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みとなんこ@紺
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たとえば、こんな

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*原作開始前、怖いもの知らずな子供とやる気のない大人




「このたびはご指名ありがとう、鋼の」
「…………。」
 勢いで言ってしまってから、こうなる事は覚悟していた。というか覚悟していたのは別方向の問題だったのだが、いつも通り気配なくふらりと背後から現れた男は、予想に反して非常に笑顔だった。
 何かこう、痒くなるというか寒くなるというか。あのえせ臭い爽やかな顔に、一発おみまいしてやりたい衝動を抑えて、何とか渋面を保つことでやり過ごす。
 全身から、不本意!の気合を垂れ流していたのが効いたのか、やがて男はつまらなさそうに一つため息をついた。
「まぁ、判断としては妥当かな」
「……妥当もくそも、他誰も知らねぇっつの」
 纏う雰囲気ががらりと変わる。何か花でもまきそうな優男風から、やる気のなさそうなだれた士官へ。取り繕う事をさっくりとやめた男はいつもの面倒そうな顔で首を回した。
「この茶番にわざわざ引っ張り出してくれた礼は後ほどゆっくりと」
「別にオレのせいじゃねぇし」
 文句はあそこに言えば、と顎でしゃくってやる。 遠目の特設のバルコニーに並んで見下ろしてくる、地位だけは高い、白髪髭面眼鏡他のお歴々。
「勿論、あちらにも」
 必ずね、と緩く笑んだ男は、何の事はない、どうやらすごい不機嫌なだけだった。
 まぁ自分もきっと同じようなものだろうけれど。


***


 あれは色々タイミングが悪かったとしか言いようがない。
 東部で巻き込まれた厄介毎のカタを付けて、やっとの思いで旅に出た矢先、とある資料を求めて来たくはなかった中央司令部に立ち寄ったのが運のつき。
何かよくわからない外国の使節団の相手をしてるとかいうおっさん(中将だ、と後で聞いた)から、要請という名目の命令を受けたのだ。
曰く、その使節団のお偉いさんが『錬金術大国と名高いアメストリスの錬金術師の技を見せてもらいたい』とか言い出したとか。
提示されたのは向こうの連れてきた相手との錬金術を用いた模擬戦。
その時点でしょうもないと思いながら聞き流していたのだが、集団戦になるので誰かパートナーを選べと言い出した時にちらりと頭を過る影が。
「…誰を指名しても良いんですか?」
「ああ。君の認める、出自のはっきりした相手なら問題ないだろう。何なら噂の鎧をまとう君の弟でも、」
「大佐を」
「…なに?」
 言葉に被せるように、もしくは聞かなかったことにする為に、短く告げる。
「銀時計を賜ったもののまだまだ若輩なので国家錬金術師の知人はおりません。…ですので、東方司令部のマスタング大佐を」
 一応名目上は後見人という事になっているらしいし、ちょうどいい。一人で見世物になるのは真っ平だ。それに何が蠢いてるのか知れないこんな所にアルフォンスを連れてくるだなんて、更にあり得ない。
 何を狙っていたのかは知らないが、中将の顔色が変わった。だが知った事か。誰でも良いと言ったのは向こうなのだし。それにどうせ逃げられないのなら、巻き添えにしてやる。
 かくしてその話はあっという間に東方司令部にも伝わり、そして2人の錬金術師に端的に言うならば余興になりなさい、との辞令が下りたわけだ。