の彼氏の阿良々木暦くんは、どこに行ったのって聞いてるの」
「…………」
これも――嘘なのだろうか、羽川の。
 僕を騙そうとしている――嘘。
 羽川が吐かない筈の、嘘。
 それとも――事実なのだろうか?
「羽川……それって、本当なのか?」
「え……何が?」
「僕とお前が――付き合っているってこと」
「え? そうだけど……って! やっぱり、本物の阿良々木くんじゃないんだ!」
「あ……やっちゃった……」
 しかし、何で羽川と僕が付き合って居るんだろう。
 羽川が告白したのだろうか? それとも僕が?
 でも、さっき羽川は僕に告白をしていないと言った。
 ってことはつまり――僕か!?
 戦場ヶ原が居ながら! って、あ……そっか……。ここじゃ――
「――悲しいな、何か……」
「え――? な……急にどうしたの? 阿良々木くん……」
「ここは僕の知っている世界じゃなくて……違う世界か……だから、そっか……戦場ヶ原と……」
「え? 何? 戦場ヶ原さんがどうかしたの……?」
 状況が分からない羽川は僕を心配そうに覗き込んでくる。
「でも――どういうこと? 阿良々木くん……世界が違うって……」
「…………」
「ねえ、もし良かったら……教えてくれないかな、阿良々木くん。あなたに――何があったのか」
「え……」
「私、阿良々木くんの力になりたいの」
「でも……羽川……それは……」
 多分、一度踏み込むと、もう戻れなくなる。
 この――何も知らない、普通の世界に。
 それが――怪異を知るという――リスクなのである。
 それを羽川に伝えると、
「そんなの、全然平気だよ。阿良々木くんが助かるんだったら、それでいいの」
「羽川……」
 お前は優しいんだな――どこまでも。
 何一つ偽りがない――本物の優しさ。
 これだから――僕なんかと比べものにならないんだ。
 だって、これが『羽川翼』という人間なのだから。
 どんなリスクだって――背負ってしまうほど、危うい優しさ。
 この優しさに僕は一体どれだけ――救われただろう。
「ありがとう、羽川」
「ううん。全然大丈夫だよ。お礼なんていらない。……そ……それに……もし、これが解決したら……」
 ちゃんと会える気がするから、本物の――私が知っている阿良々木くんに。
 確かに羽川は――そう言った。
 こうして僕は――羽川に全てを話すことになった。
 余すことなく、全てを。
 しかし……春休みにも思ったけれど、優等生っていうものは、好奇心旺盛なのだろうか?
 未だに謎である。