二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

君を守る

INDEX|6ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 

五章



「ごめんなさい、取り乱してしまって。」
私は彼をリビングへ通すとお茶の準備を始めた。
大泣きしてしまった恥ずかしさから、何かしながら話したかった。
今、彼に直視されるのはバツが悪い。
「いえ、気になさらないでください。落ち着きましたか?」
彼がこちらを向かないで話してくれる。
察してくれてるんだな。
落ち着いてくると、私はやっと肝心なことに気づけた。
「ごめんなさい!!私自己紹介もしてないし、あなたの名前も聞いてないわ、やだ・・・。」
顔が火照る。
気を取り直して自己紹介を始める。
「私の名前は、春日部桜です。あなたのお名前を教えてもらってもいいかしら?」
「僕は椿佐助と申します。」
椿君はゆっくりとこちらを向きながら言ってくれた。
はたと目が合うとまた顔が蒸気するのを感じる。
椿君もほんのり顔が赤く見えた気がした。

私はテーブルに紅茶を置きながら心の準備をした。
これから話す内容は、やはり言葉にすることが怖い。
でも、助けてくれた椿君にはちゃんと事情を説明しなければ。
「今日はありがとうございました。
 本当に助かりました。
 こんなにご迷惑をおかけしてごめんなさい。
 事情を説明したいのだけど、聞いてくれますか?」
私はおずおずと語り始める。
椿君は居住まいを正すと真剣な表情で頷いてくれた。

「ここ数日、見られているんです。
 通勤中も仕事中も帰り道も・・・、ずっと見られてるんです。
 ある男性に。」
体がこわばる。
「ずっと見てるんです、少し離れた場所から・・・。」
うまく言葉が出てこない。
「それだけなんです。それだけなんですけど・・・、怖くて。」
顔がゆがむ。
「四六時中見張られているんです。
 おかしいですよね、見られているだけなのに・・・。」
声が震える。
「何もしてこないんですよ。話しかけられたことさえないです。
 でも・・・。」
どう説明したらいいのだろう。
こんなこと聞かせても困らせるだけなのに。
話を続けることができなくて、顔を上げることもできなくて、椿君の顔も見られなくて・・・。
「分かりました。」
「え?」
「分かりましたから。」
やっと椿君の顔を見た。
椿君は怒っていた。

作品名:君を守る 作家名:nanao