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君と一緒に眠りたい

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 すべてがおわって、残された様々なことたち(一瞬のうちにぼろぼろになってしまった家の応急処置だとか、夜ご飯を食べることだとか、土埃でいっぱいな家内の掃除だとか)を終える頃には、すでに日はとっぷりと暮れていた。蝉の声も聞こえないほど、しんと静まりかえっている。あれだけの騒ぎがあったのだからさっさと逃げてしまったのだろう。代わりに響くのは、食器同士がぶつかるかちゃかちゃという音や、遠くから聞こえるはなし声で、それらは台所の方からこちらにとどいた。
 もう寝なさい。はーい。親と子の会話がひんやりとした空間を満たす。あくびばかりの子どもたちが重い足取りで寝床へ向かうのを、佳主馬は横目で見送った。

 なんだか、本当に、ゆめのようだ。ぺたりと縁側に座り始めてから、そればかり考えている。
 夏の夜にしては珍しく風が涼しい。草の匂いがこちらまで届いてくる。佳主馬はそれらを感じながら、やはり、今日について思い出していた。自分たちが成し遂げたことを夢みたいだとひとことで片付けたくはないけれど、でも、この静けさに呑まれてしまうとそればかり思ってしまう。つながった瞬間について。
 キーボートをがむしゃらに叩いた両手がじんじんと熱を帯びる。あついそれは、やがて、手のこうに落ちた涙を記憶にして隣にならべる。目に映る世界がすべて不確かで、それが怖くて、ぎゅうとつよく瞼を閉じた。そこで彼女は静かに笑っていた。ごめん、と謝っても、諦めても、ひっそりとそこに佇むばかりだった。
 ひとがいなくなる、ということは、そういうことなのだ。とどかないし、うけとれない。


作品名:君と一緒に眠りたい 作家名:よここ