ノスが来たりてノスと書く
記憶喪失になった。
俺は記憶喪失になった、らしい。
「富樫さん、わかりますか」
看護士が俺に問い掛けていることは分かる。
しかし、それが俺の名前だということが分からなかった。
医者の話によると、俺は事故に遇ったという。
それ以上の説明はなかった。また、自分で思い出せないうちは積極的に知ろうとしない方がいい、と忠告を受けた。
不思議と、記憶がない今の状態にそれほど不安がなかったため、俺も素直に頷いた。
何日かは入院させられて、検査やらテストやらをしこたま受けさせられた。
計算能力と記憶能力は年相応と診断された。
着替えや食事など身の回りのことは一通りできる。電車の乗り方、今の総理大臣の名前……一般常識とされるものも問題なく答えられる。
しかし入院中に訪ねてきた人間は、ただの一人の顔も名前も思い出せなかった。
やがて日常生活には支障がないと判断され、俺は退院し自宅で暮らし始めた。
俺は記憶喪失になった、らしい。
「富樫さん、わかりますか」
看護士が俺に問い掛けていることは分かる。
しかし、それが俺の名前だということが分からなかった。
医者の話によると、俺は事故に遇ったという。
それ以上の説明はなかった。また、自分で思い出せないうちは積極的に知ろうとしない方がいい、と忠告を受けた。
不思議と、記憶がない今の状態にそれほど不安がなかったため、俺も素直に頷いた。
何日かは入院させられて、検査やらテストやらをしこたま受けさせられた。
計算能力と記憶能力は年相応と診断された。
着替えや食事など身の回りのことは一通りできる。電車の乗り方、今の総理大臣の名前……一般常識とされるものも問題なく答えられる。
しかし入院中に訪ねてきた人間は、ただの一人の顔も名前も思い出せなかった。
やがて日常生活には支障がないと判断され、俺は退院し自宅で暮らし始めた。
作品名:ノスが来たりてノスと書く 作家名:バールのようなもの