君を守る
プロローグ
「おぉーっス!!スケット団!!仕事だぞー!!」
そう言って突然部室の扉を開いたのは生徒会長の安形だった。
「なんや、いきなりっ!」
姫子が驚いて立ち上がる。
「何の用だ、生徒会長さんよ~。」
俺はベンチに寝転がったまま顔だけ生徒会長に向けた。
「だから、仕事だっつーの。
お前らの手が借りたいんだ。」
生徒会長はそう言うと、俺の向かいのベンチにドスッと腰かけた。
不敵な笑みを浮かべいてる。
「ある調査を依頼したい。」
俺をまっすぐに見据えながら言う。
姫子がお茶の準備をしているのが視界の隅に映る。
俺は、やれやれというようなゆっくりした動きでベンチに腰かけ、生徒会長に向き直った。
「実は椿のことなんだ。」
生徒会長は勿体つけた口ぶりで話し始めた。
「最近奴の様子がおかしい・・・。」
不意に生徒会長の表情が曇る。
「椿がどうかしたのか?」
今まで黙っていたスイッチっが合いの手を入れる。
気づけば部室にいる全員が生徒会長に注目していた。
全員が生徒会長の次の言葉を待っている。
「椿のやつ、最近どうも生徒会の仕事に集中していない。
生徒会室の自分のデスクの上に花なんか飾っちまってよ、
仕事をしていても、頻繁に手を止めてなんだかぼーっとした様子でその花を見つめていたり、
急に顔をしかめたと思ったら、今度はにやにやと薄ら笑いを浮かべたり・・・。」
「うわっ。なんかキモイわそれ!!」
姫子が突っ込みを入れる。
「かと思えば、深いため息をつたり。
んで、仕事を中断して決まって18時前には部屋を後にする。
なんだか、『用事があるので失礼します。』とか言って。」
「確かにそれは妙だな。」
スイッチがいつもの無表情のまま言う。
「このままじゃ、仕事が片付かねー!
俺にまで仕事が回ってくる。
どうにも、面倒くせー事にしかなんねーんだよ! 」
ぼりぼりと頭をかきながらしかめっ面で生徒会長は天を仰いだ。
「でもなぁ。」
姫子がぽつりと言う。
「なーんかそれって・・・。」
言いかけて何か考え込む。
「なんだよ、姫子。言いかけてやめんなよ。」
姫子が何を言いたいのか分からない。
「いやー、何やそれって・・・。」
姫子はまたも言いづらそうにニヤニヤとしながら口をつぐむ。
「あぁ、そうだな。それは、まぁそういうことだな。」
スイッチも何やら見当がついたようで、心なしかニヤリとする。
「なんだよー、おまえら!!なんなんだよっ!!!」
俺はたまらなくなって声を荒げる。
しかし、俺以外の三人はなぜだかうんうんと頷きあっている。
「まぁ、なんだ。
そこで、おまえらスケット団の出番っつーわけだ。
仕事が手につかない椿の理由と、その理由の解決をお前らに頼みたい!!」
生徒会長はバンッとテーブルをたたくと俺をまっすぐ見据えた。
『断らねーよなー』と目が物語っている。
「その依頼、受けよう(面白そうだから)」
とスイッチ。
「えーやん!えーやん!!ここは一つ、かわいい椿の為や!!
なんや、キュンキュンしてきたわ~♪」
と姫子。
俺はもう訳が分からないが・・・。
しゃーないか。
「その依頼、スケット団が受けてやるよ!!」
とりあえず、俺はそう言ってしまった。