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君を守る

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四章



それは二週間前。
僕の下校時の事だった。
取り寄せを頼んでいた父の本を受け取りに、僕は商店街の本屋に向かっているところだった。
ふと顔を上げると、数十メートル先から小走りで走ってくる女性がいたる。
「ごめんなさーーーーい!」
女性は手を挙げて僕のほうに駆け寄ってきた。
僕の後ろに誰かいるのかと、振り返ろうとしたが、女性はハッキリと僕に視線を送ってきたので、
『知り合いか?』とも思った。
『あれ?あの人は・・・。』
しかし、女性は必至な形相をしている。
様子がおかしい・・・。
「ごめんなさい、遅れて!
 校門の前で待ち合わせだったのに!!
 迎えに来ようとしてくれたんでしょ?ごめんね!」
女性が早口にまくし立てる。
「仕事が思ったより遅くなっちゃって。」
手を思い切り握ってくる。
僕はカーッとほほが熱くなるのを感じた。
(おねがいっ、合わせてっ。)
顔を寄せてコソッと囁いてくる彼女の言葉を理解するより前に、
僕はブンブンと頷いていた。
二人で手をつないだまま歩き始めると、彼女は小声で話し始める。
(詳しくは後で説明します。今はこのまま一緒にいてくれますか?)
彼女の置かれている状況は分からないが、とにかく困っているらしい。
困っている人は見過ごせない。
今度はキチンと理解しゆっくり頷いた。

それから彼女は少し大きな声で色々と話していた。
仕事のこと。僕の向かおうとしていた商店街の花屋に勤めているらしい。
天気のこと。だいぶ涼しくなってきたね~とか。
この季節に咲いている花の事。ムクゲとかひまわりとか。
まるでだれかに会話を聞かせるように大きな声で・・・。
どう、返していいか分からずに、僕はとにかく相槌をうった。
そうこうしている間に、どうやら到着したようだ。
ここがこの人の家らしい。
彼女が不意に振り返った。
「ちょっと寄ってきなよ。ね?」
そう言うと、僕の手をグイッと強引に引き、玄関へ招き入れた。
玄関のドアを閉め、ガチャリと鍵を掛けると力が抜けたようにガクリと膝を着く。
「えっ!?大丈夫ですか!?」
僕がしゃがみこみ顔を覗き込むと、彼女は泣いていた。
真っ青になっている。
彼女の肩が小刻みに震えている。
僕は見ていられなくて、とにかくどうにか安心させたくて、彼女の手を再び握った。
「大丈夫ですか?」
極力静かな声でゆっくりともう一度問いかけた。
彼女の涙を止めることはできなかった。
ますます涙は溢れてきてしまった。
胸が苦しくなった・・・。

作品名:君を守る 作家名:nanao