二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

君を守る

INDEX|10ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 

九章



『えーっと、ハンカチは持ったし、ケータイにお財布、化粧ポーチ、お店のエプロン。
 うん、大丈夫。今日も忘れ物はないわね。
 あっ、そうだ。天気予報で午前は雨が降るかもって言ってたんだっけ。
 折り畳み傘も持っていかなくちゃ。』
私は先ほど見たニュースの天気予報を思い出した。
靴箱の上にある折り畳み傘をバックの中にしまう。
スニーカーをはくと玄関のドアを開け外に出た。
案の定、雲行きが怪しい。今にも降りだしそうだ。
『あ、新聞取り忘れてた。』
郵便受けに刺さったままの新聞を見つけて気づいた。
『新聞読む癖つけなきゃ。もう社会人なんだし。
 お店の休憩時間に読もう。』
そう思い、郵便受けを開ける。
新聞を取り出そうと覗き込むと、その前に目に入ったのは一輪の花だった。
『エリンジューム?なんでこんなところに?』
私はその花と新聞を取り出した。
何の変哲もない花だ。
小さな紫色の花。
『誰かからの贈り物?なわけないか。なんだろう?
 まぁ、いいか。職場に持って行って事務所にでも飾っておこう。
 せっかくかわいい花なんだし。』
新聞をバックに入れ、花をつまみ私は歩き始めた。

商店街の直前に高校がある。
開盟学園と言うらしい。ちょっと変わった名前だ。
HRが始まる時間帯だろう。校門付近に生徒の姿はなかった。
通り過ぎて川沿いに行くともうすぐ商店街につく。
そこで、雨がポツリポツリと落ちてきた。
『やっぱり降ってきたか。』
そう思い私はバックから折り畳み傘を取り出した。
『この分だとこれから強くなるかなぁ。』
そんなことを考えながら、ふと土手のほうに目をやる。
するとそこには一人の男子高校生が膝を抱えて座っていた。
『こんな時間に?』
私はその男子高校生がとてつもなく気になった。
なんだか元気のない背中が私の庇護欲をかきたてたのかもしれない。
いつもなら絶対に思いつかないであろう行動に出た。

「あの・・・。学校始まってるんじゃない?開盟学園の生徒だよね?」
私は男子高校生に声を掛けた。
反応がない。
「雨降ってきてるよ。このままここにいたんじゃ濡れちゃうし、風邪ひくよ?」
しゃがみこんで顔を覗き込んだ。
まつ毛の長い大きな目をやっとこちらに向けた。
悲しげな表情をしている。
「はい・・・。ご心配をかけて申し訳ありません。」
小さな声でぼそりと言うと、彼は立ち上がった。
身長は私と同じくらい?
短髪で黒髪で幼さを残す顔立ち。
そのまま彼はその場を立ち去ろうとした。
少し雨に濡れているせいか、彼の背中がひどく落ち込んでいるように見える。
「まって!」
私は思わず彼を引き留めていた。
「あの・・・。」
「はい。」
何の感情も見いだせない瞳をこちらに向けてくる。
「何があったかわからないけど、無理しなくていいから。
 突然声を掛けてごめんなさい。」
私は謝罪した。
突然声を掛けた私に対し礼儀正しくふるまえる彼が、学校をさぼるなんて何か理由があったのだろう。
そっとしておけばよかった・・・。
「これ、あげる。花を見ると気分が晴れるよ。」
家からずっと持っていたままの花を彼に無理やり握らせる。
「本当にごめんなさい。元気、出してね?」
自分のした浅はかな行為に恥ずかしくなって私はその場を離れた。
少し振り向き彼を見ると、
彼は静かにその場に立ち尽くし花を見つめていた。

作品名:君を守る 作家名:nanao