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バールのようなもの
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novelistID. 4983
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ノスが来たりてノスと書く

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それから10分ほど、風がぴたりと止んで勢いが弱まったノス号がへろへろと地に落ちるまで、ビデオは空を映し続けていた。

「ノス」の正体がようやく分かった。
河原で凧上げをして、子供のようにはしゃいでいた彼が「ノス」。
いや、子供みたいだったのは俺もだ。俺は、あんなに無邪気に笑う人間だったのか。

部屋を見渡してみる。あちこちに散らばったノスの字が、黒いマジックで書かれた一つ一つが、様々な色彩を帯びて見えた。

病院にいる間も、家に戻ってからもノスは姿を見せなかった。
この部屋で待っていたら、いつか訪ねてくるのだろうか。
マジックペン片手にふらりとやってきて、俺の持ち物に「ノス」と書く彼は。
まだ顔も知らない、俺の友達は。